父が亡くなり、母の生活資金のために「父名義の口座」から10万円を引き出そうと思います。「相続前」にお金を引き出すと、何かまずいことはあるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月20日 4時40分
家族や親族が亡くなると相続は突然やってきます。普段お金を管理していた人が亡くなった場合に、残された家族が当面の生活費の確保に苦労する場面があるかもしれませんが、相続完了前に故人の口座からお金を引き出すにはルールがありますので注意が必要です。 本記事では、相続が完了する前に故人の口座からお金を引き出すときの注意点について解説します。
相続前に無断でお金を引き出すとトラブルの元になる
相続は、人が亡くなり死亡届が提出されたときに発生しますが、すぐに相続財産が相続人個人のものになる訳ではありません。次のようないくつかのステップを経て、相続人それぞれの相続財産が決定されます。
・遺言の有無の確認
・相続人の確認
・相続財産の確認
・遺産分割協議
遺産分割協議が終わるまでの間は、「共同相続」という複数の相続人が相続財産を共有している状態となっています。この段階で、ほかの相続人に無断でお金を引き出すなどして相続財産の一部を使用してしまうと、トラブルの原因になります。
どうしてもお金が必要な時は相続預金の払戻し制度が活用できる
例えば、今回のケースのように、故人名義の口座から当面の生活費としてどうしてもお金を引き出す必要がある時はどうすれば良いのでしょうか。
このような場合の対応として、2018年7月に民法等が改正され、相続預金の払戻し制度が設けられ、2019年7月に施行されました。この制度には次の2つのパターンがあります。
・家庭裁判所の判断により払戻しができるパターン
・家庭裁判所の判断を経ずに金融機関で払戻しができるパターン
本記事では、払戻しできる金額に制限はあるものの、手続きが比較的簡単で当面の生活費の引き出しという状況で使われる可能性が高い金融機関での払戻しを解説します。
制度内容
相続人それぞれが、相続財産となる預金がある口座ごとに単独で一定額まで払戻しを受けられる制度です。払い戻される金額は相続人があらかじめ取得したものとして、遺産分割の際に調整されます。
金額の計算方法
この払戻し制度を受けられる金額は、1つの金融機関ごとに上限150万円までの範囲内で、次の計算式によって算出されます。
払戻し金額=相続開始時の預金額×1/3×払戻しを求める相続人の法定相続分
法定相続分とは、民法で決められた相続人それぞれの相続財産の持分であり、例えば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、配偶者が1/2、子どもがそれぞれ1/4となります。
注意点
払戻しによって相続財産の一部を取得すると、その後の相続放棄が認められなくなります。相続放棄とは相続に関する一切の権利を放棄することです。相続は債務も対象となるので、大きな借金があることが発覚した場合に相続放棄は1つの選択肢ですが、その適用が受けられなくなります。
制度内容をよく理解して、相続トラブルに注意しよう
相続が完了する前に、故人の口座に入っている相続財産の一部をほかの相続人に無断で引き出すことはトラブルの原因になりますので避けましょう。
しかし、当面の生活費などをどうしても引き出したい場合は、遺産分割前の相続預金の払戻し制度が活用できます。この制度には、1つの金融機関につき150万円という上限金額があることや、相続放棄ができなくなるなどの注意点もありますので、制度内容をよく理解して利用するようにしましょう。
出典
一般社団法人全国銀行協会 2019年7月1日(月)施行 ご存じですか? 遺産分割前の相続預金の払戻し制度
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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