老後2000万円問題について「65歳まで働き、95歳まで夫婦2人で生活する場合」をもとにシミュレーション
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月18日 4時20分
「老後資金2000万円」という数字が話題となり、なんとか目標額を達成した方もいるでしょう。しかし、最近の物価上昇により、「2000万円では心もとないのでは」と不安に感じている方もいると思います。そこで本記事では、必要な老後資金の目安や、安心した老後を迎えるためのヒントをご紹介します。
老後2000万円問題について
2019年、金融庁の「市場ワーキング・グループ」が発表した報告書をきっかけに注目を集めたのが「老後2000万円問題」です。この報告書では、平均的な高齢夫婦が老後30年間を過ごすにあたり、約2000万円の資産が不足する可能性があると指摘されました。
65歳まで働き、95歳まで夫婦2人で生活する場合に必要な金額
ここでは、65歳から95歳までの30年間、夫婦2人で生活するために必要な貯蓄額を試算してみましょう。総務省統計局の「家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、夫婦2人で65歳以上の無職世帯における収支状況は以下の通りです。
・実収入:月額24万4580円
・消費支出:月額25万959円
・非消費支出:月額3万1538円
・不足分:月額3万7917円
不足額を年間に換算すると、45万5004円となり、30年間では約1365万円の貯蓄が必要となります。
ゆとりある老後生活を送るために必要な金額は平均で月額約38万円
ゆとりある老後生活を目指す場合、必要とされる費用は平均で月額37万9000円とされています。この金額には、基本的な生活費に加え、「旅行やレジャー」、「生活費の充実」、「趣味や教養」といった追加の支出が含まれており、その平均額は月14万8000円です。
一方で、実収入の平均は月額24万4580円のため、毎月の不足分は13万4420円となります。これを年間で計算すると161万3040円、30年間では約4840万円が不足する見込みです。
そのため、老後にゆとりを持つには、試算上およそ4840万円の資金を追加で準備する必要があるといえます。
老後資金不足を防ぐための対策
老後資金不足を防ぐための対策を組み合わせ、老後の生活に備えましょう。
生活費の見直し
生活費を抑えることも大切なポイントです。年金を受け取れるようになっても、毎月の生活費を全て年金だけで賄うのは難しい場合があります。また、貯蓄があっても無計画に使うと早々に底をつく可能性があります。生活の質を大幅に下げることなく、無駄を省いてコストを見直すことを心掛けましょう。
働けるだけ働く
老後資金を補うには、できる限り長く働くことが有効です。勤務先の再雇用制度や再就職支援を活用するのも良い方法です。また、これまで培った資格やスキルを生かし、フリーランスや起業という道を選ぶことも視野に入れるとよいでしょう。
公的年金の受給開始時期を遅らせる
公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、受給開始時期を遅らせることで増額されます。通常65歳から受給可能ですが、受給開始を最大で75歳まで遅らせることができます。
1ヶ月繰り下げるごとに受給額が0.7%増加し、75歳まで繰り下げると最大で84%増額される仕組みです。収入があり、65歳時点で年金を急いで受け取る必要がない場合には、この選択肢を検討する価値があります。
公的年金の上乗せ制度を利用する
国民年金保険に加入している人や任意加入している人は、月額400円の付加保険料を追加で支払うことで、将来受け取れる年金額を増やせます。
3000万円を目標にすることで安心感を得られる
夫婦の老後資金として2000万円をためたものの、最近のインフレや物価上昇により、2000万円の貯蓄では不足することが考えられます。そのため、3000万円が必要と考えるのは当然なのかもしれません。ちなみに、ゆとりある老後生活を目指す場合は、約4840万円が必要です。
こういったことから、3000万円を目標にすることは安心感を得るための現実的な選択といえるでしょう。
老後資金の目安は、ライフスタイルや目標によって異なります。必要な金額を試算し、生活費の見直しや収入源の確保など複数の対策を組み合わせることで、老後を安心して迎えられる準備をしておきましょう。
出典
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」 P16
総務省統計局 家計調査報告〔 家計収支編 〕 2023年(令和5年)平均結果の概要 P17・18
生命保険文化センター 老後の生活費はいくらくらい必要と考える?
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 付加保険料の納付
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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