父は、70歳を超えてもまだ働きに出ています。子としては「いつまで働きつづければよいのだろう」と不安になってしまうのですが、父がもらえる年金は毎月どのくらいなのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月29日 3時30分
内閣府が公表している令和6年版高齢社会白書(※1)によると、65歳以上の高齢者の就業率は年々伸びています。2023年時点の就業率は、男女平均で65~69歳が52.0%、70~74歳が34.0%、75歳以上が11.4%となっています。 今回は、高齢者の老齢年金の見込み額を推測する方法と、70歳を超えて働きつづける場合の年金に関する影響について解説します。
老齢年金額を推測する方法
会社員が65歳から受給することのできる老齢年金の額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の年金額を合わせた額となります(※2)。
1. 老齢基礎年金の受給額
老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間、第1号被保険者(自営業者など)として国民年金保険料を払い込むか、第2号被保険者(会社員などの厚生年金被保険者)であるか、第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者)であった場合に満額を受給することができます。
70歳を超えて働く人の場合、20歳から60歳まで会社員であったなら、満額の老齢基礎年金を受給することができ、その額は令和6年度の場合、81万3700円(昭和31年4月2日以後生まれの方は81万6000円)となります。
2. 老齢厚生年金の受給額
老齢厚生年金の受給額は、報酬比例部分、経過的加算、加給年金を合わせた額となりますが、その大部分を占めるのが報酬比例部分です。報酬比例部分の額は、在職中の報酬と在職期間により、以下の式から算定されます(※3)。
報酬比例部分=A+B
A:平成15年3月以前の加入期間
平均標準報酬月額(注1)×7.125÷1000(注2)×平成15年3月までの加入期間の月数
B:平成15年4月以降の加入期間
平均標準報酬額(注3)×5.481÷1000(注2)×平成15年4月以降の加入期間の月数
(注1)平成15年3月以前の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月以前の加入期間で割って得た額
(注2)昭和21年4月1日以前に生まれた方については、給付乗率が異なる
(注3)平成15年4月以降の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以降の加入期間で割って得た額
なお報酬比例部分の額は、在勤中の平均年収と在職年数を基に以下の式から概算することができます。
報酬比例部分の概算額=平均年収×5.481÷1000×在職年数
70歳を超えて働いても年金は増えない
厚生年金の加入期間(被保険者期間)は、70歳になるまでです。70歳まで会社員として働いた報酬と在職期間は老齢厚生年金に反映されますが、70歳以降はいくら働いても老齢厚生年金額には反映されません(※4)。
老齢年金を受給しながら働くと、年金が減額される?
老齢厚生年金を受給している方が、老齢厚生年金の被保険者として働いている間は、受給している老齢厚生年金の基本月額(注4)と総報酬月額相当額(注5)に応じて、老齢厚生年金額が支給停止となる「在職老齢年金制度」があります(※5)。
(注4)加給年金を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額
(注5)(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
老齢厚生年金を受給している70歳以上の方は、会社員として働いていても厚生年金の被保険者ではありませんが、在職老齢年金制度の適用を受けるため、年金の支給停止の対象となります。
この場合、70歳以上の方が得た賃金は正式な「標準報酬月額」や「標準賞与額」ではありませんが、在職老齢年金制度においては、「標準報酬月額に相当する額」と「標準賞与額に相当する額」として扱われます。
まとめ
子どもとして、70歳を超えて働く親が心配になるのは当然でしょう。まずは、親の在職期間と平均年収を推定して、親が受給している老齢年金の額を概算し、必要であれば経済的な援助を考えるとよいでしょう。
また、70歳を超えて働いても老齢厚生年金の額は増えないうえ、収入によっては在職老齢年金制度により老齢厚生年金が減額されますので、働きすぎないように、親に注意するとよいでしょう。
ただし、70歳を超えても働きつづける理由としては、収入を得ることだけではなく、働くことに生きがいを感じていることが考えられますので、親の意向を尊重することをお勧めします。
出典
(※1)内閣府 令和6年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)
(※2)日本年金機構 老齢年金
(※3)日本年金機構 年金用語集 は行「報酬比例部分」
(※4)日本年金機構 適用事業所と被保険者
(※5)日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
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