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10月から勤務先が社会保険適用になります。現在年収100万円ほどのパートですが、扶養から外れるメリットとデメリットは何ですか?

ファイナンシャルフィールド / 2024年10月19日 23時20分

10月から勤務先が社会保険適用になります。現在年収100万円ほどのパートですが、扶養から外れるメリットとデメリットは何ですか?

政府はパートタイム勤務者などに対し、社会保険を段階的に適用する施策を進めています。2024年10月からは適用対象となる企業の規模が、従来の「従業員数101人以上」から、「従業員数51人以上」に拡大されました。その結果、多くの被扶養配偶者が社会保険の適用を受けるようになります。   今回は、扶養から外れて社会保険が適用されることの、メリットとデメリットについて詳しく解説します。

被扶養配偶者であったメリットとは

会社員などの厚生年金の被保険者に扶養されていた配偶者には、どのようなメリットがあったのか確認してみましょう(※1)。なぜならば、社会保険が適用されることのデメリットは、被扶養配偶者としてのメリットがなくなることだからです。
 

1. 国民年金の第3号被保険者となる

被扶養配偶者は自ら国民年金保険料を支払うことなく、「国民年金の第3号被保険者」として扱われます。具体的には、被扶養配偶者である期間が保険料支払い済み期間となり、将来受け取る老齢基礎年金額に反映されます。
 

2. 健康保険の給付を受けることができる

被扶養配偶者は「健康保険料を支払うことなく、医療費の3割を自己負担することにより治療を受けることができる」など、配偶者が加入している健康保険の給付を受けることができます。なお、被扶養配偶者が45歳以上の「介護保険第2号被保険者」に該当する場合でも、介護保険料を支払わないで済みます。
 

3. 配偶者も被扶養配偶者の保険料を支払う必要がない

被扶養配偶者を扶養している配偶者は、扶養する家族の分の年金や健康保険の保険料を払うことは求められておらず、報酬に応じて独身者と同じ保険料を支払うだけで済みます。
 

社会保険が適用されるメリット

被扶養配偶者であった人に社会保険が適用されるようになると、前述したとおり、今まで支払わないで済んでいた社会保険料を支払うことになるのですが、そのメリットについても考えてみましょう(※1)。
 

1. 厚生年金の被保険者となることができる

わが国の年金制度は、国民年金と厚生年金の2階建てになっています。厚生年金の被保険者となることで、受け取ることのできる年金額が増えるばかりではなく、国民年金にはない保障を受けることができるようになります。
 
例えば、障害と認定された場合に支給される障害年金の場合、国民年金では「障害等級1級」と「2級」に限られますが、厚生年金にはより軽い程度の「障害等級3級」に障害年金が支給されるほか、より軽い障害にも「障害手当金」が支給されます(※2)。
 

2. 健康保険の被保険者となることができる

健康保険の被保険者となることで、被扶養配偶者には適用されなかった、病気休業中に支払われる「傷病手当金」(※3)や産前産後休業中に支払われる出産手当金(※4)が支給されるようになります。
 

3. 扶養基準を超えて働くことができる

従来であれば被扶養配偶者は年収を、扶養基準である130万円以内に抑えるように、勤務時間などを調整する必要がありました。しかし社会保険が適用されることで、これからは年収を気にすることなく働くことができるようになります。
 

支払う保険料の額を確認しよう

パートタイマーとして勤務していた被扶養配偶者が、社会保険の適用を受けると、保険料を支払わなければなりません。
 
扶養の範囲内となるよう年収120万円で働いていた45歳未満の方の場合、社会保険の適用を受けて支払う保険料は、厚生年金保険料が月額約9000円、健康保険料が月額約4900円となり、合わせて社会保険料として約1万3900円支払うことになります。
なお、45歳以上で介護保険の第2号被保険者となる方の健康保険料は、介護保険料が上乗せされ約5700円となりますので、合わせて社会保険料として約1万4700円支払うことになります。
 
年収と保険料(月額)の目安は、図表1のとおりとなります。
 
図表1

出典:全国健康保険協会 協会けんぽ 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・構成年金保険の保険料額表(東京都)をもとに筆者作成
 

老齢厚生年金の見込み額は

老齢厚生年金においては、厚生年金の被保険者として働いていた期間と年収に応じた年金が、65歳から支給されます(※6)。
勤務年数と年収に応じた老齢厚生年金(報酬比例部分)の目安は、1ヶ月当たりの金額で考えると、図表2のとおりとなります。
 
図表2

出典:日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額をもとに筆者作成
 
また、厚生年金の加入期間は、国民年金の第2号被保険者として国民年金保険料の納付済期間とされ、第3号被保険者および保険料を納付した第1号被保険者期間を含めて40年間になると満額の老齢基礎年金を受給することができます(※7)。
 
したがって、年収120万円の被扶養配偶者が社会保険の適用を受けて10年間勤務すると、老齢基礎年金の月額約6万8000円(令和6年度の満額)に加えて約5370円の老齢厚生年金を上乗せすることができます。
 
なお、厚生労働省が運営している「公的年金シミュレーター」(※8)を使用すると、働き方の違いによる年金額を確認することができます。
 

まとめ

2024年10月から、一定の要件を満たすパートタイマーなどに社会保険を適用する事業所の規模の下限が、101人から、51人に広がります。そのために、多くの被扶養配偶者が扶養を外れ、社会保険の適用を受けるようになります。
社会保険の適用を受けるようになると、社会保険料を支払う義務が生じ手取り額が減ることになりますが、将来受け取る老齢年金に老齢厚生年金が上乗せされるなどのメリットがあります。
扶養の範囲内にとどまるために「130万円の壁」を気にしながら働いていた方は、この機会に考え方を改め、無理のない範囲で収入を増やす働き方をしてはいかがでしょうか。
 

出典

(※1)厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト 厚生労働省から法律改正のお知らせ
(※2)日本年金機構 障害年金
(※3)全国健康保険協会 協会けんぽ 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
(※4)全国健康保険協会 協会けんぽ 出産で会社を休んだとき
(※5)全国健康保険協会 協会けんぽ 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・構成年金保険の保険料額表(東京都)
(※6)日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※7)日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※8)厚生労働省 公的年金シミュレーター
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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