ねんきん定期便に記載されている受取額より、実際の支給額は減るって本当ですか? 受取額に合わせて老後プランを練っていました……。
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月19日 4時0分
もうすぐ定年を迎えるAさん。とても真面目な人柄で、ねんきん定期便の記載額を見ながら老後プランを練っていたそうです。しかし、人づてに「実際の受取額はもっと少ないよ」と言われ、ねんきん定期便ってなんのためにあるのか、本当に記載額は実際の受取額ではないのか、なぜ受取額が減るのか、実際の額はどのように計算するのか、詳しく聞きたいとのことです。
公的年金からも天引きされる
Aさんに届いているのは、50歳以上向けのねんきん定期便なのでしょう。50歳以上向けでは、現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定した将来の年金見込み額を記載しています。この中には、「年金見込み額は今後の加入状況や経済動向などによって変わります。あくまで目安としてください。」と注意書きがあります。
たしかに、もし失業状態になれば記載額より老齢厚生年金が減りますし、将来の年金水準には不透明さが残ります。そのような今後の変動要素は理解できても、必ず減るような注意書きはどこにも見当たりません。
そのため余計に思い至らないのですが、老齢年金は税・社会保険料の対象となる収入なのです。
つまり「手取り」ではなく「額面」なのです。そうとわかれば驚くこともありませんが、通知された金額のまま振り込まれるものだと受給直前まで思い込んでいると、慌ててしまうかもしれませんね。
給料と同じように源泉徴収されるため、減額された金額が振り込まれるのです。
なお、50歳未満向けの年金定期便は、作成時点の「これまでの加入実績に応じた年金額」となります。
税金で控除されるもの
年金額などの条件によって、源泉徴収の対象になるかどうかが決まります。具体的には次のとおりです。
(1) 所得税(源泉徴収)
公的年金には、所得が年金のみ、または年金以外の所得が1000万円以下の場合に、65歳未満では年金額が130万円未満の場合60万円、65歳以上では年金額が300万円未満の場合110万円の公的年金等控除があります。
このため、基礎控除額(48万円)との合計額(65歳未満の場合は108万円、65歳以上の場合は158万円)を超える公的年金を受け取るときは、所得税等が源泉徴収されるため、ねんきん定期便記載の金額から減ることになります。
なお、配偶者が一定の収入要件等を満たす場合は、配偶者(特別)控除および社会保険料控除も加わるため、課税されない年金額の幅も広がります。
年金額と控除額の関係によっては、所得税がかからない方もいるということです。
(2) 住民税(原則として特別徴収)
65歳以上で、住民税の非課税対象世帯に該当せず、公的年金の所得に住民税額が発生する場合、公的年金等の受給額が年18万円以上であれば特別徴収(年金支給時に控除される)の対象になります。
非課税世帯の場合以外にも、公的年金等の受給額が年18万円未満あるいは介護保険料の納付が特別徴収ではない場合などは、特別徴収ではなく普通徴収(納付書を用いて自分で納める)となります。
特別徴収であれば所得税と一緒に「天引き」されるため、振込額はさらに少なくなります。
どちらも、課税対象になるのは老齢年金のみです。
社会保険料で控除されるもの
次は、社会保険料です。
(1) 介護保険料(原則として特別徴収)
65歳以上で公的年金を受給しており、受給額が年18万円以上の場合に年金から控除されます。
(2) 国民健康保険料および後期高齢者医療保険料(原則として特別徴収)
国民健康保険料は、原則として65歳以上75歳未満の方で、公的年金の受給額が年18万円以上の場合に年金から控除されます。
後期高齢者医療保険料は、原則として75歳以上の方で、同じく受給額が年18万円以上の場合に該当します。
いずれも、介護保険料との合計額が特別徴収対象年金額の2分の1を超える場合、特別徴収の対象とはなりません。
上記の各社会保険料は、年18万円未満の場合は普通徴収になります。また、老齢年金に加え、障害年金や遺族年金も保険料徴収の対象になります。
なお、住民税、介護保険、国民健康保険については、各自治体により細部の取り扱いが異なりますので、詳しくは役所にご確認ください。
このように、税・社会保険料が発生する場合は、たとえ特別徴収(天引き)でなくても、支給された年金額から自分で納める必要があります。結果は同じですが、知らずに先取りされると慌ててしまいますね。事前によく理解しておきましょう。
出典
日本年金機構 ねんきん定期便関係
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
日本年金機構 年金Q&A(年金からの介護保険料などの徴収)
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
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