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子がいない場合の相続人は妻だけではないって本当ですか? 妻は同年齢で、子どもはいません。誰が相続人になるのでしょうか?

ファイナンシャルフィールド / 2024年10月20日 22時20分

子がいない場合の相続人は妻だけではないって本当ですか? 妻は同年齢で、子どもはいません。誰が相続人になるのでしょうか?

最近、「お子さまがいないご夫婦」が増えているように感じます。 お子さまがいないからこそ、相続についていろいろ考えておくべきだと思いますが、あまり深く考えていない方が多いのも現実です。お子さまがいない場合に「相続人は誰になるのか」についてしっかり把握されていないことや、間違えた認識をされていることも少なくありません。   このコラムを読んでいただいている方ご本人だけでなく、身内にお子さまのいない叔父さま、叔母さまがいらっしゃる方、お子さまがいない兄弟姉妹がいらっしゃる方にぜひお読みいただければと思います。

子がいない方の相続人は誰?

民法では「法定相続人」、すなわち、法的に相続人となる人を定めています。
亡くなられた方(被相続人)に子がいれば、配偶者と子(第1順位)が法定相続人です。子がいない場合で両親のいずれかでもご存命ならば、被相続人の配偶者と両親(第2順位)。子がなく、両親もすでに他界されている場合は配偶者と被相続人の兄弟姉妹(第3順位)とされています。
お子さまがいない場合の相続人は配偶者だけではないことに注意です。
 
お子さまがいらっしゃらないご夫婦の中には、何もしなくても夫が亡くなった時、その財産はすべて妻が相続することになると思い込んでいる方が少なくありません。
この認識の間違いをそのまま放置してしまうと、ご自身や配偶者が亡くなられた後で大きなトラブルに発展してしまう可能性があります。
 

遺産分割の話し合いができない!?

被相続人が高齢であれば、その兄弟姉妹も高齢である場合が多いでしょう。兄弟姉妹に認知症の方がいらっしゃる場合や、連絡が取れない人がいる場合、遺産分割協議が進められません。
すでに兄弟姉妹の中で亡くなられている人がいた場合、その子(被相続人にとっての「甥・姪」)が「代襲相続人(亡くなられた相続人の権利を引き継ぐ人)」になります。
 
甥・姪とは会ったこともない、ということもあるでしょう。そうした遠縁の親戚と遺産分割協議(遺産分割の話し合い)を行おうと思ってもスムーズに進まないことは容易に想像できます。なかには、連絡が取れない場合もあります。遠方に住んでいる、海外に住んでいるということもあります。
 
兄弟姉妹が相続人になる場合、遺言書がなければ、残された配偶者は被相続人の兄弟姉妹と「遺産分割協議」を行う必要があります。兄弟姉妹の法定相続分は1/4ですので、被相続人の財産の1/4は兄弟姉妹に渡さなければならない可能性があります。
 
もちろん、話し合いの結果、兄弟姉妹が「自分たちは相続しなくていいよ」という場合には問題ありませんが、その場合でも「遺産分割協議書」の作成は必要です。残された配偶者と被相続人の兄弟姉妹との仲が悪いと、遺産分割協議でもめてしまう可能性が高くなります。
 
配偶者がすべて相続するものと思っていたのに、相続発生後に被相続人の兄弟姉妹に財産を分けなければならないことがわかっても、現預金だけでは支払えず、泣く泣く住んでいた住居を売却して資金を確保しなければならないようなこともありえます。
 

「相続対策」が必要なのは富裕層だけではない

富裕層でなくても、相続対策をする必要があります。
「相続対策」には、

●分割対策
●納税資金対策
●節税対策

の3つのポイントがあります。
 
多くの人が「相続対策」と聞くとすぐに節税対策のことを思い浮かべますが、残された人がもめないようにすること、もめていても遺産分割を進められるようにすることのほうがより重要な対策だといえます。
 

子がいない夫婦は「遺言書」の作成を

お子さまがおらず、配偶者にすべての財産を残したい、と考えている方が生前にしておくべき「相続対策」の第一歩は「遺言書」の作成です。
 
被相続人の兄弟姉妹には「遺留分」がありません。
遺留分とは、相続の際に一定の範囲の相続人が最低限取得できる遺産の割合です。配偶者や子(直系卑属)、両親(直系尊属)には遺留分はありますが、兄弟姉妹にはありません。
 
民法で定めている法定相続分はあくまでも目安です。遺言書がある場合、遺言書で指定された分割方法が法定相続分よりも優先されます。ただし、被相続人が作成した遺言書の内容があまりにも偏ったものである場合に、遺留分がある相続人は「遺留分侵害額請求」を行うことにより、遺留分相当額を受け取る権利が発生します。
「兄弟姉妹には遺留分がない」ということは、被相続人が生前に「全財産を配偶者に相続させる」という一文を記した「遺言書」があれば、遺産分割協議を行う必要がなくなり、遺言書どおりにすべての財産を配偶者が相続できることになります。
 

遺言書はどのように作成すればよい?

遺言書の作成には費用がかかる、と思い込んでいる方も多いようです。また、面倒くさい、自分が死ぬときのことなど考えたくもない、と考えて向き合わない方もいます。
しかし、多くの方が「自分が死んだあと、周りの人に迷惑をかけたくない」とも思っています。「遺言書」があるだけで避けられるトラブルもあるのです。
 
一般的に用いられる遺言書の方式には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
公正証書遺言は、公証役場で公証人と証人の立ち会いのもと、作成される遺言書です。作成には、財産額等に応じて費用がかかりますが、作成された遺言書は公証役場に保管され、信頼性が高いものだといえます。
自筆証書遺言は原則として、本文、名前、日付などを自筆(手書き)で作成し、押印する必要があります。また、相続発生後に家庭裁判所で「検認」手続きをする必要もあります。
自筆証書保管制度を利用すれば、保管の申請手数料(3900円)がかかりますが検認手続きは不要になります(保管申請の際に「本人確認」も行われますので、本人が保管所へ出向く必要があります)。
 
この制度ができたおかげで、遺言書の作成のハードルはずいぶん下がったように思います。詳しくは法務省「自筆証書遺言書保管制度」の紹介ページ(※)をご確認ください。
 

まとめ

遺言書があればまったくもめる心配がない、というわけではありません。しかし、遺言書があることでリスクが軽減されるケースが多いことは事実です。また、相続の現場ではこのほかにもさまざまな背景があり、単純ではないケースがいろいろあります。
 
相続対策は税金対策だけはありません。
先述のように残された人が家族・親族がもめないようにすること、もめても遺産分割を進められるようにすることのほうがより重要な対策だといえます。ご自身が亡くなる時のこと、家族が亡くなることは考えたくないという気持ちもわかりますが、ちょっとした対策で軽減できるリスクもあります。
 
残される家族が困らないように、ご自身の、ご家族の相続について考えてみませんか?
 

出典

(※)法務省 預けて安心!自筆証書遺言書保管制度
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、宅建マイスター(上級宅建士)、上級相続診断士、西山ライフデザイン代表取締役

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