60歳で定年退職した父が私に相談せず「繰上げ受給」を申請してしまいました! 取り消しできるでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月5日 9時40分
60歳で定年退職した父親が、事前に相談もなく年金の「繰上げ受給」を申請してしまった場合、家族としては将来の年金額の減少を心配するかもしれません。 本記事では、繰上げ受給の概要や減額率、適しているケース、そして注意点について詳しく解説し、自分に合った受給開始時期を選ぶためのヒントを提供します。
年金の繰上げ受給とは
年金の繰上げ受給とは、通常65歳から受け取ることができる老齢基礎・厚生年金を、希望に応じて60歳から65歳になるまでの間に繰り上げて受け取ることができる制度です。
ただし、繰り上げて受給を開始すると、その分の減額率が生涯にわたり適用される点に注意が必要です。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取る場合、原則として同時に繰り上げ請求を行う必要があります。
年金の繰上げ受給の減額率
日本年金機構によると、年金を繰り上げて受け取る場合、早く受給できる代わりに、1ヶ月ごとに0.4%または0.5%の減額率が適用されます。この減額率は、昭和37年4月2日以降生まれか、昭和37年4月1日以前生まれかによって異なります。
繰上げ受給を選択する人の割合はどれくらい?
三菱UFJ信託銀行株式会社 MUFG資産形成研究所が実施した「金融リテラシー1万人調査」によると、希望する年金受給開始時期について、企業勤務者8500人の回答は表1の通りでした。
表1
希望する年金受給開始時期 | 割合 |
---|---|
60~64歳(繰上げ受給) | 10.9% |
65歳 | 43.3% |
66~70歳(繰下げ受給) | 20.5% |
71~75歳(繰下げ受給) | 7.3% |
わからない | 18.1% |
出典:三菱UFJ信託銀行株式会社 MUFG資産形成研究所「公的年金の受給開始時期の意向について」を基に筆者作成
65歳での受給を希望する人が最も多い一方、繰上げ受給や繰下げ受給を選ぶ人も一定数存在し、回答に迷う人も少なくないことが分かります。
繰り上げ請求の注意点
繰り上げ請求を行うと、請求した日の翌月分から年金の支給が開始されます。この方法を選ぶと、早めに年金を受け取ることができるため、急な生活費の支出が必要な場合などには便利でしょう。
ただし、一度繰り上げ請求を行うと、その後取り消すことはできません。そのため、繰上げ受給を選ぶ際は慎重に判断することが重要です。
自分にとって最適な年金受給開始時期とは
適切な年金の受給開始年齢は、健康状態や経済状況、ライフスタイルなどにより異なります。自分にとって最適な受給開始年齢を選ぶことが大切ですが、繰上げ受給や繰下げ受給が有利なケースもあります。以下に、どのような場合に繰上げ受給が適しているかを紹介します。
繰上げ受給が適しているケース
繰上げ受給が向いているのは、例えば仕事を続けるのが難しく、貯金があまりない場合です。この制度を利用すると、早く年金を受け取って生活費を確保できます。受け取れる金額は減りますが、早めに安定した収入を得られるのがメリットです。
もし安定した収入源があれば繰下げ受給で将来の年金額を増やす方がよいかもしれませんが、貯金が少ない場合や今すぐに収入が必要な場合には、繰上げ受給の方が現実的な選択肢です。
また、早期に年金を受け取り、趣味や娯楽に使いたい場合も繰上げ受給を選択するとよいかもしれません。年金の繰上げ受給は、最短で60歳から年金を受け取ることができるため、早い段階で得た年金収入を趣味や旅行、スポーツなどの活動に充てることができるでしょう。もし早期にリタイアして、人生を楽しみたいと考えている場合には、繰上げ受給を選ぶことがひとつの選択肢となります。
一度申請した年金の繰上げ受給は取り消せない
年金の受給開始時期については、個々の状況に応じて最適な選択が求められます。繰上げ受給を選ぶと、早期に年金を受け取ることができ、急な生活費の支出が必要な場合に役立ちますが、一度申請すると取り消しはできません。また、受給額が減額されるため、将来の生活に影響を及ぼす可能性があります。
繰上げ受給は最短で60歳から年金を受け取ることができますが、将来的な減額を考慮し、早期に受け取りたい理由がある場合に限り有効であると考えられます。
今回のように事後的に取り消しが難しいケースを防ぐためにも、年金に関する重要な決定は家族間で共有し、後悔のない選択をすることが大切です。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
三菱UFJ信託銀行株式会社 MUFG資産形成研究所 公的年金の受給開始時期の意向について 2.全体集計結果 [図表2]公的年金受給開始時期の意向
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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