仕事中・通勤中にけがをしたときの労災の申請方法とは? また、給付金はどのくらいもらえるのか解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月17日 22時0分
「仕事中や通勤中にけがをしたら労災を申請する」と、よく聞くけどどうしたらいいか分からない方は多いでしょう。 そこで、FPが労災とはなにか、労災の申請はどのようにするのかを解説します。
労災は従業員であるかぎり誰でも申請できる
労災とは、労働者災害補償保険法に規定された労働災害のことです。この法律によって、「仕事中や通勤途中でけがや病気になった場合、労働災害と認定されれば、その労働災害が原因で治療費や働くことができなくなった期間の生活費について補償を受けることができる」と規定されています。
労災によって補償されるのは、従業員すべてです。正社員や非正規社員、派遣社員、パートタイマーなど特定の人だけが補償される、補償されないといった雇用形態による違いはありません。業界によっての違いもありませんので、遠慮することなく申請しましょう。
どうすればよいか、についてもそれほど複雑ではありません。以下で、確認していきましょう。
1.医療機関にかかるときにひと言、労災の可能性がある旨を伝える
業務中または通勤途中に事故に遭ってけがをしてしまった場合は、原因が明らかなので、医療機関で診察してもらうときに、自分自身が持っている保険証を提出せずに「仕事中(あるいは通勤途中)にけがをした」とだけ伝えます。
医療機関としては、通常現役世代であれば、患者から通常診察料として3割の自己負担を受け取りますが、労災の可能性がある場合には、これを受け取らずにその後の対応について説明してくれます。
2.申請書をダウンロードして必要事項を記入
手続きは、労働者である私たちが申請するところスタートします。
厚生労働省のホームページから書式をダウンロードして、必要事項(いつ、どこで、どのように負傷したのか)といったことを記載します。こちらは、後に業務起因性といって、仕事に関連してけがをしたのか、ということを判定する材料になります。
悪意でないかぎり、ありのままの事実を記載すれば、けがの場合は一般的に認められる可能性が高いので(うつ病など精神疾患になると仕事との関連性について議論されることはあります)、申請用紙を会社の人事部などに提出すれば、会社が代行で対応してくれます。申請用紙に基づき、労働基準監督署が調査を行い、労災に該当するかどうか決定します。該当すれば私たち従業員が負担する治療費はありません。
労働災害に関わって従業員がけがをした場合に、その従業員の治療や働けない期間に生活の保障をするのが雇用主の義務です。雇用主側としては、このような事態があれば後々、労災保険料負担が上昇するなど好ましくない結果になるかもしれません。しかし、それは雇用主の責務であって、私たち労働者側が心配したり、遠慮したりする必要はまったくありません。
労働災害が原因で仕事を休んだ場合の給付金
労災では、治療費だけでなく、業務上のけがなどによって休業したときに、賃金の一部も支給してくれます。こちらも正社員のみならず、契約社員、パート、派遣も対象です。
具体的には仕事中のけがが原因で、仕事を休み始めた4日目以降について、給付基礎日額の60%相当額と特別支給金として給付基礎日額の20%の給付を受けることができます。つまり、 合計で給付基礎日額の80%が支給されます。
ただし、けがの程度が軽傷で、4日間も休まずに復帰した場合には支給対象外です。
こちらも、提出した申請書に基づいて労働基準監督署がヒアリング調査を行い、支給するか決定をします。手続きとしては、治療費の場合と同様で、通常は会社が書類等の対応をしてくれます。
仕事が原因でうつ病など精神を病んでしまった場合
仕事はキツイが、休むと給料がもらえないので、ずっと働き続けた結果、不眠状態になり、うつ病になった、という場合は、労災決定までに時間がかかる場合が多いです。
先ほども触れましたが、労災は「仕事が理由で」という業務起因性がポイントなので、仕事中にけがをしたり、通勤途中に事故に巻き込まれたりした場合に比べて、関連性を明確にさせるのに時間がかかるという事情からです。
例えば、「いつからそのような状態が続いていたのか?」「どの程度の労働時間なのか?」などを明らかにするような、タイムカードなどの書類も必要になります。もっとも、会社側がタイムカードなどを改ざんして労働時間を短く報告したことが報道され、会社のパソコンのログイン、ログアウトの時間で確認することが一般的になっています。
企業側は、誠実な対応がスタンダード
最近では、人材確保が企業経営にとって非常に重要になっています。またSNSや内部告発で大きく取り上げられるなど、以前よりも、不誠実な対応は企業側にとって大きなダメージになります。
理不尽な対応に、「我慢しなければならない」ということはありません。経営者と従業員は対等な立場である、というのが前提です。手続きも、特にあちこちの役所を駆け回る必要はなく、従業員は申請書にありのままの現状を記入し、医師の意見書などを基に労働基準監督署が調査、決定するのを受け入れるというのが基本です。
出典
厚生労働省労働基準局補償課 令和5年度「過労死等の労災補償状況」の訂正について 脳・心臓疾患の業種別請求、決定及び支給決定件数
厚生労働省 主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)
厚生労働省 労災保険に関するQ&A 1-2 各労災保険給付の支給事由と内容について教えてください。
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者
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