若い人だけでなく、中年世代の間でも転職が当たり前の時代に。2025年4月から失業給付の受給条件が緩和される! どのように変わるの?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月10日 22時20分
会社員のAさん(38歳)は、大学を卒業してからずっと同じ不動産会社に勤務しています。今の会社に大きな不満はないけれど、よい条件の会社に移っている学生時代の友人や同期を見ると、40歳を前にこのまま同じ会社にいてよいのかと少し焦る気持ちもあり、転職活動を始めようかと思い始めています。 転職を視野に置くなかで、失業保険のルールが2025年4月から改定になると聞いたので、どのように改定になるのかを知りたいとのことです。そもそも失業保険がどういうものなのか、改正後はどのようになるのかを解説します。
失業給付とは
Aさんが失業保険と呼んでいるのは、社会保険の一つである雇用保険の失業給付のことで、「基本手当」が正式名称です。
基本手当は、雇用保険の被保険者(会社員)が、仕事が合わないなどの理由での退職(自己都合)や、勤務先の倒産・契約期間の満了(会社都合)などで、仕事を失ったときに失業中の生活を心配せずに、次の仕事を落ち着いて探せるよう支給されるものです。
就職しようという積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があることが支給の条件なので、病気やけがのため、すぐに就職できないなどの状態のときは、基本手当は支給されません。
受給資格があるのは、65歳未満の人です。65歳以上の人は、基本手当の代わりに「高年齢求職者給付金」を受給できますが、基本手当と比べると金額は少なくなります。また、基本手当と異なり、まとめて1回分を支給されます。
自己都合で会社を退職した人は、原則として、離職した日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上あることが受給の条件になりますが、会社都合で離職をした人の場合は、1年間に6ヶ月以上と受給要件が緩和されています。
基本手当の支給を受けることができる日数は、離職の日の年齢、雇用保険の被保険者期間、離職理由によって決定され、90~360日間で決定されます。会社都合は、自己都合と比べて手厚い給付日数となる場合があります。
雇用保険で受給できる1日当たり金額(基本手当日額)は、原則として、離職した日の直前の6ヶ月に毎月支払われた賃金(賞与は除きます)の合計を180で割って算出した金額のおよそ50~80%(60~64歳は45~80%)となっており、賃金が低いほど高い率となっています。
1日当たりの金額は下限と上限が決められており、2024年8月現在の下限と上限は図表1のとおりです(※1)。
図表1
(厚生労働省 ハローワーク インターネットサービス「基本手当について」より筆者作成)
基本手当は受給するには、原則として4週間に一度の認定日に本人が管轄のハローワークに出向いて、就労の有無や求職活動の実績を記入した「失業認定申告書」を「雇用保険受給資格証」と一緒に提出する必要があります。
雇用保険法改正
現行では、会社都合退職者の場合は、ハローワークの手続き後、7日間の「待機期間」を経てすぐに支給期間が始まるのに対して、自己都合退職者は、待機期間に加えて2ヶ月間の「給付制限期間」を経ないと手当の支給期間が始まりません。
2025年4月1日以降に離職した場合は、給付制限期間が1ヶ月に短縮されます。ただし、5年間で、3回(現行は2回)以上自己都合で離職をした場合には、給付制限期間が3ヶ月となるので注意が必要です。
また、離職期間中や離職日前1年間に雇用保険の教育訓練給付の教育訓練を受けた場合は、給付制限が解除され、待機期間が過ぎるとすぐに受給できます(※2)。今回の雇用保険改正では、基本手当の給付制限期間以外にもいくつか変更がありました。例えば図表2のような改正があります(※3)。
図表2
【雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年度法律第26号)等】
(厚生労働省「『雇用保険法との一部を改正する法律』の成立について」より筆者作成)
まとめ
雇用保険法の改正は、働き方が多様化していることを踏まえています。給付制限が緩和されることで、お金の心配をせずに安心して就職活動に専念でき、教育訓練給付金の充実で自分が本当にやりたい仕事を見つける手助けになるでしょう。
出典
(※1)厚生労働省 ハローワーク インターネットサービス 基本手当について
(※2)厚生労働省 令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について
(※3)厚生労働省 「雇用保険法との一部を改正する法律」の成立について
執筆者:篠原まなみ
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士
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