国家公務員の知人が定年退職しました。「退職金」の手取りはどのくらいなのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月24日 2時0分
国家公務員として働き、定年退職をした知人がいると、退職金をいくら受け取ったのか気になる方もいるかもしれません。公務員の退職金は、平均額が公表されているため、知人の勤続年数や仕事区分が分かればある程度推測が可能です。 また、退職金に課税される税金の求め方も公開されているので、気になる方はチェックしておきましょう。今回は、国家公務員の平均退職金額や、退職金の手取り額の求め方などについてご紹介します。
国家公務員の退職金はどれくらい?
内閣人事局による令和4年度の「退職手当の支給状況」によると、国家公務員における常勤職員の退職金平均支給額は定年の場合で勤続年数30~34年が1991万7000円、35~39年が2303万8000円でした。
国家公務員の定年は令和5年度以降、段階的に引き上げられていますが、ここでは令和4年度に適用されていた旧定年の60歳で退職したと仮定します。知人が22歳から38年間働いているとすると、定年退職により額面で2000万円以上受け取っている可能性があるでしょう。
ただし、仕事区分に応じて平均支給額は異なります。実際に受け取った金額になるべく近い平均支給額を知りたいときは、知人の仕事区分をそれとなく聞いてみましょう。
退職金の手取りの求め方
退職金は額面そのままでは受け取れず、所得税や住民税などが引かれたあとの金額を受け取ります。これは、退職金が「退職所得」として課税されるためです。退職所得の税額の計算は、「退職所得の受給に関する申告書」を提出したか否かで異なります。
人事院によると、もし申告書を提出していれば、課税される退職所得額は「(退職手当額-退職所得控除額)×1/2」で算出された金額です。一方、申告書を提出しなければ、課税額は「退職金×20.42%」になり、源泉徴収されます。また、退職所得控除額は勤続年数が20年を超えていると「(勤続年数-20)×70万円+800万円」で求められます。
退職金の手取り額を求めるには、課税対象額を計算したあと所得税と住民税、復興特別所得税を算出し、退職金から引きます。
所得税の税率や控除額は、課税対象額によって変動する累進課税制です。国税庁によると、所得税率の金額区分は表1のように設定されています。表の内容を基に計算して、所得税を求めます。
表1
課税対象額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
194万9000円以下 | 5% | 0円 |
195万~329万9000円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万~694万9000円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万~899万9000円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万~1799万9000円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万~3999万9000円以下 | 40% | 279万6000円 |
4000万円~ | 45% | 479万6000円 |
※国税庁「退職金と税」を基に筆者作成
住民税の課税対象額の計算方法は所得税と同様ですが、1000円未満の切り捨ては行いません。課税対象額を求めたあと、市町村民税6%、都道府県民税4%をそれぞれ算出し、100円未満を切り捨てたのちに合算した金額が住民税額です。
手取りはどれくらい?
今回は、知人が38年間勤めあげ、勤続年数35~39年の平均支給額2303万8000円を受け取っているとして、退職金の手取り額を計算しましょう。なお、退職所得の受給に関する申告書は提出しているとします。
まず、退職所得控除は「(38年-20)×70万円+800万円」なので2060万円です。課税対象額の式に当てはめると「(2303万8000円-2060万円)×1/2」で121万9000円になります。
表1を参照すると、所得税率は5%となるため、所得税額は6万950円です。復興特別所得税は所得税額×2.1%で計算するため、1279円(1円未満切り捨て)です。
つまり、退職金の所得税の総額は所得税額+復興特別所得税で6万2229円ということになります。一方、住民税は「(121万9000円×6%)+(121万9000円×4%)」(100円未満を切り捨てて合算)なので、12万1800円になります。
税額を基にすると、手取り額は「2303万8000円-(6万2229円+12万1800円)」で2285万3971円です。なお、退職金から社会保険料は引かれません。
平均額と同じなら手取り額は2285万3971円
国家公務員の場合、勤続年数35~39年の常勤職員の退職金は平均で2303万8000円でした。退職金の手取り額を求めたいときは、ほかの所得とは別の方法で計算する必要があります。
もし知人が平均額と同額の退職金を受け取っていれば、手取り額は2285万円3971円です。ただし、実際の勤続年数や仕事区分によって受け取れる金額は変動します。知人の実際の退職金が気になるときは、勤続年数や仕事区分も聞いてみましょう。
出典
内閣官房内閣人事局 退職手当の支給状況 表2 勤続年数別退職手当受給者数及び退職手当平均支給額(2ページ)
人事院 1 退職手当制度の概要 (7) 退職手当に係る税金
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版) 退職金と税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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