扶養内パートですが、最低賃金が10年で「780円→1055円」になりました。130万円の壁が“最低賃金”にあわせて変わっていたら、「176万円の壁」になるって本当ですか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月9日 4時40分
2024年10月に全国の最低賃金が改定され、全国加重平均は1055円、全国で最も高い東京都は1163円となりました。筆者が学生だった2000年代初頭は時給800円前後で働くことが一般的で、特にここ10年間で大きく上がった印象です。 扶養内でパート勤務をしている人にとって、最低賃金の上昇はうれしいものですが、「年収の壁」に悩む人も多いといわれています。 最低賃金が上がった今でも、「130万円の壁」などの制約は変わらず、今以上に働きたいと思っても扶養から外れてしまうリスクがあるため、働く時間を制限している人も多いでしょう。 本記事では、過去10年間の最低賃金の推移を振り返り、最低賃金に合わせて「130万円の壁」がどのように見直されるべきか考えます。
過去10年の最低賃金の推移
ここ10年間の最低時給の推移を示したものが図表1です。
図表1
厚生労働省 平成14年度から令和6年度までの地域別最低賃金改定状況より筆者作成
2014年度から2024年度までの10年間で、最低時給は全国加重平均で780円から1055円に、東京都は888円から1163円に上昇しています。この10年間で約280円引き上がったのです。
特に2020年度からの4年間では150円ほど最低時給が上がっています。この期間は、最低時給アップに伴う賃金上昇を実感できた人は多いのではないでしょうか。
最低賃金の上昇に合わせるなら130万円の壁はいくらになる?
130万円の壁とは、社会保険上の扶養になれる年収の上限をいいます。年収130万円を超えると、家族の扶養から外れるため、自身で国民健康保険や国民年金の保険料を支払わなければなりません。
なお、従業員51人以上の企業で働いている場合は、月収8万8000円(年収約106万円)を超えると、社会保険に加入し保険料を負担する義務が発生することがあるため、「106万円の壁」という言葉が同様の意味で使われます。
したがって、パートとして働いている人の中には、年収が130万円以下もしくは106万円以下となるように調整している人もいるでしょう。
しかし、最低賃金が上がっても、この壁は変わりません。時給780円であった2014年度は、年収130万円の範囲で年間約1667時間働けたものが、2024年度の最低時給1055円では約1232時間しか働けないのです。
最低賃金が上がった現状に合わせるならば、130万円の壁は現在の最低賃金で1667時間働いたときの年収である、約176万円程度になることが妥当と考えられます。しかし、今も年収130万円の壁は変わらず、壁を超えないように労働時間を減らすことが求められるのです。
せめて物価上昇を考慮してほしいが……
2014年の130万円と2024年の130万円は価値が違います。理由は物価が上がっているからです。2020年を100としたときの消費者物価指数(総合指数)を見てみましょう。2014年平均は97.5なのに対し、2024年9月は108.9と10年間で約1.12倍になっています。
つまり2024年の130万円は、2014年の116万円と価値が等しく、130万円の壁を守り続けている人は、実質的な年収が14万円減っているのです。
逆に2014年の130万円は2024年の約146万円の価値と等しくなります。せめて130万円の壁を物価の上昇に応じて柔軟に変えてほしいものですが、130万円のままなのが現状です。
130万円の壁はどんどん厳しくなる! 超えて働くことも検討を
最低賃金の引き上げと物価の上昇が同時に進む中、年収の壁が10年前の基準のままであることは、多くの扶養内パート労働者にとって大きな問題です。最低賃金や物価の上昇に合わせて「130万円の壁」を引き上げなければ、実質的な収入の向上が望めず、働く意欲を阻害してしまいます。
とはいえ、「年収の壁」に関する制度は一個人では変えられません。政府が年収の壁を変えないのであれば、社会保険料の負担が気にならないほど年収が増える働き方にシフトするのも、1つの手段でしょう。
出典
厚生労働省 平成14年度から令和6年度までの地域別最低賃金改定状況
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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