安全は昔の話?安全なはずの預金にも怖いリスク
ファイナンシャルフィールド / 2019年1月20日 22時30分
リーマンショックから10年が過ぎ、そろそろ次の景気後退を懸念する空気が広がっているようです。 株式や投信で運用していた人の中には、ここでいったん売却をし、定期預金に資金を避難させておこうと考える人も少なくないかもしれません。 しかし、残念ながら、預金にもリスクはあります。それは、預け先の銀行が破たんするというリスクです。
銀行の厳しい経営環境
実は、地方の銀行の経営悪化が深刻です。低金利が長引いて利ザヤが稼ぎにくいうえ、地方では人口や企業が減少しているためです。
金融庁が9月に発表した金融リポート(※)によると、融資などの顧客向け業務サービスにおいて、全地銀の約半数が2018年3月期まで2期以上の赤字だったと言います。
そうした苦しい経営状況はその後も続いているようで、2018年4~9月期決算では、上場地銀80社のうち49社において、本業での稼ぎを示す実質業務純益が赤字か減益となりました。
メガバンクについては、2018年4~9月期には3行とも揃って最終増益を達成しました。しかし海外業務を急拡大させた結果、世界経済や国際金融市場の変化に、より影響を受けやすくもなっています。
また、台頭するフィンテックとの競争によって、メガバンクがこれまで通りのビジネスを続けられるかどうかも予断を許しません。11月に、LINEとみずほフィナンシャルグループが共同で新銀行の設立に向けた準備をすると発表したことは、そうした流れを強く感じさせました。
すぐに多くの銀行が破たんするという懸念はまだ必要なさそうではあるものの、リスクとしては、また意識しておくべき時代になってきたと言えます。
改めて、預金保険制度とは?
預金保険制度とは、銀行が破たんした際に、預金者の保護を図るために国が定めた制度です。当座預金や利息の付かない普通預金などは、全額保護されます。
一方、利息の付く普通預金や定期預金などの場合は、金融機関ごとに元本1000万円までと、破たん日までのその利息が保護されます。
同一銀行内でいくつかの支店に分けて口座を持っている場合も、「名寄せ」が行われ、全ての口座の預金が合算されたうちの元本1000万円分までが、保護の対象となります。
ただし、2つの銀行が合併した場合は、その後1年間に限り、その合併銀行での預金は元本2000万円分まで保護されます。3つの銀行の合併の場合は3000万円分までとなります。
預金保険で保護されない預金を知っておく
大抵の普通預金や定期預金は保護の対象となるため、むしろ対象外を知っておくことが役に立ちます。
以下に、注意すべき預金やサービスを挙げておきます。
1.外貨預金は対象外
2.外国銀行の在日支店の預金は対象外
カタカナの銀行名で、日本の銀行なのかどうか判断しづらい場合は、預金保険機構のホームページで確認することができます。
また、日本の銀行の海外支店に預ける預金も対象外となります。
3 一部の仕組預金は対象外
仕組預金の種類によって、預金保険の対象とならないものがあります。対象となるかどうか、提供する金融機関に確認することが必要です。
4 個人事業主の事業用の預金口座も名寄せされる
屋号名などで作った事業用の口座にある金額も含めて、一預金者当たり元本1000万円分までが保護対象です。ただし事業が法人格を持っている場合は、別の預金者として扱われます。
5 銀行が発行するプリペイドカードにチャージした分も対象外
銀行の名前がつき、その銀行口座に紐づけされたプリペイドカードであっても、カードにチャージしたお金は保護されません。またスマホ決済が広がりを見せ始めていますが、その決済アプリを銀行と紐づけしてオートチャージした金額も、現時点では同様に保護の対象とはなっていません。
ちなみに、証券会社の場合は
証券会社にも、MRFやMMFという、普通預金のように出し入れが比較的簡単な商品があります。これらは預金ではないので、預金保険の対象では当然ありません。
しかし、券会社の場合は、「分別管理」といって、自社の資産と顧客の資産を分けて管理しています。このため、証券会社が潰れても、顧客の資産が失われることは原則的にありません。
さらに、投資者保護基金によって一人当たり1000万円を上限に補償される制度もあり、証券会社に預けている資産は二重に保証されています。ただし、運用する商品が値下がりしたものを保証してくれるわけではなく、あくまで証券会社の破たんによる被害を防いでくれるものです。
金利がこれほど低い現状では、預金の取り柄は安全性しかほぼないとも言えます。だからこそ、預け先や預け方には十分注意して、その取り柄を生かすように利用してほしいと思います。
出典
(※)金融庁 変革期における金融サービスの向上にむけて~金融行政のこれまでの実践と今後の方針(平成30事務年度)~について
執筆者:北垣愛(きたがき あい)
マネー・マーケット・アドバイザー
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