高等教育無償化で、大学の費用はどのくらい賄える?
ファイナンシャルフィールド / 2019年1月21日 10時0分
昨年12月末に示された文部省案によれば、低所得世帯を対象に2020年度から実施予定の高等教育無償化の支援内容について、給付型奨学金は1人当たり最大91万円、授業料の減免措置については最大70万円(私大)などとなっています。 これによって、大学の費用はどのくらい賄えるのでしょうか。
現行の給付型奨学金について
まず、現行の日本学生支援機構の給付型奨学金について確認しておきましょう。平成29年度から先行実施、30年度から本格実施しています。この奨学金の創設の趣旨は、経済的な理由で大学等への進学を断念せざるを得ない生徒の進学を後押しする点にあります。
したがって、対象は、大学(学部)、短期大学、専門学校に進学を予定している人、及び高等専門学校3年生から4年生に進級する人で、家庭の事情が、住民税(所得割)非課税世帯の人、生活保護受給世帯の人、社会的養護を必要とする人と限定されています。
また、進学を後押しするという趣旨から、貸与型奨学金と異なり、進学後に申込むことはできません。
給付月額は、国公立が2万円(自宅通学)または3万円(自宅外通学)、私立が3万円(自宅通学)または4万円(自宅外通学)と、決して十分な金額といえません。貸与型奨学金との併用が可能です。
採用は日本学生支援機構が提示するガイドラインを踏まえ、高等学校等が推薦基準を定め、これに基づいて選考を行い、推薦枠の範囲内で日本学生支援機構に推薦します。推薦枠は数名程度と狭き門です。
授業料等の減免措置
2020年度実施予定の大学等高等教育の無償化では、さらに、低所得者世帯を対象に、入学料・授業料の減免措置を講じ、給付型奨学金を大幅に拡充します。
文部科学省案では、住民税非課税世帯(年収270万円未満)の場合、授業料等の減免措置(上限)は、国立大では入学金約28万円と授業料約54万円(標準額)を全額免除し、公立大では、国立大の額を上限とします。私大では入学金約26万円と授業料約70万円を減額します。
上記の金額を基準として、年収300万円未満は上記の3分の2、380万円未満は3分の1の額が支給されます。なお、年収は4人世帯の目安です。
文部科学省の初年度学生納付金調査(※)では、私大文科系学部の入学金は約23万円、授業料は約78万円となっています。理科系学部では、入学金約25万円、授業料約110万円です。
入学金・授業料以外にも、施設設備費、実験実習費、諸会費など、数十万円かかります。一般的に学費が最も安い文科系学部でも、これらの金額を合計した初年度納付金は平均約125万円ですので、授業料等減免措置では、最大で、初年度納付金の約77%しかカバーできません。
※平成29年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について
拡充した給付型奨学金
文部科学省案によれば、国公立の大学、短大、専門学校の場合、支給額は年間約35万円(自宅生)又は約80万円(自宅外生)です。私立の大学、短大、専門学校の場合は、約46万円(自宅生)又は約91万円(自宅外生)です。現行の最大48万円からほぼ倍増しています。
なお、寮生活の多い高等専門学校は、生活実態に応じて大学生の5~7割程度となります。
文部科学省の「人づくり革命」についての資料を見ると、給付型奨学金については、支援を受けた学生が学業に専念できるようにするため、学生生活を送るのに必要な生活費を賄えるような措置を講ずるとしています。
日本学生支援機構「平成28年度学生生活調査」の「居住形態別・収入平均額及び学生生活費の内訳(大学昼間部)」を見ると、私大自宅外生の修学費、課外活動費、通学費、食費、住居・光熱費、保健衛生費、授業料以外の学校納付金、娯楽・し好費、その他の日常費の合計は年間約138万円です。
娯楽・し好費、その他の日常費を除いた金額は年間約105万円です。娯楽・し好費など、学生生活を送るのに必要性の低い生活費は、支援の対象から除かれるべきです。私大自宅外生の給付型奨学金は年間約91万円ですので、妥当な金額と言えます。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー
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