同僚が「共働きで世帯年収1000万が一番損!」と言った3つの理由とは?
ファイナンシャルフィールド / 2019年2月13日 22時30分
先日、同僚に「共働きで年収1000万円が一番損!」と言われました。共働きでも、年収1000万円はかなり高額な収入ですが、同僚が言う「損!」とは本当なのでしょうか。
年収1000万円の収入がある世帯
「平成29年分民間給与実態統計調査(国税庁)」によると、平成29年12月31日現在、サラリーマンなど給与所得者数は5811万人で、平均給与は432万円。年収1000万円以上の収入がある人は、給与所得者全体の約4.5%です。
共働き世帯が増えているため、例えば夫婦のどちらかが年収800万円でどちらかが年収200万円という世帯、あるいは夫婦のどちらも年収500万円という世帯もあるでしょう。そう考えると、夫婦の合計年収が1000万円以上の世帯はこれより多いはずです。
同僚が「共働きで世帯年収1000万円が一番損!」と言った3つの理由
同僚が「一番損!」と言ったのはなぜか考えられる理由は次の3つではないでしょうか。
(1)所得税額が増えるから損!
年収が増えても手取りが増えないと感じる一番の要因は、所得税などの納税額が高くなるからでしょう。給与所得者の納税額は、給与などの収入金額から、給与所得控除を差し引き、その後に扶養控除など複数の控除を行い、算出された所得額に所得税率をかけて算出します。
例として、年収660万円のAさんと、年収1020万円のBさんを比較してみましょう。
給与所得控除は、Aさんは186万円(収入金額660万円×20%+54万円」、Bさんは上限の220万円です。どちらもその他に控除できる額を150万円と仮定すると、控除後のAさんの所得は324万円、Bさんは650万円となります。
日本の所得税は累進課税のため、所得が増えれば税率が上がります。Aさんの納税額は、所得税22万6500円(所得額324万円×10%-9万7500円)に住民税32万4000円(所得の10%)を加え、約55万円。
同じくBさんは所得税87万2500円(所得額650万円×20%-42万7500円)、住民税65万円で、約152万円になります(復興特別所得税は計算に含めていません)。つまり、年収の違いにより、納税額が100万円近く変わる計算になります。
納税額が増えることが、「年収1000万円は損」と同僚が言った最大の理由だと思われます。なお、この納税額は1人の収入での計算です。共働きで世帯年収1000万円の場合は、夫婦それぞれの収入で算出しますので、納税額はこれより少なくなるケースが多くなります。
(2)所得制限で児童手当が少なくなって損!
中学生以下のお子様がいると、児童手当を受け取れますが、児童手当には所得制限があります。夫婦どちらかの片働きで、子ども2人のモデル世帯では、年収が960万円以上で児童手当の支給がなくなり、子ども1人当たり月額5000円の特例給付に変わります。
児童手当の額を0歳から3歳までの3年間は月額1万5000円、3歳から中学3年までの12年間は月額1万円と仮定すると、15年間で合計198万円受け取れますが、特例給付では、15年間で90万円の支給となり、約100万円受け取る額が少なくなります。
同僚にお子さんがいる場合には、児童手当が特例給付になるということも、年収1000万円は損と言った理由と考えられます。
(3)高校無償化で損!
高等学校の無償化も所得制限があります。低所得世帯の子どもが高校に進学できるようにと始まった制度のため、家族構成にもよりますが、世帯年収1000万円以上の世帯は無償化対象から外れるケースが多くなります。
また、今後制度化される幼児教育無償化や、現在検討中の大学無償化などについても、所得制限が導入されると思われるため、子どもの教育に関しても年収1000万円は「損!」と感じるでしょう。
複数の所得制限にうんざりした同僚
同僚が「一番損!」と言った理由を考えてきましたが、これ以外にも、年間所得金額が1000万円を超える納税者は配偶者控除の適用を受けられません。
また、生計を維持していた方が亡くなっても、収入が850万円以上あると遺族年金を受給できないなど、年収が高いことで対象外となる制度が複数あると気付かされます。所得が高いと、制度を利用しなくても十分に生活の維持が可能と考えられているため、所得制限が設けられるのです。
同僚は複数の所得制限にうんざりして、「あれもこれも年収で制限がある。こんなにたくさん制限があるから、共働きで世帯年収1000万円が一番損なのよ!」と言ったのかもしれませんね。
出典
国税庁「平成29年 民間給与実態統計調査」
執筆者:杉浦詔子(すぎうらのりこ)
ファイナンシャルプランナー/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント
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