ガソリン価格が一定以上に値上がりした場合にガソリン税が引き下げられる仕組みがある? なぜ今その仕組みが発動していないの?
ファイナンシャルフィールド / 2024年12月5日 22時30分
2024年10月衆議院総選挙は、自公与党で大幅な過半数割れの結果となり、今後の政局が一層混迷していくことが予想されます。そのようななかでも、これまで以上に国民が政治に関心を持ち、私たちにとって本当に必要な政策は何なのか、それを実現できる政権の仕組みとはどのようなものなのか、一人ひとりが考えることが重要です。 本記事では、最近よく耳にする「トリガー条項」の仕組みや、私たちの生活への影響などについて、確認していきます。
トリガー条項とは
トリガー(trigger)とは、ピストルなどの引き金を意味しています。「トリガー(引き金)」を引くことで、自動的に何かしらの出来事が引き起こされることになります。
ガソリン税のトリガー条項が導入されたのは、東日本大震災の前年、2010年の税制改正時で、民主党政権の時代でした。内容をひとことで表現すると、「国民生活に影響が大きいガソリン価格が、一定の基準以上に値上がりした場合に、自動的に『トリガー(引き金)』が引かれることで、ガソリン税の一部が引き下げられ、価格が調整される」という仕組みです。
トリガーが引かれるとどうなる?
ガソリン税は、「揮発油税」(国税)と「地方揮発油税」(地方税)の2つに分けられます。具体的な内訳は、ガソリン1リットル当たり揮発油税が48.6円、地方揮発油税が5.2円で、合計53.8円です。
またこの53.8円は、本来の課税分である(本則税率分)28.7円に、度重なる増税結果などを反映した(特別税率分)25.1円を上乗せした構成となっています(図表1)。
図表1
筆者作成
トリガー条項が発動する条件は、ガソリンの全国平均小売価格が1リットル当たり160円を3ヶ月連続で超えることです。条項は自動的に発動され、特別税率分の25.1円が課税されなくなります。
それによって、ガソリン小売価格も自動的に25.1円値下げされることになります。また、ガソリンの平均小売価格が3ヶ月連続で130円を下回った場合には、上乗せ分の特別税率分が復活することになります。
ちなみに、トラックなどに使用される軽油にもトリガー条項が適用されます。軽油は「軽油引取税(地方税)」において、1リットル当たり本則税率分が15円、特別税率分が17.1円の合計32.1円で構成されています。トリガー条項の発動により、上乗せ分の17.1円が課税されなくなります。
「トリガー条項の凍結」とは
それではなぜ今、トリガー条項は発動しないのでしょうか?
これは政府が、2011年の東日本大震災の後に、復興財源を確保するため「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」によって、トリガー条項が凍結されたからです。そして、現在もその運用は継続しており、仮に凍結を解除する場合には法改正が必要となります。
ガソリン1リットルの価格の内訳
そもそもガソリン価格の内訳は少々複雑で、大まかには、本体価格、ガソリン税、石油税(石油石炭税+温暖化対策税)、消費税で構成されています。このうち消費税は、本体価格だけではなく、ガソリン税などの税金を含めたガソリン価格全体にも課税されます。
仮に、ガソリン1リットル当たりの価格を170円とした場合の内訳を考えてみると、次のようになります。
●本体価格:97.95円
●ガソリン税:53.8円、石油税 2.8円(石油石炭税が2.04円、温暖化対策税が0.76円)
●消費税:15.46円(10%) →170円のうち、72.06円(約42%)が税金
まとめ
原油価格の上昇や円安を背景として、ガソリン価格の高騰が続いています。ガソリン価格の高騰による影響は自動車の燃料高に止まらず、電気料金や物流コスト、製造業、農林水産業などあらゆる分野に影響を与え、最終的に国民一人ひとりの日常生活における物価高につながっています。
政府には、トリガー条項の凍結を解除した場合の財源の確保を含め、可能な限り早期に、有効な対策を実行してほしいものです。
出典
デジタル庁 e-GOV 法令検索 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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