父の遺産「3000万円」は、全額母に渡したい! 兄弟間で「相続放棄」しようと思ったけど、そんな必要ないって本当? 1人に「全ての遺産」を相続させる方法を解説
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月19日 4時20分
もし、父親が亡くなっても、母親が元気であれば、父の相続財産はそのまま母親に相続してほしいと考える子どもも多いのではないでしょうか。ただ、法律上は子どもにも相続の権利があるため、母親に相続させるために相続放棄を考えることがあるかもしれません。 しかし、相続放棄は手続きや費用が必要な上に、特定の人に財産を相続させようと意図している場合には、大きなデメリットが発生します。本記事では、相続放棄のデメリットやリスクを紹介するとともに、父親の相続財産全てを母親に相続させたいときに、どうすればいいのか解説しますので、参考にしてください。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続の権利があっても、その権利や義務を一切受け継がず完全に放棄してしまうことです。相続放棄をすると相続の権利がなくなるのはもちろん、そもそも相続人ではなかったという扱いになります。
通常、相続放棄は相続財産に借金など負の資産が多い場合に、それを引き継ぎがないために取られることが多い手法です。ほかにも、遺産分割の話し合いで親族と顔を合わせたくない場合なども、単独の相続人でも手続きを進められます。
相続放棄をするためには、「相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」に家庭裁判所へ「相続放棄の申述書」と添付書類の提出が必要です。費用は自分で行えば数千円程度で済みますが、弁護士などに依頼すると5万円から10万円程度が必要になるかもしれません。
相続放棄の注意点
相続放棄で一番注意が必要なのは、放棄した権利が別の相続人に引き継がれてしまう点です。例えば、父親が亡くなり、母親と子ども2人の場合、民法で規定された遺産分割の目安である法定相続分は、被相続人の配偶者である母親が2分の1、子ども2人はそれぞれ4分の1です。
この際、子どもが2人とも相続放棄をすれば、全て母親に権利が移ると思うかもしれませんが、ここに落とし穴があります。図表1のとおり、法定相続分では配偶者には常に相続の権利がありますが、それ以外の相続人には優先順位があり、子どもはその第1順位なのです。
そのため、通常であれば子どもも相続人になりますが、相続放棄をしてしまうと、第2順位である被相続人の父母や祖父母、あるいは第3順位の兄弟姉妹に権利が移ってしまいます。
図表1
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】
そうなれば「全て母親に相続させたい」と子どもが思っていても、権利が移った別の相続人の意向次第になってしまいます。つまり、手間や費用をかけて相続放棄の手続きを取ったとしても、思ったような結果にならない可能性が高まるだけです。
また、相続放棄は一度手続きしてしまうと、元に戻すことはできないため、慎重に検討する必要もあります。
1人の相続人に全ての遺産を相続させたいときには
このように相続放棄では、相続の権利が別の親族に移ってしまう上、手続きに手間や費用がかかるデメリットもあります。それでは、子どもが「母親に父親の遺産3000万円を全て相続させたい」ときはどうすればいいでしょうか。
そこで必要になるのが、遺産分割協議書の作成です。遺産分割協議書とは相続人全員で遺産の分割割合などを定め、その合意内容を書面にしたものです。相続人の署名や実印による押印、印鑑証明書も必要で、作成後は相続人全員が1通ずつ所有します。ただし、相続放棄のような裁判所への申請などは不要です。
遺言書があっても、遺産分割協議書の作成により、遺言書とは違う遺産分割も可能です。そのため、仮に父親が子どもに遺産を相続させると遺言をしていても、相続人である母親と子どもが合意すれば、全ての遺産を母親が相続することもできます。
注意しなければならないのは、あくまでも相続人全員の合意が前提となる点です。そのため、母親に全て相続させるのであれば、母親はもちろん、子どもも全員が同意していなければなりません。
まとめ
父親が亡くなって、相続人に母親とその子どもがいる場合、子ども全員が相続放棄をすれば、母親が全ての遺産を相続できると考える人は多いかもしれません。しかし、相続放棄をすれば、次の順位の相続人に権利が移るため、母親に全ての財産を相続させる上では、むしろリスクが大きくなってしまいます。
そのため、遺産分割に相続人の意向を反映させるためには、遺産分割協議書の作成が有効です。相続人全員での合意は必要ですが、作成すれば裁判所などへの申請も不要で、遺言とは異なる遺産分割も可能になります。
いずれにしても、相続財産の分割には相続人間の話し合いは欠かせません。親がなくなり、慌ただしい日々を過ごしているかもしれませんが、落ち着いたら早めに話し合いの機会を作ってみてはいかがでしょうか。
出典
裁判所 相続の放棄の申述
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】
執筆者:松尾知真
FP2級
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