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大学生になったらたくさんアルバイトして、充実した生活を送りたいです。親から「稼ぐ額に気を付けて」と言われましたが、稼ぎすぎると負担が増えるのでしょうか? 負担といっても、大した額じゃありませんよね?

ファイナンシャルフィールド / 2024年11月4日 6時10分

大学生になったらたくさんアルバイトして、充実した生活を送りたいです。親から「稼ぐ額に気を付けて」と言われましたが、稼ぎすぎると負担が増えるのでしょうか? 負担といっても、大した額じゃありませんよね?

大学生活を楽しむには、ある程度のお金が必要です。ただし、アルバイトであまり稼ぎすぎると、親が支払う税金にも影響が出ます。本記事では、その影響について解説します。

大学生のアルバイト事情

株式会社マイナビ(東京都千代田区)が実施した「大学生のアルバイト調査(2024年)」によれば、アルバイト就業経験のある大学生は全体の89.5%であり、実に9割近くの学生が何かしらのアルバイトを経験しています。また、調査段階で「現在アルバイト就業中」と回答した大学生は71.1%と、全体の約7割となっています。
 
また、アルバイト形態は85.9%が「定期的なアルバイト」で、「短期・単発のアルバイト」が25.6%、「長期休み限定のアルバイト」が7.4%であることから、多くの学生が年間を通じてアルバイトに従事していることがうかがえます。
 
また、アルバイトの職種は図表1の3つが全体の64.7%を占めています。
 
図表1
アルバイトをしている職種TOP3

1位 飲食・フード(接客・調理) 31.9%
2位 教育(塾講師・家庭教師) 17.4%
3位 販売(コンビニ・スーパー) 15.4%

出典:株式会社マイナビ「大学生のアルバイト調査(2024年)」をもとに筆者作成
 

アルバイトの平均収入

同調査において、アルバイト就業中の大学生の平均手取り月収は5万9900円で、手取り年収では66万9300円です。一方で、大学生の希望する手取り月収は平均8万400円で、実際の手取り額とは2万円程度の差があるようです。
 
なお、平均的な勤務時間は4.8時間、1週間当たりの勤務日数は3.0日となっています。
 

アルバイト収入が増えることで影響する親の税負担

各納税者の個人的事情を考慮し、最低生活費を保障することを目的に、「所得控除」の制度が設けられています。これは所得税の計算において、収入から一定額を控除し、課税対象となる所得を減らすことで税負担を軽減するための制度です。所得控除には、「社会保険料控除」「配偶者控除」「医療費控除」といった15種類の控除があります。
 

家族を扶養している場合の扶養控除

家族を養っている人の場合、そうでない人よりも経済的負担は大きくなります。そのため、その経済的負担を税金面で軽減するために、所得控除の一つとして「扶養控除」があります。
 
扶養控除によって収入から控除される金額は、図表2のとおりです。
 
図表2

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族(16歳以上) 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族
(70歳以上の父母、祖父母など)
同居以外 48万円
同居 58万円

出典:国税庁 No.1180 扶養控除をもとに筆者作成
 
親に扶養されている多くの大学生は「特定扶養親族」に該当するため、親の収入から63万円を差し引くことができます。ただし、子どもが大学生かどうかは控除額に関係なく、あくまで年齢が基準であることに注意が必要です。例えば、大学生でも23歳であれば「一般の控除対象扶養親族」に該当し、控除額は38万円となります。
 

アルバイト収入が年間103万円を超えると、税法上の扶養から外れる

親の扶養控除対象となる人は、親と生計を一にしていて、年間の合計所得金額が48万円以下の人です。
 
収入がアルバイト収入のみの場合、合計所得金額から差し引くことのできる給与所得控除が55万円あります。アルバイトの年間収入が103万円以下であれば、給与所得控除を差し引いた合計所得金額は48万円以下となるため、親の所得税の計算上、扶養控除が適用できます。

アルバイトの年間収入103万円 - 給与所得控除額55万円 = 合計所得金額48万円

つまり、たくさん稼いでアルバイトの年間収入が103万円を超えると、親の税法上の扶養控除の対象から外れてしまうのです。
 

扶養控除が適用できないときの親の負担

親が納める所得税は、所得額に応じて、5%から45%まで段階的に高くなっていきます。所得が多い人ほど所得税率が高くなる仕組みを、「累進課税制度」といいます。例えば、国税庁の「所得税の速算表」によると、所得金額が195万円以上330万円未満であれば税率は10%、330万円以上695万円未満であれば税率は20%となります。
 
所得税の計算上、多くの大学生の年齢帯である「19歳以上23歳未満(特定扶養親族)」の扶養控除が適用できない場合は、親の所得に応じて適用される所得税率に特定扶養親族の控除額63万円を掛けた分だけ、親の税負担が増えることになります。
 
図表3は、親の所得税率が10%と20%の場合で、扶養から外れたときにそれぞれどのくらい税負担が増えるかを計算したものです。
 
図表3

親の所得税率 扶養控除額 親の税負担増
10% 63万円 6万3000円
20% 63万円 12万6000円

筆者作成
 
さらに所得金額が695万円以上であれば、所得税率も20%を超えて、段階的に上昇します。特に大学生の場合は扶養控除の額も大きいため、扶養から外れた場合に増える税額も多くなるので注意が必要です。
 

扶養を外れると、住民税の負担も上がる

親が納める住民税にも、所得税と同じような扶養控除があります。そのため、扶養を外れると親の住民税の負担も増すことになります。ただし、住民税の扶養控除額は、図表4のように所得税とは違う額となっています。
 
図表4

扶養対象 住民税の扶養控除額 所得税の扶養控除額
19歳から23歳未満の場合 45万円 63万円

筆者作成
 
住民税の内訳には、所得割や均等割、自治体によっては森林環境税といった一部国税を含めたものもあります。自治体によって所得割の税率や均等割額などにも違いがありますが、住民税の大部分を占める所得割の税率は、収入に関係なくおおよそ一律10%となっています。
 
税法上の扶養から外れるとなると、親の住民税の負担は、住民税の扶養控除額45万円(19歳から23歳未満)に住民税10%の税率を掛けて、4万5000円ほど増すことになります。
 

アルバイト収入が年間130万円を超えると、社会保険の扶養からも外れる

学生の場合、アルバイト収入が年間130万円を超えると、親の社会保険の扶養からも外れてしまいます。そうなると、国民年金や国民健康保険の保険料の支払い義務が生じます。親の税金負担が増えるだけでなく、保険料負担が増える分、世帯の手取りも減る場合がありますので、注意しましょう。
 

まとめ

アルバイトの年間収入が103万円を超えると、親は扶養控除を受けられなくなり、税負担が増えてしまいます。一方で、大学生活を充実させるためには、どうしてもアルバイト代を稼ぎたいこともあるでしょう。
 
親の税負担を増やさないためにも、場合によってはお小遣いや仕送りを増やしてもらうといった調整をしてもらえないか、親とよく相談してみましょう。また、無理にアルバイトをしすぎて体調を崩すことや学業に影響が出ることのないように、バランスよく学生生活を送りましょう。
 

出典

株式会社マイナビ マイナビキャリアリサーチLab 大学生のアルバイト調査(2024年)
国税庁 No.1100 所得控除のあらまし
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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