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投資の暴落局面における「売るか、売らないか」の判断はどうしたらよいのか。実際の暴落局面を例にFPが解説

ファイナンシャルフィールド / 2024年11月1日 9時0分

投資の暴落局面における「売るか、売らないか」の判断はどうしたらよいのか。実際の暴落局面を例にFPが解説

8月1日、日経平均株価が暴落しました。保有している株式を売却した方もいたと思われます。「ろうばい売り」という言葉がX(旧Twitter)上でトレンドワード入りをしていたので、特に投資初心者の場合、不安に駆られた方も多かったのではないでしょうか。   そこで今回は、投資を行ううえでのリスクマネジメントについてお伝えしていきます。

暴落時に売ったほうがよいかどうかは誰にも分からない

日経平均株価指数のチャートを、改めて確認してみましょう。
 
8月1日(金)から週明けの8月5日(月)までの3日間で、7000円を超える下落が起こりました。わずか3日間でここまでの下落が起こるのは非常に珍しいことですが、チャートを見るといかに下落のスピードが速かったかが分かります。
 
図表1 日経平均株価指数(日足)

図表1

※TradingView提供(解説を目的に使用しております)
 
このような暴落局面では、売買の判断は非常に難しく、どこまで下がるかが不透明なため、売り急ぐ投資家が出るのも致し方ないことでしょう。NISA(少額投資非課税制度)を活用して投資を始めたばかりの方にとってはなおさらかもしれません。
 
このように売ってしまう行為に対し、「投資は止めてはダメ」「一喜一憂しないことが大事」「いつかは戻ってくる」「投資は長期で行うもの」といった声も目立っていたようですが、不安で頭がいっぱいになってしまった投資家にとってはそれどころではなかったでしょう。
 
正直にいってしまうと「売りたい」と思えば売ればよいし、「売らないで持ちつづけよう」と思うなら売らなければよいし、ただそれだけのことです。どちらがよいかはそのときに分かるものではなく、後からしか分かりません。結果をいえば、下げ止まり、反転上昇したので、「売らないほうがよい」という意見が優勢であったことになります。
 

暴落局面で「売るか、売らないか」は、可能性としてどちらも成り立つ

「売ったほうがよい」「売らないほうがよい」という意見の対立には、さほど意味はありません。なぜならば、売って利益を得るケースも、売らずに利益を得るケースも現実的には成立し得ることであり、単なる可能性の問題だからです。重要なのは、両方の可能性に対し、どのように判断するかです。
 

〇売らずに持っておいたほうがよいと判断する場合

「売らずに持っておいたほうがよい」と判断する場合、テクニカル的には次の点が根拠となります。
 
これは週足のチャートですが、暴落当時から週足で、下ヒゲの極めて長い陰線が現れていました。投資に慣れている人は、この陰線の意味するところはお分かりでしょうが、このようなローソク足の形は反転上昇のサインとして知られています。
 
図表2 日経平均株価指数(週足)

図表2

※TradingView提供(解説を目的に使用しております)
 
下ヒゲが極めて長くなる場合、序盤で売りが売りを呼び、株価が下値を付けた後、一気に買い戻しの動きが広がることを意味します。つまり、急激に買い戻しが入ったことから、投資家心理として下落に対する恐怖が取り除かれたと解釈することができます。
 
ほかにも、テクニカル上の下げ止まりサインが現れていましたが、超短期間のうちに猛スピードで下落する場合、どちらかというと急反発する可能性が高いことは、覚えておくとよいでしょう。
 
ただし、これはあくまでも可能性の話で、いつもそうなるわけではありません。もちろん、可能性としてさらに下げることもあるため、「必ず下げ止まる」と考えるのは逆に危険です。
 

〇売ったほうがよいと判断する場合

今回の暴落局面では、実をいうと、売らないほうがよい根拠が早い段階ではっきり出てしまったため、「売ったほうがよい」と判断するにはいささか無理があったと考えられます。
 
なぜそういえるかというと、前述の「売らないほうがよい」と判断するテクニカル上の根拠に加え、8月7日に日銀の内田副総裁が、「金融市場が不安定な状況では利上げしない」と発言したことによります。この発言は金融緩和解除の延期を意味し、株式市場にとって好材料になります。
 
ただし、少し長期的に見れば、この時点ではアメリカの中央銀行であるFRBが想定以上の利下げをする確率が高まっていたため、より一層の円高・ドル安が想起され、仮に「アメリカ経済が景気後退に陥る」と考えるならば「売ったほうがよい」いう判断は妥当だったともいえます。
 
このようなことから、売ったほうがよいという理屈も成り立つわけです。
 
繰り返しになりますが、売らないほうがよいと思うなら売らなければよいし、売ったほうがよいと思うなら売ればよい、ただそれだけのことです。
 
大切なのは、どちらの可能性が高いかを自分で考えることです。自分で考えた結果、判断を間違えた場合、それはそれで後々の糧になるため、学ぶことができたと考えればよいことです。
 

投資を始める前にリスク(不確実性)への対応を考えておくことが大切

投資で重要なのは、可能性に対してどのように判断し、振る舞うかです。
 
「暴落時に売ったほうがよいか、売らないほうがよいか」で意見の対立が起こるのは分かりますが、そこにはほとんど意味はなく、むしろ、「暴落した場合にどのように対処するか」をあらかじめ考えたうえで投資をしたほうがよいといえます。いわゆる、「リスクマネジメント」です。
 
投資を始める前に「投資は長期でやる」ことを基本路線に置く場合、リスクマネジメントとしては「暴落時でも売らずに持ちつづけよう」と判断することになるでしょう。
 
一方、「投資は状況によって臨機応変に対応する」と考える場合は、短期的にリスクコントロールすることになるわけですから、暴落時にはすぐに売り、落ち着いたら買い戻すという方法になるでしょう。
 
投資初心者は一般的に前者のような理屈を説明されるため、「投資は長期でやるもの」と信じ切っている方が多いようです。また、この考え方の長所は、「相場の変動に一喜一憂しない」「仕事などに集中できる」「複利効果が期待できる」などが考えられます。
 
しかし、投資はあくまでも可能性の話なので、長期でやって損失を被ることもあり得ることは認識しておいたほうがよいでしょう。
 
また、後者については「リスクコントロールしやすい」という長所はありますが、売買を繰り返すため取引コストがかかることや、NISA(少額投資非課税制度)には不向きであることといった短所もあります。
 
このように見ていくと、どちらがよいか・悪いかという話ではないことが分かります。つまりどちらにも長短があり、むしろ両方の考え方をうまく取り入れ、投資に生かすことが重要かもしれません。
両方の長所を取り入れる場合、投資は長期的に行うことを基礎にし、局面によっては短期的にチャンスを捉えていく……という方法になるでしょう。
 
この考え方に基づけば、投資のための資金は長期資金と短期資金に分け、長期資金で積立を行ったり、一括で購入する場合は持ちつづけたりしながら、今回の暴落のようなチャンスが来たときに買い増す……などと方法を採るのも一つの手といえます。
 

まとめ

今回の暴落で投資による損失を、身をもって経験した人は、多くの学びを得たかもしれません。なぜならば、なぜ損失を被ったかを考えたり、調べたりする機会を持てたからです。逆に、「ほったらかしの長期投資でよい」と考えている人は、そこまで考えたり、調べたりはしなかったかもしれません。
 
しかし、しっかりと投資をしていきたいなら、学ばずにほったらかしにすることは、よほどリスク許容度が高くないかぎり、危険な振る舞いといえます。
 
投資について学ぶこともリスクマネジメントのうちです。暴落は学びを深めるよいきっかけと捉え、次につなげられるよう、実力を身に付けていきましょう。
 

出典

TradingView, Inc. TradingView
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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