子どものいない専業主婦が「遺族年金」で不利になるって本当ですか? 現在35歳ですが「働いたほうがお得」でしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月8日 23時20分
「遺族厚生年金」が、2025年の国会審議で改正されるとの報道がありました。30歳以上の子のない妻の受給が、無期限から5年で打ち切りに変更になるとみられ、SNSなどでも大きな話題になっています。 実際にはすぐに変更されるわけではなく、段階的に時間をかけて縮小される見込みですが、遺族年金を受給できるのか不安を感じている方もいるのではないでしょうか。 本記事では、決定が見込まれる「遺族年金の見直し内容」と、一番影響が大きいと考えられる専業主婦について今後の対策を解説します。
遺族年金の見直し報道と内容
厚生労働省は、2024年7月30日「遺族年金制度等の見直しについて」を発表しました。
大きく改正される点は、次の3つです。
1. 「子のいない30歳以上の妻の遺族厚生年金」は、現行では終身で無期限に受給できますが、改正後は5年間だけに限った給付に変更されます(60歳以上は変更なし)。
2.「子のいない55歳以上の夫」だけしか受給できなかった夫側の遺族厚生年金が、妻と同じく20代から50代を対象に拡大されます(妻と同じく5年間の有期給付に変更)。
3. 現行では受給対象者の年収は850万円未満の制限がありましたが、収入制限が撤廃されます。
※「子」とは:18歳の誕生日を迎える年度の3月31日までの子、もしくは障害年金の障害等級1級または2級に該当する20歳未満の子を指します。
図表1
子のない配偶者の遺族厚生年金見直し案
現行制度の給付 | |||
---|---|---|---|
妻 | 30歳未満 | 30歳以上 | |
有期給付(5年間) | 無期給付(終身) | ||
夫 | 55歳未満 | 55歳~60歳未満 | 60歳以上 |
給付なし | 受給開始は60歳~(終身) | 無期給付(終身) |
↓
改正後の給付案(段階的に移行予定) | |
---|---|
夫・妻 | 20代~50代に配偶者が死亡した人(男女同じ) |
5年間の有期給付(男女同じ) | |
※施行日前に受給権が発生していれば現行制度を適用 |
※厚生労働省 年金局「遺族年金制度の見直しについて」を参考に筆者作成
専業主婦は働いたほうが「お得」になる? 気をつけるべきポイント
すぐに全面施行されるわけではなく、段階的に改正される見込みですが、現在20代から40代の妻は将来的に影響を受ける可能性があります。
さらに現在、夫を亡くした40歳以上の妻が、年間約60万円を64歳まで受給できる「中高齢寡婦加算」も廃止の方向が示されています。
万が一、夫が亡くなり、配偶者の収入が無くなった場合、5年間のみの遺族年金では生活の不安は大きいでしょう。
今回の遺族厚生年金の見直しを受けて、気をつけたいポイントは、次の通りです。
・遺族年金を考慮し設計した(設計する)生命保険は、増額も含め見直しする
・中高年になってからの就職はかなり厳しくなるため、専業主婦は早めに就労を考える、または資格取得など就職に有利になりそうな準備をする
・扶養内で働くことにとらわれない。働けるようになったら、妻もできるだけ働き収入を増やす(さらに妻の年金額も増やす)
また、これまで扶養されている20歳以上60歳未満の方(第3号被保険者)は、厚生年金を納めている会社員や公務員(第2号被保険者)の配偶者が保険料を負担していたため、年金保険料を納める必要はありませんでした。しかし、こちらも縮小・見直しが議論されています。
負担増の可能性を考えると、将来的には妻も収入を増やして働くほうが、世帯的にも「お得」といえるでしょう。
まとめ
専業主婦の方にとっては、マイナス方向ともいえる改正が続きそうですが、夫側の受給も増えるなどプラスの見直しもあります。
この機会に、今後の夫婦の働き方や家事や育児について、話し合うきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
出典
日本年金機構 遺族年金
厚生労働省 遺族年金制度等の見直しについて
厚生労働省 第3号被保険者制度について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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