障害年金5つの誤解 第1回「働いていたら障害年金はもらえない…?」
ファイナンシャルフィールド / 2019年2月15日 10時0分
障害年金の受給についての相談を受けていると、さまざまな誤解が広まっていることに気付きます。誤解が原因で、障害年金の請求をためらったり、断念してしまったり。もったいないことです。そうした誤解をシリーズで取り上げます。 第1回は「働いていたら障害年金はもらえない…?」です。
医師の中にも誤解している人がいる。なぜ…?
障害年金を受給できるかどうかの指標となっているのは、国民年金法などの法律や、厚生労働省が作った「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」(以下、「認定基準」)などです。
しかし、そのどこを読んでみても、「働いている人には、障害年金を支給しない」とは書かれていません。また、厚生労働省が2014年に実施した「障害年金受給者実態調査」の調査結果でも、受給者の27.6%が就業していました。
それなのに、「働いていたら障害年金はもらえない」と言う人が少なくありません。医師の中にもそう言う人がいます。なぜでしょうか。
「働いていたら障害年金を簡単にはもらえない」が正しい表現
誤解が生まれた背景はいくつか考えられます。
内閣が定めた厚生年金保険法施行令には、3級の障害の状態のひとつとして、「労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの」と規定されています。
また、「認定基準」の中で、2級の障害の状態について「日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの」と説明されています。
これらはいずれも、障害の状態がどんなふうであれば、障害等級に該当するかを説明しているだけなのですが、逆に「働いていたら障害年金はもらえない」という受け止め方をされているのかもしれません。
誤解が生まれたもうひとつの背景には、一般就労でフルタイムで働いていると、日本年金機構に障害が軽く受け止められ、障害年金が支給されにくいという現実があります。
障害を抱えて働くことは何かと苦労があり、障害者本人は大変なのですが、障害を持っていない他の同僚との違いを説明するのが難しい場合があり、障害年金の請求で苦労するケースが多いようです。
「働いていたら障害年金はもらえない」ではなく、「働いていたら障害年金を簡単にはもらえない」というのが正しい表現でしょう。
「認定基準」でも安易な支給抑制にはクギを刺している
さて、さまざまな障害の中でも、働いていることとの関係が問題になりやすいのが、精神の障害です。障害が外側から見えにくいためです。「認定基準」では、精神の障害の認定要領において、以下のように障害年金の安易な支給抑制にクギを刺しています。
「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。」
楽に働けているわけではないことをアピールしよう
こうなると、障害年金を請求するうえでのポイントは明らかですね。
この「仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等」のところです。これらの点を日ごろから医師にしっかりと説明しておき、診断書に書き込んでもらうことです。
また、請求者が作成する「病歴・就労状況等申立書」にも書き込みます。楽に働けているわけではないことをアピールするのです。
障害者枠の就労や短時間勤務の場合は、その雇用形態や仕事の内容、周囲からの支援の内容をしっかり伝えます。一般就労でフルタイムの場合でも、障害を抱えて働く難しさを訴えましょう。
職場でどのように働いているのかがイメージできるように、具体的に書くのがコツです。これは、精神の障害に限りません。他の障害でも同じことです。障害年金を受給しながら働いている人はたくさんいます。決して、「働いていたら障害年金はもらえない」のではありません。
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
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