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子どもが生まれます。今まで気にしたことがなかったけれど、もし自分が病気やけがで働けなくなったら家族が大変な思いをするのではと心配です。保険で備えるべきですか?

ファイナンシャルフィールド / 2024年10月14日 6時10分

子どもが生まれます。今まで気にしたことがなかったけれど、もし自分が病気やけがで働けなくなったら家族が大変な思いをするのではと心配です。保険で備えるべきですか?

病気やけがで長期に入院すると、多額の医療費の支払いを求められます。とくに就職して社会人となった若い世代の方は、加入する健康保険の制度的仕組みを知っておくと、長期に入院した際の助けになります。医療保険への加入も選択肢ですが、健康保険でカバーできるところもあります。

重篤な病気の際の医療費の支払いは?

大きなけがで長期に入院した、がんを患い高額の医療費が発生した、といった事態になると、仕事に支障がでるだけでなく、多額の医療費の支払いに迫られます。とくに現役世代の方は医療費への不安が脳裏にあると、民間の「医療保険」への加入を考えます。
 
民間の保険は細かく病気ごとに対応したメニューや、仕事を休むことによる休業補償など、加入をすれば、それなりのメリットがあります。ただ補償対象にならない疾患や、また別途特約契約をつけなければ対象にならない病気もあり、加入時に契約内容を検討する必要があります。
 
ただ公的な健康保険に加入していれば、かなりの医療費はカバーできます。「病気の際の保障」を考え、民間の医療保険に加入する前に、この仕組みを知っておくと便利です。
 
民間の医療保険未加入者が、高額の医療費を支払ったとしても、保険の対象となる病気であれば、実際の支払額をかなり抑制できます。保険外の特殊な治療などは対象外ですが、多額の医療費がかかることに不安を感じる前に、この制度の内容を知っておきましょう。
 

健康保険で負担軽減される「高額療養費制度」

手術や入院などで高額の医療費がかかった際には、かなりの経費をこの制度でカバーできます。健康保険証を提示すると、基本的には医療費の3割を負担することになりますが、高額な医療費が発生する場合は、その額が大きくなることがあります。
 
この高額療養費制度では、自己負担限度額を超えた分が後で還付される仕組みです。最初に医療機関に支払う金額(多くの方は医療費総額の3割相当分)を準備する必要がありますが、これさえクリアできれば、民間の医療保険に未加入でも、かなりの負担を軽減できます。
 
実例で説明しましょう。年収約500万円で69歳以下の方(医療費3割負担)が、病気で入院し医療費総額で100万円かかったとします。通常は3割負担分の30万円を医療機関の窓口で支払います。
 
民間の健康保険や国民健康保険など、公的保険に加入者であれば、7割に当たる70万円分は健康保険でカバーしてくれます。その上に公的健康保険には「高額療養費制度」という仕組みがあり、さらに支払った金額が戻るのです。自己負担の上限額は、年齢と年収に応じて決まっており、それぞれの計算式に当てはめ計算します。
 
窓口で支払った3割に当たる30万円のうち、高額療養費として約21万円の金額が、3ヶ月後くらいに、健康保険組合から本人の口座に入金されます。実際に支払う金額は、最大でも9万円以内で済む仕組みです。ただし、年収が1200万円の高額所得者の場合は、実質負担額が25万円を超えます。逆に、年収が370万円未満の方の場合は、実質負担額が6万円以下で済みます。
 
最近では、医療関連データがひもづけされた「マイナンバーカード」を提示すれば、本人の年収などの把握も可能なため、医療機関の窓口で高額療養費制度の適用が受けられ、医療費をいったん立て替える必要がなくなりました。
 
医療機関の窓口で支払う金額は、高額療養費制度の適用後の金額だけで済みます。カードの提示により立て替え分の支払いが不要となり、多額の資金を準備する必要からも解放されます。
 
この制度は1ヶ月単位で計算されるため、2〜3ヶ月以上に渡って長期に入院・治療を受ける方でも、毎月単位で集計し申請できます。さらに大企業の健康保険組合の中には、高額療養費に上乗せして独自の給付を行っている組合もあります。
 

高額療養費を受けるための条件

この高額療養費を受けるためには、いずれかの健康保険制度に加入することが前提です。定職に就くこともなく、国民健康保険料を納めていない方は、この制度の適用は受けられません。
 
現役世代の方は、企業の健康保険組合や役所の共済組合に、個人事業主や75歳未満の高齢者は国民健康保険に、75歳以上の高齢者は後期高齢者保険に加入し保険料を納めていることが、受給の前提になります。
 
ただし健康保険の適用外となっている治療や投薬については、この制度は適用されません。例えば、難病に効果的な新薬が開発された、これまでにない新しいがんの治療法が可能になったといったケースでは、厚生労働省が「保険適用」を承認していなければ、この高額療養費制度の対象にはなりません。効果が確実でない限り、簡単には承認されないというハードルがあります。
 
また入院時の差額ベッド代や食事代も適用されません。この制度の適用外の治療や投薬を受ける場合は、この制度が利用できないため、実際にかかった医療費を全額支払うことになります。こうした際には、当該の疾病をカバーした民間の医療保険を見つける必要があります。
 
高額療養費制度の対象となり、かつ別途加入していた民間医療保険の給付対象にもなる場合は、それぞれの制度から給付を受けられます。その際は、医療機関に支払った実際の金額よりも、実際に受け取った給付額のほうが多くなるケースも出てきます。
 
その意味では、掛け金が少額で済む民間医療保険に加入しておくことも、効果的な選択肢です。会社員の方は、企業単位で加入できる掛け金の安い保険商品もあるかと思います。
 
治療に確実な効果を上げることが実証されない段階で、1粒100万円以上の高額な創薬の保険適用を承認すれば、それだけ健康保険組合の負担が増え、財政を圧迫する結果になります。
 
厚生労働省の承認基準が厳しいのは、そうした側面も見ているからです。現在でも健康保険組合の中には財債基盤は弱いところも多く、今後高齢者の増加につれて医療費の増加が続けば、さらに負担が増える可能性があるでしょう。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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