金銭管理の苦手な夫の給料を「全額」私名義の口座で管理したいと考えています。贈与税はかかるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月11日 2時30分
夫婦の金銭管理方法は家庭によってさまざまです。夫が金銭管理を苦手としていたり浪費癖があったりする場合、妻が夫の給料もすべて管理するケースもあるでしょう。 しかし、夫の給料をすべて管理するために妻の口座へ移動すると、税金が課される可能性もあります。課税対象にならないかよく確認しておくことが大切です。今回は、夫婦間で贈与税が課される条件や、金銭管理のコツなどについてご紹介します。
夫婦間であっても贈与税は課される可能性がある
夫婦間における金銭のやり取りは、高額だと贈与税の課税対象になる可能性があります。民法第549条では「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」とされているためです。
つまり、夫が自分のお金を渡す意思を示し、妻の口座へ入金した時点で成立します。もし税務署から贈与と判断された際、1年間で基礎控除の110万円を超える金額が妻の口座へ入金されていると課税対象です。
例えば、月収30万円の夫が給料をすべて妻の口座に毎月入金したとしましょう。なお、賞与は考慮しないものとします。毎月30万円を入金すると、1年間で360万円です。贈与と判断されると、基礎控除額である110万円を引いた250万円に対して税金が課されます。
課税金額が250万円のときの税率は15%、控除額が10万円のため、課される贈与税は27万5000円です。
贈与税が課されないケースもある
贈与税は、非課税になる項目も設けられています。国税庁によると、「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」は非課税です。そのため、給料の全額ではなく、毎月必要な生活費を妻の口座に入金すれば、贈与税はかからないでしょう。ただし、入金したお金を生活費ではなく預貯金や株式購入などに使用すると、贈与と判断され指摘を受けるケースがあるため注意が必要です。
また、妻へ住むための不動産購入費を渡した場合は、通常の110万円の基礎控除に加えて2000万円までの配偶者控除が適用されます。適用される条件を国税庁の内容を基にご紹介します。
・夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。
・配偶者から贈与された財産が、居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること。
・贈与を受けた都市の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。
もし居住用の不動産のためのお金をほかのことに使用すると、特例が認められず控除額が110万円のみになる可能性があります。特例の申請には財産を不動産取得に使用した証明も必要なので、特例を利用する場合はほかの財産と混ざらないように注意しましょう。
金銭管理のコツ
夫の給料を受け取ることで贈与税が課されないためには、夫婦で協力して金銭管理ができるほうがいいでしょう。
夫が金銭管理を苦手としている場合は、月初めや給料日などのタイミングで、生活費の項目を書き出し、費用がどれにいくらかかっているか明確にする方法があります。視覚的に分かれば給料からいくら生活費に回せばいいのか分かりやすくなるためです。
妻が全額管理するときは、夫婦で共通口座を使用しましょう。共通口座は、夫婦で管理する口座です。夫のお小遣い以外を共通口座に入れておいて、水道光熱費や食費といった生活費を共通口座から出すようにすれば、金銭管理が苦手な方でも出費を必要最低限におさえられるでしょう。
給料を全額移動すると贈与税の課税対象になるケースがある
夫の給料を全額妻の口座に移動すると、贈与税の課税対象になることがあります。1年間で受け取った金額が110万円以上だと課されるため、毎月給料を全額受け取っていると課税対象になる可能性があるでしょう。
課税対象にならないためには、生活で必要な費用のみを受け取ったり、おしどり贈与の特例を利用したりする方法があります。ただし、目的外で使うと非課税や特例が適用されなくなるため、活用する際は注意が必要です。
可能であれば、夫にも金銭管理を手伝ってもらったほうが、贈与税が課される可能性は低くなるでしょう。
出典
デジタル庁 e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百四十九条
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No,4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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