親の遺品から、私名義の「通帳」が見つかりました。毎年50万円で「500万円」貯めてくれていたようですが、受け取って大丈夫ですか? 初めて預金の存在を知ったのですが、贈与が完了しているなら“申告不要”でしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月15日 2時30分
親が残した遺品の中から自分名義の通帳が見つかったとき、うれしく思うと同時に「これはそのままもらっていいのか?」と疑問に思うかもしれません。 しかし、贈与が済んでいるものと考えて税務申告をしないで受け取ると、後に税務署から指摘を受けるかもしれません。理由は「名義預金」と見なされる可能性があるからです。 本記事では、名義預金についてリスクと回避策を紹介します。
贈与が成立していれば年間50万円の贈与には贈与税はかからない
前提として、もし年間50万円ずつ、10年で500万円の贈与が正式な贈与として成立していたのであれば、贈与税は課税されません。贈与税には年間110万円の基礎控除があり、この範囲であれば贈与税はかからないためです(ただし、ほかの贈与と合わせて年間110万円を超えた場合を除く)。
例外:相続開始3年以内の贈与分には相続税がかかる
贈与が成立していたケースでも注意が必要な場合があります。相続開始3年以内(2024年1月以降分は7年以内)の生前贈与は相続とみなされ、相続税が課されるというルールがあります。
最終の贈与から死亡まで3年以上たっているならば、相続税はかかりません。しかし、死亡の前年まで毎年50万円の贈与が行われていたならば、3年分の150万円には相続税がかかります。
贈与が成立していても相続税が課されるかどうか、年数に注意して適切な対応が求められます。
名義預金とは? 贈与は成立していない?
名義預金とは、他人の名義を使って実質的に自分が管理する預金のことです。例えば、本ケースのように、親が子どもの名義で通帳を作り、その口座に親が自由にお金を出し入れしていた場合が該当し、そのお金は親の財産とみなされます。
贈与とは財産を無償で相手に与え、受け取った側がその財産を自由に使えるようになった状態のことをいうため、親が亡くなってから預金の存在を知った今回のケースでは、名義預金に該当し、贈与は成立していないと考えられます。そのため、亡くなった後に、名義預金のお金を受け取ることは相続にあたり、500万円全体に相続税の支払い義務が発生します。
もし、適切な税務申告をせずに税務署の指摘を受けた場合は、本来支払うべきだった相続税に加えて、延滞税、過少申告加算税といったペナルティを負わなければなりません。
通帳を見つけたタイミングで税理士に相談して、修正申告と納税を行うなど、適切な対応を行いましょう。
名義預金とみなされないようにするためには
名義預金とみなされないためには、該当の預金について、贈与の要件を満たす必要があります。贈与は以下の3要件を満たして初めて成り立ちます。
(1)贈与者が財産をあげる意思を示す
(2)受贈者が財産をもらう意思を示す
(3)受け取った財産を受贈者が自由に使える状態にする
本ケースの預金については、(1)は満たしていても、(2)と(3)は満たしていません。自分(受贈者)は財産の存在を知らず、もらう意思を示していませんし、親(贈与者)が通帳を持っていたため自分が自由に使える状態にはなかったからです。
名義預金とみなされないためには、受贈者が自由にお金の出し入れができる口座に、受贈者が分かるように入金する必要があります。また客観的に(2)を示せるように、贈与契約書を残しておくと良いでしょう。
名義預金は贈与にはならない。適切な財産管理を
親が残してくれた遺産の中に自分名義の通帳があった場合、それが名義預金に該当すれば、贈与が成立しているとは限りません。名義預金は、通帳を受け取ったタイミングで贈与もしくは相続とみなされるリスクがあることを理解しておくことが重要です。
本ケースでは、贈与は成立しておらず相続とみなされるため、相続税がかかります。
名義預金とみなされないようにするには、受贈者自身が口座を管理した上で、贈与契約書を残すなど、明確に贈与であると証明できる状況を作り、予想外の贈与税・相続税がかかることを避けましょう。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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