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中古のタワーマンションの購入を検討中です。立地がいいマンションなので、修繕積立をして今後もきれいな状態を保てば価値は下がりませんか?

ファイナンシャルフィールド / 2024年10月18日 6時0分

中古のタワーマンションの購入を検討中です。立地がいいマンションなので、修繕積立をして今後もきれいな状態を保てば価値は下がりませんか?

神戸市で2020年7月に導入された一部地域でのタワーマンション建設規制(以下「タワマン規制」)。神戸市はその背景の1つとして、タワーマンションの持続可能性に懸念があることを挙げています。   住む人にとっては魅力の多いタワーマンションですが、地域・自治体にとっては良いことばかりとはいえないようです。   タワーマンションが抱える問題点とその持続可能性について考えます。

タワーマンションの魅力

タワーマンションは階数20階以上の集合住宅を指すとされ、主に都市部の交通利便性の良い場所に建てられています。都内およびその近郊で分譲されたタワーマンションでは、1戸の価格が1億を超えることも珍しくなく、都内では3億を超える物件も散見されます。
 
大規模なものでは、1棟の住戸数が1000室近くにもおよび、その建物1棟で1つの町内会ができるほどの世帯数になります。
 
多くのタワーマンションは前述のように、交通利便性の高い場所に立地しているほか、敷地内にコンビニやスーパーなどの店舗などの生活利便施設が併設され、建物周辺だけでほとんどの生活を完結できるようなところが少なくありません。ラウンジや会議室、ジムやシアタールームといった充実した共用施設があるものもあります。
 
さまざまな要望に対応するコンシェルジュがいたり、敷地内に遊具のある公園があったり、雨の日でも子どもを遊ばせることができるキッズルーム、コワーキングスペースやテレワークにも対応可能なライブラリーを備えているところもあります。
 
立地に加え、こうしたさまざまな施設やサービスがタワーマンション人気を支えているといえるでしょう。
 

タワーマンションにはどんな人が住んでいるのか

タワーマンションは高層階ほど価格が高くなる傾向があります。実際タワーマンションの中古物件では、高層階が低層階に比べ、10~30%ほど高い価格で売り出されているケースが多く見受けられます。
 
タワーマンション購入者はさまざまです。高層階は高所得層のほか、夫婦共働きで世帯年収の大きいパワーカップルと呼ばれる人たち、戸建てに住んでいた60代以上の世帯が住み替えで購入されていることもあります。また、投資用として購入し、賃貸されているケースもあります。
 
かつては「戸建てを買うほどのお金はないがマンションならばなんとか手が届く」という一次取得者(初めて持ち家を購入する人)が多かったのですが、最近は「あえてマンションを買う」という人も増えました。低層階でも決して安いわけではありませんが、ちょっと背伸びして購入する一次取得者も少なくないでしょう。
 
このように、タワーマンションにはさまざまな人たちが住んでいます。
 

神戸市が懸念する「持続可能性」とは

神戸市はタワマン規制を導入した背景として、下記のように示しています。

・一部のエリアに極端に人口が集中することで、小学校などのインフラ不足などを招くとともに、ニュータウンから人が流出してオールドタウン化し、郊外エリアのスポンジ化が進行してしまう
 
・タワーマンションは管理費や修繕積立金などが高額になりやすく、また、非常に多くの区分所有者がいるため、合意形成が難しく、スムーズに大規模修繕ができないおそれがあるなど、持続可能性に課題がある
 
(神戸市役所「三宮・ウォーターフロント タワマン規制(都心機能誘導地区)」より抜粋)

神戸市が抱える課題として、市全体の人口は減少傾向であるものの、人口が密集しやすいエリアへ移転する人の多くが、同市の郊外からの移転者であることから、郊外のスポンジ化(空き家が増える)を助長することが懸念されています。
 
さらに、人口が集中するエリアでは、小・中学校のキャパシティや、インフラ(周辺駅への利用者集中など)への負担が過大になること。阪神淡路大震災という未曽有の大災害を経験した自治体として、避難所の確保が難しくなることも懸念事項と考えられています。
 
また、神戸市はタワーマンションの維持・管理の仕組みについても懸念を示しています。
 
管理費や修繕積立金の値上げにはマンション住民で組織する「管理組合」の総会での議決が必要です。しかし、さまざまな人が住むマンションでは意見が整わず、値上げの決議ができなかったり、決議できても滞納者が増えたりすることもありえます。そうしたマンションでは、資産価値が下落し、廃虚化する可能性もある、という考えです。
 
タワマン規制は、自治体として市全域のバランスとマンションそのもの、という2つの持続可能性を考えての施策であるといえます。
 

タワーマンションの持続可能性を考える

市全体のバランスについては、それぞれの自治体が個別に考えており、神戸市の個別要因であるともいえるでしょう。ただし、日本全体が人口減少社会に向かう中、こうした課題は神戸市だけに当てはまることではなく、ほかの自治体でも同じような懸念が発生する可能性は十分にあります。
 
タワーマンションの持続可能性についてはどうでしょう。
 
マンションは文字通り、ひとつ屋根の下に住む世帯の集合体です。マンション住民の中には管理組合の運営に無関心な世帯も少なくありませんが、住民全員が「良好な状態を保つことが資産価値の維持につながる」ことを認識し、全員が自分事として参加し、運営することができれば少なくとも60年程度は維持できると考えられます。
 
マンションの資産価値を維持・向上する要因には、ハードとソフトの双方があります。ハードとは、建物そのものの維持に関するものです。一方、ソフトとは、住民のマンション運営に関する意識です。
 

管理組合の運営状況が資産価値に影響

「マンションは管理を買え」と言われます。
 
新築分譲時には、住民による管理が健全に運営されるかどうかを判断できませんが、ある程度築年数を経たマンションでは住民の管理組合への出席状況やその議事録などを確認できれば、健全に運営されているかどうかをある程度判断することができます。
 
管理を管理会社にすべて任せてしまうのは十分ではありません。住民が「資産価値を維持する」という意識を共有できるかどうかが重要です。
 
タワーマンションでは世帯数も多いことから、なかには「誰かがやってくれる」と考える人も少なくありません。こうした人が多いと、徐々に運営状況が悪化してしまうリスクがあります。
 

修繕計画は本当に大丈夫か

ハード面で重要になるのは、「長期修繕計画」と「修繕積立金」の状況です。
 
「長期修繕計画」は、ほとんどのマンションで新築時に作成されています(古いマンションだと作成されていない場合もあり、そうしたマンションは不安があります)。
 
新築時は月々積み立てる「修繕積立金」が低めに抑えられているケースが少なくありません。新築当初の修繕積立金はマンション販売業者(デベロッパー)が事前に作成した「長期修繕計画」をもとに作成した見積もりをもとに、少なくとも20年から30年は不足しない金額を算出して設定されています。月々の負担額が大きくなるとマンションの売れ行きにも影響が出るおそれがあるため、ギリギリの金額が設定されています。
 
新築からしばらくはほとんど修繕がないため、修繕積立金は積みあがっていきますが、10年を経過することから徐々に支出が大きくなり、15年後くらいには最初の「大規模修繕」が予定されます。
 
こうした前提で設定された修繕積立金なので、長期修繕計画と合わせて見直しも必要です。昨今、さまざまなモノの価格が値上がりし、工事費も上がっていることから当初の修繕計画通りに修繕を進められず、計画の見直しを余儀なくされているマンションも少なくありません。
 
早い段階で修繕積立金の値上げを検討、あるいは実施した管理組合もあります。早い段階からリスクを認識し、手を打てたマンションでは積立金の値上げ幅も抑えられ、修繕計画も予定通り進められ、資産価値が維持される可能性は高まります。
 

100年後の未来は?

筆者は、むしろその後のことを懸念しています。
 
「諸行無常」、すなわち「形あるものはいつか壊れる」ものです。健全なマンションは主要な構造部こそ60年以上、なかには100年以上維持できるものもあるでしょう。しかし、設備などは年を追うごとに老朽化が進み、修繕費もかさむようになり、いつかは「解体」を意識しなければならなくなります。
 
自分たちが生きている間にはそうならなくても、子の世代、孫の世代にはそうした現実を突きつけられます。そうなった時に対応できるのでしょうか。新築から20〜30年はほとんどの住民が「未来永劫あり続ける」ことを疑うことはないでしょう。しかし「形あるもの」である以上、いつかは寿命が訪れます。
 
管理組合が健全に運営されていたとしても、その「解体」という選択肢を1000戸近くにもおよぶ大集合体が決議できるのか。その時、全世帯と連絡が取れるのか。所在不明の世帯が1つでもあると、解体に必要な資金が不足していると、壊すに壊せず廃虚化していく可能性もあります。
 

まとめ

タワーマンションが悪いと、一概にはいえません。利便性の高いエリアに人口が密集し、限られた土地を有効に活用するという意味で土地の高度利用は有効です。
 
しかし、解体まで意識して運営されている管理組合はほとんどありません。まちづくりという観点では、将来、20〜30年ではなく100年単位で街をどう維持していくのかも重要な課題だと思います。
 
神戸市が考える「持続可能性」は、超長期ビジョンを見据えた場合、「先見の明があった」という評価になる可能性もあります。
 
それぞれのマンションの管理組合、あるいはすべての世帯が資産価値を維持することを意識し、全世帯参加でマンションのコミュニティを維持すること。そして、管理組合がリーダーシップをとり、いつかは訪れる「解体」まで見据えたマンションの運営をしていくことができれば、廃虚化することはないのでしょうか。
 

出典

神戸市役所 三宮・ウォーターフロント タワマン規制(都心機能誘導地区)
神戸市役所 毎月推計人口 推計人口と世帯数の推移
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、宅建マイスター(上級宅建士)、上級相続診断士、西山ライフデザイン代表取締役

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