70代に突入したのでそろそろ相続税の対策を始めなくてはと思っています。税理士に相談する前に、なにか自分たちでできることはありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月11日 23時20分
親が子に財産を引き継ぐことを意識したときに、もしかすると相続税が発生するかもしれないと分かると、「すぐに相続税対策をしなければ」と焦りがちです。そのため、いろいろと調べてみても、インターネットには相続の情報は多く、なにが正しいか混乱してしまうことでしょう。 そこで、相続のことが気になりだしたときにチャレンジしてほしいことを解説していきます。
資産・負債の一覧表を作成して相続税額が発生するか確認
まずは、相続の対象となる資産がどれだけあるのか把握する必要があります。そのために、相続する資産・負債の一覧表を作って、どれぐらいの相続税額が発生する可能性があるのか確認することが大切です。細かな税額を知りたいのであれば、税理士に依頼して試算してもらうのも一つです。
しかし、税理士に依頼すると費用もかかるので、ひとまずは、相続税額が発生する可能性があるかどうかが分かれば十分です。
資産・負債の一覧表は、できるかぎり簡単に作りましょう。円単位まで細かく作る必要はありません。一つだけ注意したいことは、過去の数字と比べられるように、価額の動きが分かるような一覧表にすることです。
なお、不動産(土地・建物)についての価額は、相続税の計算において少し複雑です。固定資産税の課税通知書に記載されている、固定資産税評価額をベースとします。建物については、その固定資産税評価額を記入してください。土地については、固定資産税評価額÷0.7×0.8の金額を記載してください。
図表1
(例)
筆者作成
例のような一覧表ができれば、あとは簡単です。
図表1のなかの【差引】の金額と、相続税の基礎控除額である「3000万円+600万円×法定相続人の数(注)」を比べてください。【差引】のほうが大きければ相続税が発生する可能性が高いです。
ただし、「【差引】のほうが大きい=必ず相続税が発生する」ではありません。相続税額の計算は複雑なので、さまざまな特例を使うと相続税が発生しないこともあります。しかし、相続税「額」対策が必要になる可能性が高いということが分かります。
どうしても相続税が発生するかどうかを正確に知りたいのであれば、税理士に依頼しましょう。
(注)法定相続人の数は、被相続人の法定相続人の数です。簡単には以下のとおりです(実際とは異なる場合もあります)。
亡くなった人を中心に考えると、相続人が配偶者と子が1人であれば2人、相続人が子2人のみであれば、2人というイメージです。
相続税「額」対策とは
相続税が発生する可能性が低いのであれば、相続税「額」対策は不要です。
しかし、なかには相続税が発生する可能性は低いにもかかわらず、ごく一部の保険会社が相続税対策だとして保険商品(生命保険金)をすすめてくるようなこともあるようです。
「保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)があるので相続税対策として有効です」と言われて多くの保険料を支払うことになり、その保険料を支払ったばかりに生活費が足りなくなる、というケースがあるのも実情です。
つまり、相続税対策になるからとやみくもに対策するのではなく、相続税が発生する可能性が高い場合のみ、相続税「額」対策を行いましょう。
では、対策としてどのようなものがあるのでしょうか。
〇生前贈与
〇相続時精算課税制度による生前贈与
〇生命保険金
など
今回の解説では、相続税「額」対策の具体的な内容は解説しませんが、これについては税理士をはじめとする専門家に相談することをおすすめします。
もう一つの対策(資産管理方法)を忘れないで
相続に関して「対策」と聞くと、多くの人は相続税「額」対策をイメージするでしょう。「額」を減らす対策も大切ですが、相続税「額」がなくても、一覧表で作った資産を「守る」対策も必要です。
守るといっても、先祖代々の資産だから死守する、というような重い意味ではありません。親や祖父母が遺してくれた大切な資産を「必要に応じて管理する」という意味です。
現時点で、親から財産を引き継ぐ者が障がい等により資産の管理等が難しいのであれば、周りの親戚が手伝ったり成年後見制度を利用したり、さらには民事信託といったことも検討する必要があるかもしれません。
一覧表作成から始まるはじめの一歩
資産・負債の一覧表を作成すると、この一覧表の資産をどのように引き継ぐか、考えるきっかけになります。「作ろう」と意気込んでも最初は面倒だな、という印象かもしれませんが、一度作ってしまうと、あとは年に一度情報を更新するだけなので、比較的楽に管理することができます。
この一覧表をもとに、相続のこと、それ以前に老後の生活のこと、さらには終の棲家のこと等、いろいろ考えるきっかけになります。
ぜひ2024年中に少しずつ作業をすすめ、2024年の年末にこの一覧表のスタートが切れるように、やってみてください。2025年以降の生活が少し見えてくるかもしれません。
執筆者:秋口千佳
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士
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