高齢の親が地方に住んでいるのですが、亡くなった後は実家が空き家になる可能性があります。相続登記が義務化されると、空き家はどうなりますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月27日 22時20分
最近では空き家問題が深刻化しており、それと同時に、親が亡くなった後に空き家になった実家をどうするか、悩んでいる方が増えています。人口減少が進んでいる今日では、長期間放置した実家を売却することも難しくなっています。
相続登記の義務化 空き家は放置できない
都会に住んでいる地方出身者が、地方にある親が亡くなった後の実家をどうするか、対応に困っている方が増えています。
これまでは、「子どもが複数おり、誰が相続するかが決まらない」「親が住んでいる段階から結論が出ず処分方法が決まらない」「昔の懐かしい思い出があり簡単に処分には抵抗がある」といった理由で、地方にある実家を、そのまま残している方も多かったと思われます。
地方に限らず、日本国内で空き家の急増が続いています。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」によると、2023年時点で全国の空き家や約900万戸にのぼり、今後もさらに増える勢いです。
10年前の2013年には約820万戸でしたから、この10年で80万戸も増えています。人口減少社会に転じたことも理由になりますが、高層マンションの増加など、都心への人口の回帰現象が進んでいることも要因となっています。
これまでは、相続をしても登記もせずにしばらく放置しておくことも可能でしたが、相続登記が義務化されることで、放置が難しくなりました。空き家の管理を怠ると固定資産税が重くなることもあり、利用目的が明確でない不動産を持ち続けることが得策ではなくなってきました。
最近では少子高齢化にいっそうの拍車がかかり、地方にある不動産がますます売却できなくなりつつあります。これまでのように、価格さえ安くすれば売れる、という時代ではなくなってきました。最近では地方の不動産だけでなく、大都市近郊のニュータウンなどでも不動産が売却しづらい傾向が見られます。
「実家じまい」の検討 ~空き家になる前に対策を~
これまでのように、土地や建物が簡単に売却できる時代ではなくなりつつあります。特に都会と比べ過疎地域の不動産は、厳しく選別されます。「なんとか売れるだろう」と考えることは禁物です。
長い間、慣れ親しんだ地域だけに愛着もあり、売却するのは忍びない、と思っていても、決断は早いに越したことはありません。親が地方に住んでいる方は、親が元気なうちに、いま住んでいる自宅をどうするかを相談することをおすすめします。
どうしても長く住み続けている親世代は、その地域に最後まで住み続けたいと考えるでしょう。
もしそうであれば、元気なうちは住み続けることを確認したうえで、子どもたちの誰かが相続発生後に改築し居住するか、セカンドハウスにして有効活用することを考えているか、近所の住民や市町村など自治体が実家の土地を再利用する希望があるか、などを確認しましょう。
子ども同士の意見が対立する事態は好ましくありませんので、一致点を見つける努力は不可欠です。「実家じまい」をどう進めるかの道筋をつければ、親世代としても安心できると思います。
さらに親自身が病弱になった際は、都会への移住や近辺の賃貸住宅への転居、さらには介護施設への入居のうち、どれを選ぶかの確認ができれば、話はスムーズに進むでしょう。
親の希望は尊重するとしても、空き家になった住宅の管理がいかに大変かを説明し、説得することが求められます。高齢の親の認知症が進行すると、親名義の実家の売却などで契約業務ができなくなります。その前に対応策を決めておく必要もあります。
家屋解体に自治体の補助も活用
相続登記の義務化、荒廃した家屋への固定資産税の減額措置の停止など、空き家の放置には多大のコストがかかります。国などの対応がこれまで遅れていましたが、空き家を保有し続けることのメリットはほとんどありません。
自治体によっては、新たに「空き家税」といった税制を設け、放置には厳しい姿勢をとっています。ここ数年で、空き家に対する行政の対応が極めて厳しくなったことは間違いありません。
実家の売却を考える際に、敷地内に古い家屋があると敬遠されるため、解体して、さら地にすることで売却が可能になります。解体費用は、少なくとも100万円以上かかります。
解体費用の工面ができずにいる方を対象に、自治体によっては解体費用の一部を補助してくれますので、広く情報を集めこのような制度を積極的に活用しましょう。それぞれの自治体としても、空き家の増加には苦慮しており、さら地にすることで再利用の可能性が増え、メリットが大きいはずです。
買い手が見つかり売却できれば問題はないのですが、そう簡単にいかないことも十分に考えられます。将来的にこうした土地へのニーズが高まることは、予測困難です。
その場合は、公園・公共施設への寄贈、さらに経費を支払ったうえでの国庫への納付など、状況に応じた処分方法を検討します。仮に金銭を支払って国庫に納付することになっても、長期的な視点に立てば、処分できずに持ち続けるデメリットのほうが大きいはずです。
空き家保有を続けると、固定資産税の継続的な支払い、樹木や植栽の剪定(せんてい)・管理、家屋がある場合は建物の修理・保全など、日常的にかなりの経費が継続的に発生します。一度の支払いで済むことはなく、毎年経費が発生します。まさに不動産が「負動産」とならないような対応が求められています。
出典
総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
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