中小企業勤務、30代で「年収300万円」ですが、昨年から新卒やパートの時給はどんどん上がっているのに、中堅社員の私は全く「昇給」していません。どうしてでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月10日 2時10分
2024年度の最低賃金の全国加重平均額は1055円となり、前年度より51円も上昇しました。2020年度の全国平均は902円だったので、この4年間で153円も上昇しています。 最低賃金の引き上げにより、新卒やパート・アルバイトの昇給率よりも中堅社員やベテランのパートの昇給率が低いという現象が起こっている中小企業もあります。 本記事では最低賃金の上昇で月給がどのくらい上昇しているかの実態や、中小企業において新卒社員や若手パートが昇給しても、正社員やベテランのパートの給料が上がりにくい理由を解説します。
最低賃金の上昇で月給はどの程度上昇するのか?
最低賃金は時給ベースで公表されます。月給の人は時給ベースだと、どの程度上昇しているのでしょうか?2024年度の最低賃金(全国平均1055円)でフルタイム労働(8時間×21日)した場合、月給は17万7240円となります。
2024年度は最低賃金が全国平均で51円上昇しましたが、最低賃金でフルタイム労働している労働者は8568円の昇給となります。これは年収換算で約10万円の増加となります。全国で最低賃金が最も上昇した徳島県(84円アップ)の場合、月給換算で約1万4000円の昇給となり、年収換算では約17万円の増加です。
また、過去4年で全国平均額が153円上昇していますから、月給換算では過去4年で約2万6000円の昇給(年収換算では約31万円の増加)となります。月給換算や年収換算で考えると、最低賃金の上昇ペースの速さが分かります。
なぜ新人が昇給して、中堅・ベテラン社員が昇給できないのか?
最低賃金で働く労働者は、新卒や経験年数の低い若手社員、有期契約社員、アルバイトやパートとして働いている人が多いです。最低賃金を下回る給料で労働させることは法律違反となるので、これらの人たちの給料は最低賃金の上昇に合わせて昇給させる必要があります。
企業側は近年、最低賃金が大幅に上昇するたびに、新卒社員や契約社員、パート・アルバイトの給料を上げ続けなければいけない状態が続いています。
仮に従業員数50人の会社が全社員に対して月1万円の昇給を実施した場合、年間600万円のコストアップに加え、賞与、社会保険料、雇用保険料、労災保険料などの負担もアップすることになります。
そのため、企業側としては、最低賃金クラスで働いている新卒社員やアルバイト・パートの人については法令違反を避けるために昇給させますが、最低賃金よりも高い給料で働いている社員(中堅・ベテラン社員)の給料は上げにくいという構図になっており、筆者もそのような地方の中小企業の悩みをよく耳にします。
会社内での不満がたまる危険性も
このように最低賃金で働いている新卒社員やアルバイト・パートが大幅に昇給する一方で、中堅やベテランの社員や仕事のできるベテランパートは昇給しにくいという状況は、従業員の不満につながりやすくなります。
しかし、中堅・ベテラン社員の不満を解消するために全社員を昇給させれば、人件費が高騰し、経営が難しくなります。また、配偶者の扶養の範囲内で働きたいと考えている人は、最低賃金の上昇によって働く時間を減らすしかありません。
人手不足が深刻な中小企業では、そのしわ寄せも中堅・ベテラン社員が受けるという状況も不満に追い打ちをかけるかもしれません。
まとめ
最低賃金の大幅な上昇により、地方の中小企業は最低賃金で働く若手やアルバイト・パートの昇給率が中堅社員やベテラン社員などの昇給率よりも高くなるというケースが発生しています。
厚生労働省では最低賃金引き上げに向けた中小企業・小規模事業者支援事業の業務改善助成金をPRしていますが、来年度以降も最低賃金の上昇が予想されており、経営状況が厳しい中小企業では、最低賃金で働く若手社員やアルバイト・パートだけが昇給し、中堅社員は昇給しにくいという状況が続くかもしれません。
出典
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
厚生労働省 平成14年度から令和6年度までの地域別最低賃金改定状況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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