定年後も会社で働く予定です。60歳以降の再雇用によってもらえる給付金があると聞いたのですが、どのような制度なのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月19日 23時0分
厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」によると、定年制を定めている企業のうち、72.3%は60歳定年です。しかし多くの企業では、従業員が60歳を過ぎても、再雇用契約などで雇用形態を変えて働きつづけられるようになっています。なお、2025年4月からは、65歳までの雇用機会確保が義務化され、働きつづけたいと希望すれば65歳まで働くことができるようになります。 なお、定年後も会社で働く際に、メリットになるのが雇用保険です。本記事では、雇用保険加入の際に知って得する3つの給付金を解説します。
雇用保険の加入要件は?
まず、雇用保険の加入要件を見てみましょう。
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2)31日以上の雇用見込みがあること
また、パートやアルバイトなど雇用形態や、事業主や労働者からの加入希望の有無にかかわらず、要件に該当すれば加入する必要があります。
60歳以降「再雇用」や「再就職」で、賃金が「75%未満」だともらえる給付金
60歳を過ぎると、再雇用や再就職をしても賃金が大きく下がることが多いです。そのように少なくなる賃金の補てんをしてくれるのが、「高年齢雇用継続給付」です。該当する人は、申請すれば誰でももらえ、非課税です。
高年齢雇用継続給付には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」という2種類の給付金があります。
高年齢雇用継続基本給付金は、同じ会社に再雇用された場合の給付金です。失業手当(基本手当)を受け取らずに働きつづけた方が対象です。また、高年齢再就職給付金は、基本手当を受け取って、他社に再就職した場合の給付金です。
いずれの給付金も65歳時点と比べて、「賃金が75%未満に下がった状態で働きつづける、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者」に対して支給されます。
高年齢雇用継続基本給付金の支給率は、賃金の低下率によって決まります。
61%以下まで下がった場合、支給対象月に支払われた賃金額×一律15%、61%超~75%未満に下がった場合、支給対象月に支払われた賃金額×0~15%が、支払われます。
例えば60歳時の賃金が40万円で、再雇用後の賃金が24万円に減った場合、賃金は60歳時の60%に下がったので、支給率は賃金の15%です。この場合は(24万円×15%=)3万6000円を、65歳に到達する月まで毎月受け取れます。年額換算すると43万2000円、5年間で総額216万円を受け取れます。
なお、この給付金は、2025年度に60歳に到達する人から給付率が10%に減り、その後段階的に廃止となる予定です。なぜならば65歳までの雇用確保は、2025年3月31日に「高年齢者雇用安定法」の経過措置が終了し、完全に義務化されるからです。
2025年4月1日以降は、企業は希望者全員に65歳までの雇用機会を確保しなければなりません。よって、給付金がなくても、収入を維持しやすくなると考えられます。
ただし、高年齢雇用継続基本給付金は、65歳になるまでずっと受給できるのに対し、高年齢再就職給付金は、失業手当の支給残日数が200日以上の場合は2年間、100日以上の場合は1年間となっています。また、65歳に達したらその時点で、支給が終了します。
65歳以降の「転職活動」でもらえる給付金
失業手当は、転職活動中の生活費を支えますが、支給年齢は64歳までです。
そこで、65歳以降に転職活動をする人に、一定の手当を支給する制度として「高年齢求職者給付金」があります。
受給するには、離職の日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上あり、さらに失業状態にある必要があります。
また高年齢求職者給付金は、30日分または50日分が一括で支給され、非課税です。
まとめ
雇用保険加入で、得する3つの制度、「高年齢雇用継続基本給付金」「高年齢再就職給付金」「高年齢求職者給付金」を解説しました。いずれも定年後、少なくなる賃金を補てんしてくれる制度です。必ず、給付金の対象になるのかどうか、自分で確認することが大切です。
出典
厚生労働省 令和4年就労条件総合調査の概況(第15表)
厚生労働省 高年齢者の雇用
厚生労働省 Q&A~事業主の皆様へ~
厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
厚生労働省 高年齢雇用継続給付の見直し(雇用保険法関係)
厚生労働省 Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、差就職手当)~
厚生労働省 離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>
執筆者:水上克朗
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー
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