親が認知症になるとお金を引き出せなくなると聞いて心配です。施設の費用や生活費を親の口座から支払う予定でしたが、できないのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月5日 0時20分
認知能力が低下した場合には、お金にまつわるさまざまなトラブルが発生する可能性が高くなります。そして、認知判断能力がなくなった場合には、基本的にそのような口座名義人の金融機関の口座は凍結され、たとえ本人のお金でも引き出すことができなくなります。 本記事では、認知判断能力が低下することによって発生する可能性のあるトラブルを確認し、口座が凍結された場合にどう対応すればよいかについて解説します。
親の認知能力が低下したら起こる可能性のあるトラブル
1.無駄遣いが増える
認知症能力が低下するとお金の計算や管理する能力が低下し、無駄遣いが増えることがあります。それを放っておくと、預金がどんどん減っていき、生活費を賄うことができなくなる可能性が出てきます。そのような場合は、家族が代わりに支払いをするケースが発生するかもしれません。そうなる前に、対策を講じる必要があります。
2.悪徳商法の被害に遭う
認知能力の低下によって、商品の内容などを正しく理解したり、判断する能力がなくなったりすることもあります。オレオレ詐欺の被害に遭ったり、実態のない投資や高額商品を買わされたりといった悪徳商法の被害に遭う可能性が高くなります。
3.本人名義の預金口座の凍結
親の認知判断能力がなくなって認知症になった場合には、金融機関が口座の取引を制限することもあるため、本人名義の預金口座が凍結され、お金を自由に引き出すことができなくなります。そうすると生活費や医療費などを支払うことができず、家族が立て替えなければならないという事態が発生することもあります。
親が認知症になってしまったら
親の認知判断能力があり、親の同意を得ることができれば、金融機関と相談して親の口座の代理カードや親による委任状により、子が親の口座からお金を引き出すことができるようになるため、親の生活費などを賄うことができることがあります。
しかし、親の認知判断能力がなくなってしまった場合には、親の口座が凍結され、基本的に親の口座から本人がお金を引き出すことは難しくなる可能性が高まります。そういった場合には、下記の対応を検討する必要があります。
(1)成年後見制度を利用する
認知症、知的障害、精神障害などの理由で、財産管理や身上保護などの法律行為をひとりでやることが困難な場合に、そういった方々を法的に保護して、支援する制度を成年後見制度といいます。その制度を使えば、ご本人の口座からお金の出し入れやいろいろな契約や手続きをすることが可能になります。
なお、成年後見人は、家庭裁判所がご本人にとって最も適任だと思われる方を選任しますので、必ずしも子どもの希望どおりにはいきません。
また、本制度には申し立てにかかる費用のほかに、後見人への報酬が発生しますので、こういった費用面も含めて検討をする必要があります。
(2)日常生活自立支援事業を利用する
日常生活自立支援事業とは、「認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活がおくれるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うもの」とされています(出典:厚生労働省「日常生活自立支援事業」)。
したがって、この事業を利用すれば、預金の払い戻しや預金の解約などの日常的金銭管理や、定期的な訪問を受けながら生活の変化を見守ってもらうなど、生活面でのサポートを享受できます。
なお、この事業を利用する場合には、実施主体である都道府県・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施)に相談するとよいでしょう。
まとめ
親の認知能力が低下すると、お金にまつわるさまざまなトラブルに遭遇する可能性が高くなってきます。そして、認知判断能力がなくなった場合には、預金口座が凍結されます。
たとえ、親の生活費や施設の費用だからといって、家族であっても、親の口座からお金を引き出すことはできません。そうなった場合には、成年後見制度や日常生活自立支援事業の利用などを検討する必要があります。
出典
厚生労働省 日常生活自立支援事業
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
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