一人暮らしになった実家の母を扶養に入れようと考えています。税負担が軽くなるのですが、デメリットもあるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月5日 3時10分
親が高齢になったり、配偶者との死別などで一人暮らしになったりして収入が減ったタイミングで、親を扶養に入れることを検討する人は多いでしょう。親を扶養に入れる選択には、金銭面のメリット・デメリットの両面があるため、十分な検討が必要です。 本記事では、親を扶養に入れる条件やメリット・デメリットをそれぞれ分かりやすくまとめました。
「扶養」は税法上の扶養と社会保険の扶養の2種類
「親を扶養に入れる」という場合、一般的には税法上の扶養と社会保険の扶養の2種類があります。
税法上の「扶養に入れる」とは、親を扶養控除の対象として所得税や住民税の計算時に所得控除を受けることです。別居の親を税法上の扶養に入れるには、次の条件を満たしている必要があります。
・納税者と親が生計を一にしている(常に生活費や療養費の仕送りなどをしている)
・親の年間の合計所得金額が48万円以下である
一方の社会保険の「扶養に入れる」とは、親を健康保険の被扶養者にすることをいいます。親を健康保険の被扶養者にするには、主として被保険者に生計を維持されている状態でなければなりません。原則として次の収入基準が設けられています(このほか短時間労働者の社会保険適用基準に当てはまっていないことも必要です)。
・年間収入が130万円未満(60歳以上は180万円未満)
・被保険者の援助による収入より本人の年間収入が少ない
いずれにも収入基準が設けられているため、親が年金をもらいながら働いている場合など、一定以上の収入がある場合は扶養に入れられないケースも考えられます。
親を扶養に入れるメリットは?
親を税法上の扶養に入れるメリットは、所得控除の金額が増えることで、所得税や住民税の負担が軽くなる可能性があることです。
親が扶養控除の対象になると、親が70歳未満の場合は所得税:38万円、住民税:33万円の控除を受けられます。親が70歳以上の場合は老人扶養親族として、所得税:別居48万円・同居58万円、住民税:別居38万円・同居45万円の控除が適用されます。
親を社会保険の扶養に入れると、親が個人で支払っていた国民健康保険料などの健康保険料(74歳まで)や介護保険料(64歳まで)を負担しなくてよくなります。健康保険は、被保険者1人分の保険料の負担で、被扶養者も保険診療を受けた場合や死亡時などに被保険者と同様の保険給付を受けられる制度のため、受けられる保障が薄くなることもありません。
【注意】親を扶養に入れると医療・介護費用や介護保険の負担が増えるケースがある
親を社会保険の扶養に入れると、かえってデメリットを被るケースがあるため注意が必要です。具体的には、次のような影響を受ける可能性が考えられます。
・高額療養費の自己負担限度額が上がる
・介護保険の所得段階が上がる
・介護費用の負担軽減制度が適用されなくなる
・親の働き方が制限される
高額療養費とは、同一月に高額な医療費を支払った場合、自己負担限度額を超えた部分が還付される公的医療保険の制度です。高額療養費の自己負担限度額は被保険者の所得で決まるため、所得が少ない親本人が被保険者のままのほうが、自己負担限度額をおさえられることがあります。
また、たとえ家族の被扶養者であっても、65歳以上になると介護保険料は本人負担です。本人が住民税非課税の場合、ほかの世帯員の住民税課税状況などで介護保険料の所得段階が上下するため、子の扶養に入らず本人の収入だけで判定を受けたほうが有利なケースがあります。
介護費用の負担軽減制度に関しても、世帯の住民税課税状況などが区分に関わるため、子の扶養に入らず負担をおさえる選択肢を検討する必要があるでしょう。
なお、親を税法上や社会保険の扶養に入れるには親本人の所得が、基準を超えないように調整しなければなりません。本人が元気で働く意欲がある場合などは、本人がしっかり働いて収入を得たほうが経済的にメリットの大きいこともあります。
親を扶養に入れる前に、さまざまな状況をシミュレーションして、メリット・デメリットを見極めましょう。
親を扶養に入れる前にメリット・デメリットを比較して検討しよう
親を扶養に入れることで、子の税負担をおさえられる、親本人の健康保険料の負担をおさえられるといったメリットがあります。
一方で、高額療養費の自己負担限度額や介護保険の所得段階が上がる、介護費用の負担軽減制度が適用されなくなる、親の収入をおさえなければならないことなどのデメリットもあるため、事前に十分検討して扶養に入れるかどうかを決めることが大切です。
出典
全国健康保険協会 協会けんぽ 被扶養者とは?
国税庁 No.1180 扶養控除
東京都主税局 個人住民税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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