亡くなった祖父が遺言書で「1億円のマンション」を私に遺してくれているそうです。生前に贈与を受けるよりも「税金」は安いのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年12月10日 23時10分
祖父が亡くなったとき、子どもだけでなく孫にも財産を遺してくれているケースがあります。子どもが存命のとき、孫は法定相続人にはなれません。しかし、遺言書を利用した遺贈の形だと遺産を受け取れます。 祖父が贈与するよりも、遺贈の形で孫へマンションを渡した方が孫の税負担は軽くなるでしょうか。今回は、贈与と遺贈、相続の違いや、1億円のマンションを贈与されたときと遺贈されたときの税額などについてご紹介します。
贈与・遺贈・相続の違いとは
贈与とは、本人と受け取る方がお互いに贈与と認識している状態で、本人から財産を無償で贈られることです。契約行為の一つで、双方向で贈与の認識がなければ成立しないようです。
一方、遺贈とは、本人の意志(遺言書)により本人が一方的に渡す相手を指定できる方法です。受け取る方が、本人の生前に遺贈されることを知らないケースもあります。そのため、本人が亡くなったあとであれば、民法第986条により遺贈の放棄も可能です。また、遺贈は相続人以外にも財産を遺せます。
相続とは、本人が亡くなった際に、法定相続人で本人の財産を相続することです。法定相続人の範囲や相続順位は以下のように定められています。
●配偶者(本人の配偶者は常に相続人)
●1位:子ども(子どもが死亡しているときは孫)
●2位:本人の直系尊属(本人に近い順番)
●3位:本人の兄弟姉妹
配偶者を除き、優先順位は相続できる順番です。相続順位1位の方がいるときは、2位以降の方は相続できません。また、孫も子どもが存命だと相続できないため、もし、子どもがいる状態で孫に遺産を渡したいときは、遺贈の形を利用する必要があります。
1億円のマンションを贈与されたときと遺贈されたときの税額差
今回は、以下の条件で祖父から孫へ1億円のマンションが贈られた場合の税額を求めましょう。
●亡くなった本人の遺した財産は1億円のマンションと1億円の現金の計2億円
●孫には1億円のマンション、子どもには1億円の現金を渡す
●同じ年に贈与や遺贈以外で受け取った財産はない
●控除は基礎控除のみ
●孫は成人済み
●法定相続人は子どものみ
贈与されたとき
贈与は、自身が受け取った金額で考えるため、孫の贈与税は1億円から基礎控除の110万円を引いた9890万円に対してかかります。財産を贈与された方が成人しており、贈与を受けた相手が直系尊属のときの税率は特例税率です。
特例税率のときで9890万円受け取ったときは税率55%、控除額は640万円になります。計算をすると、1億円のマンションを受け取ったときの税額は4799万5000円です。
遺贈されたとき
遺贈されたときの税額は以下の手順で求めます。
1.相続財産総額から基礎控除を引く
2.1の金額を基に法定相続人のみが相続した場合で仮の相続税を計算する
3.2で求めた税額を、遺贈で財産を受け取った人物も含めて実際に財産を分けた財産の割合で分割する
4.亡くなった本人からみて一親等の血族か配偶者以外の方は相続税額を2割増しにする
基礎控除は「3000万円+(600万円×法定相続人数)」と定められているため、3600万円です。2億円から基礎控除を引いた1億6400万円が課税遺産総額となります。
まずは子どもだけで1億6400万円を相続したときの仮の税額は、税率が40%、控除額が1700万円のため4860万円です。次に、実際に子どもと孫が亡くなった本人から受け取った遺産の割合ごとに計算しましょう。
それぞれ1億円ずつ受け取っているので、税額は「4860万円×2分の1」となり、2430万円になります。さらに、今回のケースだと孫は一親等の血族にあたらないため、2割加算が適用されます。「2430万円×120%」で2916万円が相続税として支払う金額となるでしょう。
本人から贈与として受け取った場合と比べると、孫の支払う税金は1883万5000円安くなります。そのため、子どもが存命の状態で祖父から1億円のマンションを受け取るときは、遺言書による遺贈の方が節税できるでしょう。
なお、法定相続人が複数いる場合は、分割する割合が変わるため、税額も変動します。
法定相続人以外は贈与よりも遺贈で受け取った方が税額は安くなる可能性がある
贈与は、お互いに認識したうえで渡す財産で贈与税の課税対象、遺贈はなくなった本人の意志により遺言書で財産を相手に渡すことで、相続税の課税対象です。遺贈は相続とは異なり、法定相続人以外にも本人の財産を渡せます。
もし、孫が祖父から財産を受け取る場合、子どもが存命のときは贈与か遺贈で受け取る形になるでしょう。今回のケースだと、贈与よりも遺贈で受け取った方が税金は安くおさえられます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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