老後の生活設計では「どこで、どのように暮らすか」を考えることが重要である。そのヒントとなる「地域包括ケアシステム」という仕組みとは
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月1日 8時20分
「地域包括ケアシステム」という言葉があります。一般的には耳慣れないかもしれませんが、老後の生活設計を組み立てるうえでは、非常に重要な考え方です。国は現在地域包括ケアシステムを積極的に推進していますが、国民レベルでの理解が思うように進んでいないのが現状でしょう。 今回は、老後の暮らしを想定した「地域包括ケアシステム」について一緒に学んでいきましょう。
地域包括ケアシステムとは
2040年、いわゆる団塊ジュニア世代が65歳になる頃が、高齢社会のピークと考えられています。そして、その親の世代である団塊世代が75歳になるのが2025年です。目の前に超高齢化の波が押し寄せてきていますが、国は2025年をめどに、地域包括ケアシステムを構築しようとしています。
地域包括ケアシステムは、簡単にいってしまうと、地域全体で高齢者を支える仕組みのことです。
図表1は地域包括ケアシステムのイメージですが、「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」と記されています。
図表1
出典:厚生労働省 地域包括ケアシステム
現役世代にとっては、高齢期のライフステージをイメージすることは難しいかもしれませんが、特に75歳以上の後期高齢者になると、老化や病気などにより、それまでと同じように暮らすことが徐々にできなくなってきます。
そのようなライフステージにおいては、ひとり暮らしは難しく、家族や地域の人々といった自分以外の人の支えがどうしても必要になります。このような高齢者を地域で支える仕組みを「地域包括ケアシステム」といいます。
老後の生活設計では「どこで、どのように暮らすか」が重要なポイントになる
図表1では、「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」と記されています。この文章を分解すると、以下のようになるでしょう。
(1)重度な要介護状態となっても
(2)住み慣れた地域で
(3)自分らしい暮らしを
(4)人生の最後まで続けることができるよう、
(5)住まい・医療・介護・予防・生活支援が
(6)一体的に提供される
これをもとに老後の人生設計のポイントを整理すると、「最期を迎えるまでの間、自分らしく生きるために、どこでどのように暮らせばよいか」を考えておくことが、大切であると分かります。
要するに、老後のライフステージでは上記の考え方が基本軸になるため、このような体制を整備するために地域包括ケアシステムがあるということです。そう捉えると私たち個人も、地域社会のなかでどのように暮らすかを考えておく必要があることに気づかされます。
老後のお金は、地域社会で生きるために準備する
昨今、将来への不安から「お金をためよう」という心理が強く働いているように感じられます。少子高齢化社会の下では致し方ないことかもしれませんが、「老後が不安だから」などといった理由だけではっきりとした目的がないまま、お金をためること自体が目的化しているように見受けられます。
老後のお金をためる目的がはっきりと見えにくい場合、地域包括ケアシステムという社会的な仕組みのなかで、自分がどのように暮らしたいかを考えてみると、イメージしやすくなるかもしれません。
・病気になったら、地域医療(二次医療圏)のなかで、どの病院を利用することになるのか
・退院後、どこで暮らすのか(自宅、老健、特養、有料老人ホーム、サ高住など)
・介護が必要になった場合、どのように暮らしていく必要があるのか
・自宅の改修はどのようにしたらよいか
・誰と生きるのか、誰と暮らすのか(家族、友人、同僚、地域社会、ボランティアなどの人間関係)
・葬儀はどのように執り行うのか
・お墓はどのような形態にするのか
・相続や贈与による財産の移転をどうするのか
・誰に相談すればよいのか
このようなことを包括的に考え、対策を練るためにお金を準備します。このとき、単に「老後のお金」というと、漠然としたものになってしまいます。そうではなく、具体的なイメージに落とし込んでいくことが、老後のお金をためるうえで効果的なのではないでしょうか。
まとめ
時代は、かなり速いスピードで変化しています。仕事柄、国の政策などを追っているとそう感じることが間々ありますが、国が想定している10年・15年先の未来を確認しながら、人生設計(ライフプラン)を組み立てていくと、大きく間違う可能性は減るでしょう。
4月に金融経済教育推進機構(J-FLEC)が新設され、今後、金融教育が積極的に推進されるようになります。その目的は「お金とは何か、何のためにお金を使い、ためるのか」などを自分で考えられるようになることです。
今回は「地域包括ケアシステム」という言葉を扱いました。新たな社会システムが構築されようとしています。お金の使い道としては、これを視野に入れて考えることが求められるようになるのではないでしょうか。
出典
厚生労働省 地域包括ケアシステム
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
老後の生活設計で大切なこととは? 介護が必要になった場合を想定し「在宅での暮らしか、施設での暮らしか」をイメージすることから始めよう
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月1日 22時20分
-
75歳の医療費負担が3割になる!? 高齢社会対策大綱から見る家計運営の考え方。
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月31日 22時20分
-
介護を受けることを考えるなら「どこで」「だれと」「どのように」暮らすかを想定することが鍵となる。定年退職後のライフプランの組み立て方を解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月30日 22時20分
-
終活期は3つのコースに分けられる。「どこで暮らし、どこで最期を遂げるか」など、老後の生活基盤を想定しておこう
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月29日 23時10分
-
20・30代の今後のライフプランはどうするべきなのか? 2070年の人口ピラミッドから考えられる事象をFPが解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月29日 23時0分
ランキング
-
1日本のタテ社会に「上の人」がいないと困る訳 人類の進化史に「リーダー」は存在しなかった
東洋経済オンライン / 2024年11月8日 11時0分
-
2ドル売り/円買い介入、 7月11日に3.1兆円・12日に2.3兆円=財務省
ロイター / 2024年11月8日 9時7分
-
3寂しい、寂しい…年金月18万円の80代父、長男一家の近くの老人ホームへ入居も「誰も見舞いに来ません」まさかの暴挙に60代長男絶句【FPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月8日 11時45分
-
4伊藤忠が狙う「アニメ・IPで1000億円」構想の衝撃 ついに本気!「おぱんちゅうさぎ」アジア展開も
東洋経済オンライン / 2024年11月8日 10時0分
-
5「ゴキブリ2000匹と激闘」清掃芸人が見た驚く光景 引っ越してもまたごみ屋敷、再発をどう防ぐか
東洋経済オンライン / 2024年11月8日 9時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください