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亡くなった夫に多額の借金があることが発覚しました。マイナスな財産の対策として「限定承認」という方法があると聞いたのですが、相続放棄とはどう違うのですか?

ファイナンシャルフィールド / 2024年11月14日 2時0分

亡くなった夫に多額の借金があることが発覚しました。マイナスな財産の対策として「限定承認」という方法があると聞いたのですが、相続放棄とはどう違うのですか?

夫の借金が現金や不動産などの資産よりも明らかに多い場合で、借金を相続したくないときは「相続放棄」が得策です。一方、資産の中に特にほしいものがある場合や、借金が多そうなときは「限定承認」を選択するのもひとつの方法です。

相続放棄

人が亡くなった際に発生するのが“相続”です。相続開始のときより、相続人は亡くなった人(被相続人)の財産に属している一切の権利義務を承継します。遺産というと、預貯金や不動産などのプラスの財産を思い描くでしょうが、実は借金のようなマイナスの財産も含まれるのです。
 
もし、プラスの財産よりもマイナスの財産(借金)のほうが多い場合、相続人はこれらを相続することによって多くの借金を負ってしまう可能性があります。そういったことにならないよう、相続人は「相続をするか否か」を自由に選択することが認められているのです。
 
相続放棄をした場合(被相続人に属している一切の権利義務を継承しない場合)、相続が開始された時点から、相続人でなかったとみなされます。
 
通常、被相続人の子が相続開始以前に死亡していたとき、その子(被相続人の孫)が代襲して相続人になりますが、相続放棄をした場合、代襲相続は生じません。
 
また、相続放棄をしても生命保険金(死亡保険金)を受け取ることはできますが、相続税を計算するときに認められている生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の適用は受けられません。
 
その他、相続放棄をした者には、相続税を計算するときに債務控除の適用はありません(ただし、相続放棄した者が葬儀費用を負担した場合にはその全額を控除できます)。
 
相続放棄をすると次の順位者に借金を含め相続する権利が移行するので、相続放棄した旨を次順位者に伝えることが大きなトラブルを避けるために重要です。
 
相続放棄をするには、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません(915条)。この期間に、相続人が相続放棄をしなかった場合や、相続人が相続財産を処分した場合など、単純承認したものとみなされますので注意しましょう。
 

限定承認

限定承認は、被相続人にどのくらいの借金があるか不明な場合や、債務超過が明らかだけれども自宅などの特定財産を承継したいときなどに選択するメリットがあります。
 
すなわち、限定承認は相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務(借金)および遺贈を弁済することを留保して相続の承認をする方法です(922条)。
 
たとえば、1億円の相続財産を相続した後に、借金が1億3000万円あるとわかったとしましょう。このとき、限定承認していれば、1億円の範囲で借金を返済すれば良く、残りの3000万円は返済する必要がなくなります。
 
限定承認をするには、相続財産の目録を作り、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません(924条)。相続人が2人以上いる場合は相続人全員が限定承認しなければなりません(923条)。
 
限定承認をした場合、金銭以外の財産は競売によってすべて換価する必要があります(932条)。
 
しかし、相続人の中に自宅など限定承認者が保有し続けたい財産がある場合、競売による換価ではなく、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価額を限定承認者が、自己の固有の財産から弁済すれば競売を止めることができます(932条)。
 
限定承認を選択した場合、相続開始の日に被相続人から相続人に相続財産が時価で譲渡されたものとみなされ、譲渡所得税が課税され被相続人の債務となりますので注意が必要です。譲渡所得に関しては相続の開始のあった日から4ヶ月以内に被相続人の準確定申告が必要になりますので忘れずに申告しましょう。
 
限定承認をしても相続人であることには変わりありませんので、生命保険金の非課税枠を利用できます。債務控除も利用できますが、本来の相続財産を超える部分については受けることができません。
 

まとめ

限定承認は、相続財産の中に特にほしいものがある場合や、わかっていない借金が存在する可能性がある場合に有効です。
 
相続放棄と限定承認とでは、申述の方法(単独で行えるか全員の承認が必要か)や相続人の地位、課税関係などの取り扱いが大きく異なります。限定承認の選択を考えている方は、相続法と相続税・所得税の両者に詳しい弁護士や税理士に相談することをお勧めします。
 

出典

国税庁 e-Gov 相続放棄に関する民法の主な条文 民法915条~940条
国税庁 e-Gov 限定承認に関する民法の主な条文 民法第922条~937条
国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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