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「すしざんまい」の社長は、なぜマグロの初競りで「1億円」以上のお金を払うの?「1皿数百円」では大赤字だと思うけど、そんなに宣伝効果があるものなのでしょうか?

ファイナンシャルフィールド / 2025年1月5日 4時30分

「すしざんまい」の社長は、なぜマグロの初競りで「1億円」以上のお金を払うの?「1皿数百円」では大赤字だと思うけど、そんなに宣伝効果があるものなのでしょうか?

毎年お正月になると、マグロの初競りのニュースを目にする人もいるのではないでしょうか。マグロの初競りと聞いて、「すしざんまい」の社長を思い浮かべる人もいるかもしれません。過去には3億円以上でマグロを落札し、メディアでも大きく取り上げられました。その際の独特なキャラクターも話題を呼び、すしざんまい(株式会社喜代村)の木村清社長の人気と知名度を高めました。   マグロの卸売価格は通常1キログラムあたり1万円程度ですが、3億円以上で落札された際の単価は120万円にもなったということです。宣伝費としての意図があると考えられるものの、それだけの金額に見合う効果は得られたのでしょうか?   本記事では、マグロの初競りにおける宣伝効果を検証するとともに、初競りの文化的背景について解説します。

巨額落札で得られる宣伝効果

結論から言うと、すしざんまいは初競りにおける宣伝効果として、驚異的な成果を上げています。例えば、2019年の初競りでは、278キログラムのマグロを3億3360万円で落札し、ニュースやテレビ番組などで全国的に連日取り上げられました。
 
一般的に撮影を伴うテレビCMは制作費が300万円~1000万円以上、放映費もキー局であれば15秒のCMでも1回あたり75万円以上かかります。しかし、初競りの様子が報道されたことで、これらの費用をかけずに無料で宣伝できたと言えるのではないでしょうか。
 
民間の放送テレビ局は130局ほどあります。仮に全ての局で15秒間報道されたとして、CM単価を1000万円で計算すると、約13億円の広告効果が得られることになります。たとえその半分の局での報道だったとしても6億5000万円にもなります。
 
さらに各局が朝・昼・夜の3回報道した場合、39億円に達する計算です。これに加え、現代ではネットニュースや地上波以外の放送局も多数存在するため、宣伝効果は、マグロの落札価格である3億円を大きく上回っていることが予想されます。
 

3億円のマグロはいくらで売れた?

2019年の初競りで、3億3360万円の過去最高額がついた青森県大間産のクロマグロですが、重量は278キログラム、寿司にすると1万5000貫分に相当します。1貫あたりの価格を単純計算すると、以下のとおりとなります。
 
3億3360万円÷1万5000貫=約2万2000円
 
しかし、実際には大トロ398円、中トロ298円、赤身158円(いずれも税別)という通常価格で提供されたそうです。そこで、売り上げを考察してみます。マグロの部位の割合は個体差が大きいということですが、仮説として、大トロ10%・中トロ50%・赤身40%として計算します。
 
1万5000貫をこの割合に分けると、大トロ1500貫、中トロ7500貫、赤身6000貫です。売り上げを計算すると、

大トロ 398円×1500貫=59万7000円
中トロ 298円×7500貫=223万5000円
赤身  158円×6000貫=94万8000円

合計378万円となり、この金額を原価で差し引きすると、赤字の額は約3億3000万円です。しかし当時は、メディア報道により、店舗の前には100人以上の行列ができるほどのにぎわいを見せました。
 
この戦略により、特別感とお得感を演出し、すしざんまいのブランド価値をさらに高める結果となったのです。
 

初競りが注目される理由は、文化的背景にあった

そもそも初競りとは、その年最初に行われる競りのことで、豊洲市場では毎年1月5日に「マグロの初競り」が恒例行事として開催されています。この行事は、年間の漁獲のスタートを象徴し、景気付けや商売繁盛を願う特別な意味を持っています。
 
中でも「一番マグロ」は注目の的で、仲卸業者が自慢の5本を並べ、その中で最も高値が付いたものが「一番マグロ」として報道されます。すしざんまいは過去10年で5回、一番マグロを落札し、初競りの象徴的な存在として注目を集めてきました。
 
しかし、すしざんまいは、近年は高額落札が続いた影響や社会情勢を踏まえ、一番マグロを落札することを自粛する傾向が見られます。それでも、初競り自体は日本独自の文化と市場の活気を象徴する特別なイベントとして、今も多くの注目を集めています。
 

宣伝だけじゃない、すしざんまいが伝えたいこと

すしざんまいの社長が初競りで一番マグロを1億円以上の価格で落札しても、通常価格で販売するため大赤字です。しかし、赤字額以上の宣伝効果が期待できることが分かりました。
 
一方で、木村社長にとって初競りは宣伝だけではなく、「日本一のマグロを食べたいというお客さんに応えたい」という強い思いが込められているそうです。また、日本の漁業を活性化させたいという願いや、豊洲市場を盛り上げる使命感について言及したこともあります。
 
こうした取り組みは、すしざんまいのブランド価値を高めると同時に、日本の食文化を世界に発信する重要な役割を担っているのではないでしょうか。
 

出典

すしざんまいHP メディア出演・講演会・イベント情報 (2019年)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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