公園で「銀杏」を拾って持ち帰る父。「スーパーで買えばいいのに」と思うのですが、勝手に持ち帰っても大丈夫なのでしょうか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月30日 4時20分
秋になると、公園や街路樹の下で銀杏(ぎんなん)を拾っている人々を見かけることがあります。銀杏は秋の味覚として人気があり、炒め物やおつまみとして楽しむことができます。しかし、道に落ちているものを拾って食べることにリスクや問題はないのでしょうか? 本記事では、銀杏拾いに関する罰則、健康上の危険、モラル、そして野草採取の危険性について詳しく解説します。
銀杏拾いは「良い場合」「悪い場合」どちらもある
銀杏はイチョウの種子で、秋になると紅葉したイチョウの下に大量に落ちています。落ちているのだから拾っていいだろうと思いがちですが、実は「良い場合」「悪い場合」どちらもあるのです。
銀杏拾いに対する法令
まずは銀杏を拾うことで、該当するかもしれない法令を見てみましょう。
1.民法
民法第89条1項では「天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する」と記載されています。
「収取する権利」がない者は、落ちている物でも取ってはいけないということです。
2.刑法
刑法第235条は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定めています。
ただし、ただ拾ったというだけでは一概に「窃盗罪になる」とはいえません。拾った場所、量、価値などによって慎重に判断する必要があります。
3.自然公園法
自然公園法は、国立公園、国定公園、都道府県立自然公園その他公園事業に関する法律です。高山植物その他の植物で採取等を規制しています。イチョウが指定されているわけではありませんが、基本的にこれらの公園では「何も採取しない」ことが大切です。
4.森林法
森林法第197条では「森林においてその産物を窃取した者は、森林窃盗とし、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」と規定されています。
5.その他の条例
例えば、愛媛県野生動植物の多様性の保全に関する条例(第43条)では、指定された植物を許可なく採取、損傷等した場合は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処するとされています。
銀杏拾いを許可している例
横浜市は公式ホームページで、以下の条件で銀杏の持ち帰りを許可しています。
・街路樹
・落ちている状態の銀杏
銀杏を拾って良い場所、悪い場所
法令をもとに、銀杏を拾っても良い場所はどこなのか、考えてみましょう。
銀杏を拾っても良い場所
1.私有地
自分の所有する土地や、所有者の許可を得た私有地であれば、銀杏を拾うことができます。
2.許可された公共の場所
一部の自治体や公園では、特定の時期や場所で銀杏拾いが許可されていることがあります。事前に自治体や公園管理者に確認し、許可を得た上で行うことが重要です。
銀杏を拾ってはいけない場所
1.公共の公園や街路樹
多くの自治体では、公園や街路樹の銀杏を無断で採取することを禁止しています。公園が公共の財産であり、全ての人が平等に利用できるようにするためです。無断で銀杏を拾うことは、ほかの利用者の権利を侵害する行為と見なされることがあります。
2.保護区域や自然保護区
自然保護区や特定の保護区域では、植物や果実の採取が厳しく制限されています。これらの地域では、銀杏を拾うことが法律で禁止されている場合があります。
3.他人の私有地
他人の所有する土地で銀杏を拾うことは、所有権の侵害と見なされることがあります。所有者の許可なく銀杏を拾うことは避けましょう。
銀杏拾いで起きる健康上の問題
銀杏にはアレルギー物質が含まれていて、拾ったり食べたりすると健康上の被害をこうむる場合があります。
銀杏を拾うとき
1.皮膚のかぶれ
銀杏の外果皮に含まれるビロボールが原因でアレルギー性皮膚炎が起きることがあります。銀杏を拾う際には、手袋を着用しましょう。
2.衛生面の問題
公園や街路樹の下で拾った銀杏には、土やほこり、動物の排せつ物などが付着していることがあります。これらの汚れを十分に洗い流さないまま触れると、手に付着した細菌やウイルスが体内に入るリスクがあります。
銀杏を食べるとき
銀杏には「ギンコトキシン」という毒素が含まれており、過剰に摂取すると中毒症状を引き起こすことがあります。特に、子どもや高齢者は中毒のリスクが高いため、注意が必要です。1日の摂取目安は子どもで5個まで、成人で10個までです。
「揺すって落とす」「銀杏売りの副業」は基本的にNG
銀杏が落ちている場合には「拾っても良い」場合がありますが、木を揺する、たたく、よじ登るといった行為は木自体を損傷させる恐れがあるため、やめましょう。また、公園管理者の財産である木からわざわざ分離させる行為は、窃盗罪が適用される可能性が高くなります。
拾った銀杏をフリマサイトなどで売る「銀杏売りの副業」は、手軽そうに見えますが、食品の販売には資格や保健所の許可が必要です。販売サイトによっては、食品の出品を規制しています。ただし、農家や家庭菜園実施者が野菜を出品することは一般的になりつつあります。
まとめ
まず覚えておくことは、樹木や野草の類いは、落ちた種子や葉の1枚に至るまで所有者がいるということです。採集が禁止されている場合、許可なく採集すると罰則がある場合、許可なく採集できる場合と、いろいろなパターンがあります。決して「落ちているのだから持ち帰っていい」と安易に考えられるものではありません。
公共の場所では、ほかの利用者との調和を大切にし、ルールを守ることが重要です。銀杏はスーパーで購入するか、許可された場所で採取するようにしましょう。
出典
e-Gov 法令検索 自然公園法
e-Gov 法令検索 森林法
横浜市 街路樹の木の実や果実はとっていいですか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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