「遺族年金」が廃止されるかもというニュースを見ました。本当に廃止されることになったらどんな対策を講じればいいですか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月6日 6時20分
ニュースやSNSなどで「遺族年金廃止」の話題を目にして、万が一のときの保障がなくなるのではないかと不安を感じた人は多いでしょう。実際には遺族年金が廃止されるのではなく、制度の見直しが検討されています。 本記事では、現行の遺族年金制度の概要や議論されている見直しの内容を整理するとともに、遺族年金制度の変化に備えてできる対策を解説します。
遺族年金はどんな制度?
遺族年金は、国民年金や厚生年金保険の被保険者または元被保険者が亡くなったときに、亡くなった人に生計を維持されていた遺族の生活を支えるために支給される年金です。「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の2種類あり、亡くなった人の年金の加入状況などにより、片方または両方が支給されます。
2種類の遺族年金の支給要件は、次のとおりです。
日本年金機構によると次のいずれかに当てはまる場合に[1]子(原則として18歳に到達した年度の3月31日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人)のある配偶者[2]子の優先順位で支給されます。
・国民年金の被保険者である間に死亡したとき
・国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
・老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
・老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
日本年金機構によると次のいずれかに当てはまる場合に、死亡した人に生計を維持されていた遺族が[1]子のある妻・子のある55歳以上の夫[2]子[3]子のない30歳未満の妻(5年間のみ)・子のない55歳以上の夫(60歳から支給)[4]55歳以上の父母(60歳から支給)[5]孫(子と同じ)[6]55歳以上の祖父母(60歳から支給)の優先順位で受け取れます。
・厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
・厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
・老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
議論されている「遺族年金廃止」の内容とは
「遺族年金廃止」のニュースが物議をかもしていますが、実際に議論されているのは遺族年金廃止ではなく、遺族厚生年金制度の一部見直しであることに注意が必要です。中でも主に騒がれているのは、20~50代に死別した子のない配偶者の遺族厚生年金についての見直しではないでしょうか。
現行の制度では20~50代で子のない人が配偶者を亡くした場合、女性にのみ遺族厚生年金が支給されます(30歳未満は5年間の有期給付)。見直しの方向性として掲げられているのは、主に以下の2点です。
・時間をかけて段階的に有期給付の対象年齢を30歳以上に引き上げる
・対象者を男性にも広げる
見直しが実現すれば子のない20~50代の女性は遺族年金が有期給付となるものの、遺族年金が完全に廃止されるものではありません。遺族年金を受け取れる男性が増えるといった改善もあります。
また、有期給付の対象年齢の拡大にともなう配慮措置として、収入要件の廃止や亡くなった配偶者との婚姻期間中の厚生年金期間に係る標準報酬等を分割する「厚生年金の死亡時分割」の創設なども検討されており、悪いことばかりではありません。
このほか、中高齢寡婦加算、寡婦年金の廃止や子に対する遺族基礎年金の支給停止規定の見直しなどさまざまなことが議論されているため、今後、制度がどのように変わるのか注目する必要があります。
遺族年金の制度見直しに備えてできる対策は?
遺族年金の完全廃止が議論されているのではないとはいえ、20~50代で配偶者を亡くした場合に、配偶者の収入がなくなり、子がいなければ5年間で遺族年金も打ち切られる状況になると考えると、収入面での不安は大きなものでしょう。
特に子育てなどでキャリアを積めなかった人が中高齢で配偶者と死別した場合、十分な収入を得られる仕事に就くのは難易度が高いのが現状です。
遺族年金の制度が見直されても万が一のときの生活に困らないために、早い段階から貯蓄を始めたり資産運用をしたりして、生活資金を準備しておくことがより重要になります。また、収入保障保険などの生命保険に加入して、配偶者に何かあっても当面の生活資金が途切れないように備えておくのもよいでしょう。
万が一のときに遺族年金だけに頼らなくていい資金計画を
遺族年金の制度は当面廃止される心配はありませんが、一部を有期給付に移行することが検討されています。制度が改正されると、配偶者の収入で生計を維持していた場合は、数年で生活を維持できる収入の確保を迫られることになるでしょう。
万が一の際に障害年金だけに頼らなくてよいように、貯蓄や生命保険など、生活資金を確保できる対策を講じておくことが必要です。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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