今は世帯年収600万円ですが、老後、夫婦2人分の年金収入は年間300万円程度です。生活費を半分にして生活できるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月6日 23時0分
老後資金は、人生の三大資金のひとつです。この前提にあるのは、老後の収入は支出よりも少ないということです。老後の主な収入は年金であり、その金額は現役時代の収入と比べると半分以下になるといわれています。 例えば、現在の世帯年収が600万円で、老後に受け取れる年金額が300万円程度になると仮定します。老後の生活費を半分にすることができれば、収入が半分程度になったとしても問題はないでしょう。しかし、そのようなことはできるのでしょうか。 本記事では「生活費を半分にして生活できるのか?」「年金収入が年間300万円程度の場合、老後資金はどのくらい必要か?」について解説します。老後の家計について、どう考えたらよいのかにも触れていますので、ぜひ最後までお読みください。
生活費を半分にして生活できるのか?
総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編、二人以上の世帯)2023年(令和5年)」によると、65歳以上の方がいる世帯(世帯主が65歳以上、無職世帯)の1ヶ月間の支出(消費支出)は、平均で25万2928円です。この金額を単純に年単位に換算すると、1年間の支出は303万5136円となります。
夫婦2人分の年金収入が年間300万円の場合、年間支出が303万円であれば、支出が収入を上回ることになります。この場合、家計としては貯蓄を取り崩しながら生活していくことになります。
ただ、本記事のタイトルのように「生活費を半分にして生活できるのか?」と聞かれた場合、筆者としては「難しいと思います」とお答えするしかありません。例えば、「年間300万円で生活ができますか?」と聞かれたら、「できます」と答えられます。しかし、「年間600万円の支出を300万円にできますか?」と聞かれたら、「難しいと思います」としかいえないのです。
支出を半分にできるかどうかは支出の内容にもよりますが、一般に、生活水準を著しく下げることは難しいと考えられます。支出を抑えられたとしても、7割から8割程度(年間支出が600万円であれば、420~480万円程度)と考えるのが妥当ではないかと思われます。
年金収入が年間300万円程度の場合、老後資金はどのくらい必要か?
資金計画を考えるときの原則のひとつに、「収入は手取り収入で考える」ということがあります。手取り収入とは、収入から税金・社会保険料を差し引いたものを指します。年金収入における税金・社会保険料の割合を仮に15%とすると、年金収入が年間300万円のときの手取り収入は255万円(=300万円×85%)となります。
このとき、老後の支出を年間255万円以下に抑えることができれば、老後は年金収入だけで生活ができるということになります。しかし、そうでない場合、足りない部分は貯蓄などで補わなければなりません。
例えば、年間の支出合計額が300万円と予想される場合、年金収入だけでは45万円足りず、貯蓄で賄う必要が出てきます。そして、これが仮に老後30年続くとすれば、老後資金として1350万円(45万円×30年間)必要になる計算となります。
具体的にどうなるかのシミュレーションは、キャッシュフロー表を作成してみるのがよいでしょう。資金計画は個別性が強く、一概にいえない面が多々あるからです。考え方だけ知りたい、ざっくり分かればよいという方は、ここまでに記載した内容でも参考になるのではないでしょうか。
まとめ
結論としてまずいえるのは、生活費を半分にして生活することは難しいということです。これは金額の問題ではなく、「半分にする」ということ自体が難しいという意味です。生活費の背景には、その方の生活習慣・消費習慣があります。これを修正するのは、非常に難しいといえます。
したがって、老後の生活費を抑えることができるとしても、その金額は半分ではなく、7割から8割程度と考えるのが無難です。そのうえで、老後資金の準備を考えたほうがよいかもしれません。もちろん、生活費を半分にして生活をすることもできるかもしれませんが、筆者としてはもう少しシビアに考えたほうがよいのではないかと思います。
最終的には個別で判断することになるため、もしご自身の場合はどうかと疑問に思われるのであれば、一度ファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか。ファイナンシャルプランナーは、キャッシュフロー表を作成してお金の流れを把握します。「見える化」することで課題の有無がはっきりし、課題がある場合は対策を練ることもできます。
本記事では、老後資金についての基本的な考え方についても触れました。老後の生活費をどうやり繰りしていくのか、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
出典
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
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