【130万円の壁】パート先の時給が50円上がるので今までどおり働いていたら「扶養のライン」を超えそうです。超えた場合、どのくらい負担が増えるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月19日 2時10分
パートタイマーとして働いていて、「扶養のライン」を超えないよう気を使っている方は多いのではないでしょうか。扶養のラインを超えた場合、ご自身で負担しなければならない費用が発生します。 本記事では、扶養のラインのうち、「社会保険」に関するラインを超えた場合、どのくらい負担が増えるのかについて解説します。具体的な金額も試算していますので、ぜひ最後までお読みください。
「扶養のライン」はどこか?
ここでいう「扶養のライン」とは、いわゆる「年収の壁」のことを指していると考えられます。年収の壁には「100万円の壁」「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」などがあります。
ここに挙げた年収の壁については、以下のとおりです。
●100万円の壁:住民税の課税基準
●103万円の壁:所得税の課税基準、配偶者控除・扶養控除の適用基準
●130万円(106万円)の壁:社会保険への加入基準
このうち、今回扶養のラインとして考えたいのは、130万円(106万円)の壁です。年収が130万円(106万円)未満であれば、社会保険の被扶養者(健康保険の被扶養者・国民年金の第3号被保険者)となり、社会保険料を納める必要はありません。年収が130万円(106万円)以上になれば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入し、社会保険料を納めなければなりません。
また、社会保険への加入は、原則として、年収130万円以上の方が対象です。しかし、近年の「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大」により、年収106万円以上(所定内賃金が月額8万8000円以上)の方も社会保険の加入対象となる可能性があります。
なお、103万円の壁も扶養のラインとして考えられますが、本記事では解説を省略させていただきます。
「扶養のライン」を超えたらどのくらい負担が増えるのか?
先述のとおり、年収が130万円(106万円)以上になれば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入し、社会保険料を納めなければなりません。問題は、「どのくらい負担が増えるのか」です。本章では、負担が最小となる年収130万円・106万円について「どのくらい負担が増えるのか」を試算していきます。
健康保険料はどのくらい負担するのか?
本記事では、全国健康保険協会の健康保険に加入するものと仮定し、保険料を試算します。保険料は「標準報酬月額」に「保険料率」を乗じて算出しますが、この保険料率は都道府県によって異なります。本記事では、令和6年10月時点の東京都の保険料率9.98%(介護保険第2号被保険者に該当しない場合)を用いて保険料を算出します。なお、健康保険料は労使折半(会社と従業員で半分ずつ負担)のため、自己負担分の保険料率は4.99%となります。
標準報酬月額とは、報酬(給与)の区分のことであり、毎年4~6月の3ヶ月間に支払われた給与の平均額(報酬月額)から決定します。ここでは年収130万円のときの標準報酬月額を11万円(報酬月額10万8333円)、106万円のときの標準報酬月額を8万8000円(報酬月額8万8333円)と仮定します。
以上のことから健康保険料を計算すると、以下のようになります。
●年収130万円のとき:月額5489円(=11万円×4.99%)、年額6万5868円
●年収106万円のとき:月額4391円(=8万8000円×4.99%)、年額5万2692円
厚生年金保険料はどのくらい負担するのか?
厚生年金保険料は健康保険料と同様、「標準報酬月額」に「保険料率」を乗じて算出します。令和6年10月時点の厚生年金保険料の保険料率は18.3%であり、全国一律です。なお、厚生年金保険料も労使折半のため、自己負担分の保険料率は9.15%となります。
標準報酬月額は健康保険料の算出に用いた金額と共通なので、ここでも年収130万円のときの標準報酬月額を11万円、106万円のときの標準報酬月額を8万8000円と仮定します。
以上のことから厚生年金保険料を計算すると、以下のようになります。
●年収130万円のとき:月額1万65円(=11万円×9.15%)、年額12万780円
●年収106万円のとき:月額8052円(=8万8000円×9.15%)、年額9万6624円
まとめ
本記事では、「扶養のライン」を「社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入のライン」と想定し、年収130万円(106万円)の壁を超えた場合、どのくらい負担が増えるのかについて解説・試算しました。
年収130万円のときの試算結果は、以下のとおりです。
●健康保険料の負担額: 月額5489円(年額6万5868円)
●厚生年金保険料の負担額:月額1万65円(年額12万780円)
●負担額合計:月額1万5554円(年額18万6648円)
年収106万円のときの試算結果は、以下のとおりです。
●健康保険料の負担額:月額4391円(年額5万2692円)
●厚生年金保険料の負担額:月額8052円(年額9万6624円)
●負担額合計:月額1万2443円(年額14万9316円)
試算結果を見ると、「思った以上に負担が増える」と思われる方もいるでしょう。ただ、令和6年10月にも「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大」が行われたように、今後、扶養内でいることは難しくなっていくかもしれません。この機会に、今後のご自身の働き方や社会保険との付き合い方を考えてみるのもよいのではないでしょうか。
出典
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
日本年金機構 パート・アルバイトの皆さまへ、配偶者の扶養の範囲内でお勤めの皆さまへ
国税庁 家族と税
全国健康保険協会 協会けんぽ 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
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