60歳で定年退職して、繰上げ受給を検討しています。長く生きるつもりもないですし「損」することはないですよね?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月10日 5時30分
公的年金には、繰上げ受給や繰下げ受給などの制度があります。繰上げ受給は早いうちから年金を受け取れるため、利用したいと考えている方もいるでしょう。しかし、年金の繰上げ受給にはデメリットもあります。 本記事では、繰上げ受給による減額率やデメリットを紹介します。60歳で定年退職をして繰上げ受給を検討している方も、この記事を参考に一度見直しを行いましょう。
年金の繰上げ受給とは
年金は原則65歳から受け取りが可能です。ただし、希望すれば60歳から65歳の間でも受け取りを開始できます。早めに年金の受け取りをスタートさせる繰上げ受給を利用すると、請求した時点に応じて年金が減額される点に注意が必要です。また減額率は一生変わらない点も把握しておきましょう。なお、原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ受給を請求する必要があります。
繰上げ受給による減額率
繰上げ受給による減額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の額に基づいて計算されます。日本年金機構によれば、昭和37年4月2日以降生まれの方の場合、最大で24%の減額率が適用され、減額率は「0.4%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数」によって算出されます。
昭和37年4月2日以降生まれの方の繰上げ減額率を請求時の年齢ごとに表1にまとめました。
表1
請求時年齢 | 割合 |
---|---|
60歳 | 24.0% |
61歳 | 19.2% |
62歳 | 14.4% |
63歳 | 9.6% |
64歳 | 4.8% |
出典:日本年金機構「年金の繰上げ受給」を基に筆者作成
繰上げ受給を選択すると、年間4.8%の減額率が適用されるため、60歳から20年以上、つまり80歳以降も生きると仮定した場合、繰上げ受給を「しない」ほうがお得といえるでしょう。厚生労働省の「令和5年簡易生命表」によれば、男性の平均寿命は81.09年、女性の平均寿命は87.14年のため、平均寿命通り生きるとすると、受給総額で損をしてしまう可能性があると考えられます。
繰上げ受給の注意点
公的年金の繰上げ受給制度を利用すると、申請時に決定した減額率が生涯続きます。そのため、受給期間が長くなればなるほど、繰上げ受給しなかった場合と比べて受給総額が減少してしまいます。また、繰上げ請求した日以降は障害基礎(厚生)年金や国民年金の寡婦年金など他の年金を受け取れなくなり、65歳までは遺族厚生年金などとの同時受給もできません。さらに繰上げ受給を請求すると、国民年金の任意加入や保険料の追納が行えなくなるため、将来の年金額を増幅させる機会を逃してしまうでしょう。
繰上げ受給の手続きを行うと、請求の取り下げはできません。公的年金の繰上げ受給は早いうちから年金をもらえるメリットはありますが、受給総額が減ったりさまざまな制限を受けたりとデメリットもあるため慎重に検討しましょう。
繰上げ受給以外で老後生活を安定させる方法
定年退職後も自分のペースで仕事を続けることは、老後の生活費を補うために有効な選択です。年金の受給額や貯蓄額、毎月の生活費によっては、フルタイムで働くだけでなく、週に数日や午前中だけ働くといった柔軟な働き方で十分なケースもあるでしょう。自分に合った働き方を選び、仕事にやりがいを感じられれば、老後の生活がより豊かになるでしょう。
さらに、定年後の生活に備えて、現役のうちに家計を見直しておくことも大切です。無理なく支出を減らすためには、固定費の見直しが効果的です。家計には変動費と固定費がありますが、特に固定費は一度見直すだけで、長期的に節約効果を得られるでしょう。
80歳以降まで生きるなら繰上げ受給は見直したほうがよい
繰上げ受給は早いうちから年金を受け取れるメリットがありますが、その分減額が行われ、長期間受給するほど受給総額が減少します。健康に問題がなく80歳を超えても元気に過ごせるようであれば、繰上げ受給を見直したほうがよいかもしれません。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命(2ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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