ただでさえ老後が不安なのに、物価が上がることでさらに不安になります。物価が上がっても年金受給額は変わらないのでしょうか? また、今からできる対策があれば知りたいです。
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月14日 1時50分
将来の年金受給に不安を抱く方は多いなか、特に物価が上がることで、「現状の年金額では生活できないのでは」と心配する声も聞かれます。たしかに、少子高齢化が進むことで公的年金財源が不足するという予測もあり、最近の物価上昇傾向をふまえると、現在の現役世代が年金受給世代となったときには、生活は今以上に厳しくなるかもしれません。 本記事では、前提となる公的年金制度の仕組みとともに、年代ごとにできる対策についてお伝えします。
社会全体で支える「社会保障制度」
公的年金制度の特徴として、「賦課方式」という仕組みが挙げられます。これは、現役世代が納める保険料を、そのときの高齢者の年金として支給する方式であり、世代間の助け合いが基礎となっています。
ただし、少子高齢化が進むことから持続可能性に課題があると指摘されているのも事実です。現役世代が減少し、高齢者が増加することで、一人当たりの負担が重くなり、将来的に年金額が減少する可能性も考えられます。
同時に、物価の変動や社会経済の変化によるリスクを無視することはできません。物価の上昇に対しては「物価スライド(マクロ経済スライド)」という調整機能が設けられており、年金額は「物価」や「賃金」の変動に応じて毎年見直されます。
しかしながら、経済状況や財政の健全性によっては、年金額が大幅に増えるわけではなく、買いたいものが買えず生活できないという懸念も否定できません。つまり、仮に現在は月15万円の年金額で生活できているとしても、この先10年で物価が上昇した場合、月15万円では生活できなくなる可能性があるということです。
公的年金制度だけに頼らない「年代別」の対策
公的年金制度は、世代間の支え合いで成り立ち、物価や賃金の変動を加味した調整が行われているものの、不確実性(リスク)は想定しておく必要がありそうです。
ただし、これは公的年金制度が破たんする可能性について言及するものではありません。公的年金制度が維持されることを前提として、少子高齢化や物価等のさまざまな要因により年金額等が変動する可能性を意味します。
そういったリスクを回避するために、個人として将来への備えを具体的に検討しておくことが大切です。適した対策はそれぞれの事情により異なりますが、おおまかな年代別対策として以下を参考にしてみてください。
50代の場合
50代の方は、仕事も生活もある程度落ち着き、具体的に退職後の生活についてシミュレーションできる時期に差し掛かります。退職後の生活費を試算し、退職金等も含めた資金計画を立てましょう。また、定年退職後、年金受給開始までの生活費を確保するための手段(方法)を考えるとともに、資産運用の見直しも行いたいものです。
リスクを抑えた元本保証型の商品を増やすこともひとつの選択肢ですし、これまでの投資経験を生かし、物価上昇を上回る投資を目指すというのも選択肢となり得ます。当然ながら、自分自身にあった手段と商品で、安心できる体制づくりを目指しましょう。
40代の場合
40代の方は、仕事も生活もある程度の見通しが立つ時期ではあるものの、住宅ローンや教育資金といった大きな支出が重なる時期でもあります。老後資金準備の優先順位は低いかもしれません。
それでも、NISA(少額投資非課税制度)のつみたて投資枠やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの制度を利用し、少しずつ継続することで資産を形成することを目指したいものです。
NISAやiDeCoは始めればよいというものではなく、定期的な見直しや必要に応じてポートフォリオ再構築も考える必要があります。公的年金制度の改正などにアンテナを張りつつ、無理のない範囲で資産を増やす工夫ができると理想的です。
30代の場合
30代の方は、働き方や生活スタイルに不確定要素が多い時期かもしれません。また、公的年金制度の改正などが行われた場合、経過措置等を経て影響を受ける世代となる可能性も多くあります。だからこそ、多くの選択肢を持つことが強みとなります。収入を増やすためにキャリアアップや資格取得を目指すことも将来の安定につながります。
なお、長い将来を見据えて資産形成を始める最適な時期でもあり、投資に慣れるという意味でも、少額から始められるNISAやiDeCoなどの制度の活用は有効です。こうした制度を利用することで、税制優遇を受けながら積み立て、将来的に公的年金を補完する生活資金を確保することができるでしょう。
将来の年金額を知るためには
老後資金対策の一方で、そもそも自分は将来どのぐらい年金がもらえるのかが気になる人も多いと思います。将来受け取れる年金額の概算については、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」や日本年金機構の「ねんきんネット」を利用して簡単に確認することができます。
ただし、「ねんきん定期便」などに記載されている額は、これまでに納めた保険料をもとに算出した将来の年金額の見込みであるため、今後の働き方により実際に受け取る年金額は変わる可能性があります。
50歳以上の方であれば、現在の働き方を継続する前提での65歳以降の年金額が記載されていますが、50歳未満の方の場合は、これまでの加入実績をもとにした年金額であるため、実際に受け取る年金額とは乖離があることに注意が必要です。とはいえ、目安を知るための手段としては有効です。
記載された年金額をもとに、生活費として必要となる金額との差額、病気や介護などに対応するための金額を準備できるよう具体的な計画を立てることが可能です。
まとめ
老後の生活を支える重要な要素となる公的年金制度は、現役世代が支え、世代間の支え合いで成り立っているものの、物価の変動や社会情勢、経済状況の変化によるリスクを無視することはできません。
つまり、将来の受給額を保証するものではありません。そのため、個人としても将来に備えるための具体的な対策が必要です。公的年金制度に頼りすぎず、自助努力で将来の安定を確保することが、安心した老後生活を送るためのカギとなります。
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士
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