年金を「繰り下げ受給」しようと68歳まで頑張ったけど、病気で多くのお金が必要になりました。これまでの分を「まとめて受け取れる」って本当ですか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月29日 2時30分
年金受給額を少しでも増やしたいと、繰下げ受給を考える人も多いのではないでしょうか。 しかし、予期せぬ病気や大きな出費が発生した際に、それまでの繰下げ分をまとめて受け取れる制度があることを知っている人は少ないかもしれません。 本記事では、年金の繰下げ受給制度と、急な出費に対応する方法について詳しく解説します。
年金の繰下げ受給とは
年金の繰下げ受給とは、65歳の時点で年金を受け取らずに、66歳以降に受給を遅らせることで年金額が増える制度を指します。遅らせることができる年齢は75歳までで、1ヶ月遅らせるごとに年金受給額が0.7%増えます。
例えば、70歳まで繰り下げると、65歳で受け取るはずだった年金額の42%(月0.7%×12ヶ月×5年)も増額して受け取ることができます。75歳まで繰り下げると、84%もの増額となります。
繰下げ受給は、将来的により多くの年金を受け取りたい人や、まだ仕事を続けている人にとって魅力的な選択肢です。特に、まだ健康で長生きしたいと考えている人や、現在の収入で十分生活できる人には、大きなメリットがあると言えるでしょう。
急きょまとまったお金が必要になったら
ただ、繰下げ待機期間中に、急にまとまった資金が必要になる場合もあるかもしれません。そのような場合、65歳までさかのぼって本来の年金をまとめて受け取ることが可能です。例えば、68歳で病気になったり、家の修繕でまとまった資金が必要になったりした場合、65歳から68歳までの3年間の年金を一括で受け取れるのです。
この制度は、繰下げ受給を選択した人にとって、いわば「セーフティネット」のような役割を果たします。もちろん、受け取った資金は自由に使えるので、病気の治療費に充てたり、住宅修繕費用に使用したりすることができます。
ただし、この制度にはいくつかの注意点があります。
注意すべきことは?
一度、65歳までさかのぼって年金を受給すると、それ以降の年金額は、65歳時点で受け取る予定だった金額と同額になります。つまり、68歳まで繰り下げていたことによる増額分は失われ、せっかくの繰下げ受給のメリットが無効になってしまうのです。この制度を本当に使うかどうか、長期的な視点での判断が重要といえるでしょう。
可能であれば、貯蓄を切り崩してでも、年金の繰下げは続けたほうが有利な場合が多くなります。なぜなら、繰下げによる増額は、1ヶ月0.7%、1年で8.4%にもなり、これは現在の金利環境では非常に高い利回りと言えるからです。
急にまとまったお金が必要になっても、預貯金を充てるほか、リバースモーゲージといった融資を活用したり、家族からの支援を受けたりして、年金の繰下げを継続するのが望ましいと言えます。
繰り下げた年金は、高利回りでかつローリスクな投資と同じような効果があり、老後の安定した収入を確保する重要な手段となるはずです。
なお、一度に多くのお金は必要なくても、病気や事故などで、仕事が続けられなくなることもあるかもしれません。その際は繰下げることをやめて、その時点から年金を受給できるよう請求しましょう。68歳までの3年間分で25.2%(月0.7%×12ヶ月×3年)増額した年金を、一生涯受け取れます。
まとめ
年金を繰下げ待機している最中に、急に大きな出費が発生した場合、65歳までさかのぼって年金を一括で受け取ることは確かに可能です。しかし、その後の年金額は繰下げ待機前の金額(本来の年金額)となってしまい、増額分を失うことになります。
このため、長期的な視点から見ると、できるだけ年金の繰下げを続けるのがベストです。失業などで繰下げを断念する場合も、さかのぼらずその時点からの年金を請求することで、繰り下げた増額分を生涯受け取れます。
もちろん、最終的な判断は、個人の状況や将来の生活設計によって異なります。さかのぼって年金を請求すると一括でいくら受け取れるのか、その際の年金額がどの程度になるのかなど、具体的に知りたい場合には、年金事務所に相談することをおすすめします。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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