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認知症の親の預金口座から、成年後見制度を使わずに老人ホーム入居に必要なお金を引き出す方法はないですか?

ファイナンシャルフィールド / 2024年10月15日 2時0分

認知症の親の預金口座から、成年後見制度を使わずに老人ホーム入居に必要なお金を引き出す方法はないですか?

Aさんは一人暮らしの父親と介護や相続の相談をしようと思っていますが、なかなか応じてもらえません。何とかきっかけを見つけて「認知症になったら困るから」と話しても「まだまだ元気だから必要ない」とはぐらかされてしまうそうです。   Aさんは、認知症になると銀行口座からお金を引き出せなくなると聞いて不安になりました。「成年後見制度を利用すればよいとのことですが、他にできる対策はないかでしょうか」と相談にいらっしゃいました。

認知症になると銀行口座からお金を引き出せない?

銀行口座に預けたお金は、原則として預金者本人しか引き出せません。本人以外が引き出すには、預金者本人の意思確認が必要です。しかし、認知症の人の意思確認はできないので、銀行は家族がお金を引き出すことを認めてくれません。
 
とはいえ、認知症になって自分で銀行に行けなくなっても、生活費や医療費、介護の費用は必要です。また、入院したときや介護施設に入居が決まったときなどに、まとまったお金が必要となることもあるでしょう。そこで、銀行は成年後見制度の利用を勧めることになります。
 

認知症になる前にできる対策

Aさんは、いざという時には成年後見制度を利用するけれど、できれば、成年後見制度の前にできる対策をしておきたいと考えています。そこで、「代理人キャッシュカード」と「代理人登録制度」を紹介します。
 

(1)代理人キャッシュカード

親のキャッシュカードの保管場所と暗証番号を知っておき、子が必要に応じてATMで引き出している家庭もあると思います。しかし、認知症になったら、キャッシュカードを紛失する心配もありますし、そもそも親のカードで子がお金を引き出すことを銀行は認めていません。
 
昨今、多くの銀行で代理人キャッシュカードを発行できるようになりました。代理人キャッシュカードを家族が保管しておけば、カードの紛失や暗証番号を忘れる心配がありません。代理人として認められるのは「生計を同一にする親族」や「同居の家族」など、銀行によって条件が異なり、親族以外でも代理人として認めるとしている銀行もあります。
 
ただし、本人の判断能力が低下してからでは手続きができません。元気なうちに取引銀行の窓口で相談し、いつも利用している預金口座の代理人キャッシュカードを発行してもらえば、認知症で預金が引き出せなくなる心配はかなり軽減されるのではないでしょうか。
 

(2)代理人登録制度

代理人キャッシュカードはATMで普通預金の入出金が対象であるのに対し、代理人登録制度は窓口でのもっと広い範囲の取引が対象となるので、大きな金額のお金を引き出したいときに有効です。
 
「代理人指名手続き」や「代理人予約サービス」などの呼び方はさまざまであるほか、登録された代理人ができる取引の範囲は銀行によって異なり、普通預金、定期預金、外貨預金の入出金の他、投資信託の解約を可能とする銀行もあります。また、手続きの直後から代理人が取引できる銀行、認知症の診断書を提出することで代理人の取引が認められる銀行など、ルールもさまざまです。
 
代理人の登録も、判断能力が低下してからではできないので、早めに親子で銀行の窓口に赴いて相談し、手続きしておくと安心ではないでしょうか。
 

対策できないまま親が認知症になってしまったら

銀行の窓口で相談しようとしても、親を説得しきれないケースがあるかもしれません。ただ、対策できないまま時間が過ぎて、認知症を発症してしまったという場合も、預金を引き出せる可能性があります。
 
一般社団法人 全国銀行協会は2020年に「預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引き出しに関するご案内資料」を公表しました。
 
この資料には、「預金者ご本人の生活費、入院や介護施設費用等のために資金が必要でお困りの際は、お取引銀行の窓口まで、ご相談ください」と書かれています。本人のために必要なお金であれば、それを確認できる書類を持参して窓口で相談すれば、銀行が預金の引き出しを認めてくれる可能性が高いと思われます。
 
ただし、全国銀行協会は継続的に預金の引き出しをするには、成年後見制度の利用を検討するよう促しているので、何度も応じてもらうことは難しいかもしれません。
 

まとめ

代理人キャッシュカードと代理人登録制度の利用で、親が認知症や入院で銀行に行けないときにも、子が銀行の預金口座からお金を引き出すことができます。Aさんには、後々のトラブルを避けるためにも、親の預金口座から引き出したお金をどう使ったか、しっかり記録しておくこともアドバイスさせていただきました。
 
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者

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