夫に「育児休業」を取得してもらうことになりました。給料が「3割」ほど「下がる」ことになりますが、税金などの天引き分も下がりますか?
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月20日 23時0分
育児・介護休業法では、一定の要件を満たす場合、男女問わず育児休業を取得することができます。また、育児休業により給料が下がった場合には、休業前の給料の7割程度が保障されるよう雇用保険から給付金が支給されます。 加えて、給付金は非課税所得となり課税されず、育児休業期間中の社会保険料も免除されるため、給料から天引きされる税と社会保険料の負担が軽くなります。 今回は、育児休業制度と育児休業を支援する制度について詳しく解説します。
育児休業制度とは
育児・介護休業法では、両親が取得することのできる育児休業と父親が取得することができる産後パパ育休(出生時育児休業)の2種類の育児休業制度が規定されています。また、両親がともに育児休業を取得する場合、一定の要件を満たせば休業取得期間が延長される制度もあります(※1、2)。
1. 産後パパ育休(出生時育児休業)
出生時育児休業(通称「産後パパ育休」)は、原則として出生後8週間以内の子を養育する男性労働者など(産後休業を取得していない女性労働者を含む)が取得することができます。産後パパ育休は、次に記載する育児休業とは別に、子の出生後8週間以内の期間で4週間(28日)以内、2回まで分割して取得することができます。
2. 育児休業
育児休業は、原則として1歳に満たない子を養育する男女の労働者が取得することができます。ただし、要件を満たす場合は、子が1歳6ヶ月または2歳まで育児休業の期間を延ばすことができます。
(1)1歳までの育児休業
育児休業は、原則として子が1歳になるまで連続した期間で、子1人当たり2回まで分割して取得することができます。
(2)1歳6ヶ月までの育児休業
子が1歳に達する時点で、以下のいずれの要件にも該当する場合、子が1歳に達する日の翌日から、子が1歳6ヶ月に達する日までの期間について育児休業を延長することができます。
1)対象となる子が1歳に達する日において、労働者本人または配偶者が育児休業している
2)保育所に入所できないなど、1歳を超えて休業が特に必要と認められる
3)1歳6ヶ月までの育児休業をしたことがない
(3)2歳までの育児休業
子が1歳6ヶ月に達する時点で、以下のいずれの要件にも該当する場合、子が1歳6ヶ月に達する日の翌日から、子が2歳に達する日までの期間について育児休業を延長することができます。
1)対象となる子が1歳6ヶ月に達する日において、労働者本人または配偶者が育児休業している
2)保育所に入所できないなど、1歳6ヶ月を超えて休業が特に必要と認められる
3)2歳までの育児休業をしたことがない
3. パパ・ママ育休プラス
両親ともに育児休業をする場合において、以下のいずれの要件にも該当する場合、育児休業の対象となる子の年齢が、原則1年に満たない子から1年2ヶ月に満たない子に延長されます。
1)育児休業を取得しようとする労働者(以下「本人」)の配偶者が、子の1歳に達する日(1歳の誕生日の前日)以前において育児休業(産後パパ育休を含む)をしていること
2)本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
3)本人の育児休業開始予定日が、配偶者がしている育児休業(産後パパ育休を含む)の初日以降であること
ただし、それぞれの親が取得できる育児休業の期間(産後パパ育休、産前・産後休業の期間を含む)は、1年間となります。
4. 有期雇用労働者などの取得要件
有期雇用労働者が、育児休業などを取得するためには、以下の日まで労働契約が継続するか、または更新されることが条件となります。
1)産後パパ育休を取得する場合は、子の出生日または出産予定日のいずれか遅い方から起算して8週間を経過する日の翌日から6ヶ月を経過する日の前日
2)育児休業を取得する場合は、子が1歳6ヶ月(2歳まで育児休業を延長する場合は2歳)に達する日
なお、育児休業などを取得することができないと労働協定で定められた労働者、および日々雇い入れされる労働者は、育児休業などを取得することはできません。
育児休業などに伴う給付金
産後パパ育休や育児休業を取得したために、給料が支払われないか減った場合に雇用保険から給付金が支給されます(※3)。
1. 出生時育児休業給付金
(1)支給要件
産後パパ育休を取得した労働者が以下の要件を満たす場合、出生時育児休業給付金が支給されます。
1)休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の)完全月が12ヶ月以上あること
2)休業期間中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下であること
(2)支給額
支給額 = 休業開始時賃金日額(注1) × 休業期間の日数(28日が上限) × 67%
注1:休業開始時賃金日額とは、同一の子に係る産後パパ育休または育児休業開始前(産前産後休業を取得した場合は、原則として産前産後休業開始前)直近6ヶ月間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金と3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く)の総額を180で除して得た額
ただし、事業主から産後パパ育休期間中に賃金が支払われた場合の支給額は図表1のとおりとなります。
図表1
支払われた賃金の額 | 支給額 |
---|---|
「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の13%以下 | 休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数 × 67% |
「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の13%超~80%未満 | 休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数 × 80% - 賃金額 |
「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の80%以上 | 支給されません |
厚生労働省「育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について」(※3)をもとに筆者作成
なお、休業開始時賃金日額の上限額は1万5690円(令和7年7月31日までの額)となります。
2. 育児休業給付金
(1)支給要件
育児休業を取得した労働者が以下の要件を満たす場合、育児休業給付金が支給されます。
1)休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の)完全月が12ヶ月以上あること
2)支給単位期間(注2)中の就業日数が、10日以下または就業した時間数が80時間以下であること
注2:支給単位期間とは、育児休業を開始した日から起算した1ヶ月ごとの期間(その1ヶ月の間に育児休業終了日を含む場合はその育児休業終了日までの期間)
(2)支給額
支給額 = 休業開始時賃金日額(注1) × 支給日数(注3) × 67%(育児休業開始から181日目以降は50%)(注4)
注3:一支給単位期間の支給日数は原則30日。休業終了日の属する支給単位期間は休業終了までの日数
注4:出生時育児休業給付金が支給された日数は、給付率67%の上限日数に通算
ただし、事業主から育児休業期間中に賃金が支払われた場合の支給額は下表のとおりとなります。
支払われた賃金の額 | 支給額 |
---|---|
「休業開始時賃金月額」の13%(30%注5)以下 | 休業開始時賃金日額×休業期間の日数×67%(50%注6) |
「休業開始時賃金月額」の13%(30%注5)超~80%未満 | 休業開始時賃金日額×休業期間の日数×80%-賃金額 |
「休業開始時賃金月額」の80%以上 | 支給されません |
厚生労働省「育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について」(※3)をもとに筆者作成
注5:育児休業の開始から181日目以降は30%
注6:育児休業の開始から181日目以降は給付率50%
なお、休業開始時賃金日額の上限額は1万5690円、下限額は2869円となります(令和7年7月31日までの額)。
育児休業中の税と社会保険料
1. 育児休業給付金などへの課税
出生時育児休業給付金および育児休業給付金は、非課税所得となりますので所得税などが課税されません(※4)。
2. 育児休業期間中の社会保険料免除
産後パパ育休および育児休業を取得している期間の健康保険および厚生年金の保険料は、事業主が申し出することにより免除されます。したがって、賃金から天引きされる社会保険料が少なくなります(※5)。
まとめ
育児・介護休業法の改正に伴い、産後パパ育休が導入されるなど、男性も育児休業を取得しやすくなりました。
また、育児のために休業したことにより賃金が減少する分は、雇用保険から給付金が支給され、休業前の給与の7割程度が補償されます。一方、育児休業期間中は、給付金には課税されず、社会保険料も免除されるため、経済的負担が軽減されます。
出典
(※1)厚生労働省 育児休業制度 特設サイト
(※2)厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし
(※3)厚生労働省 育児休業期間中に就業した場合の育児休業給付金の支給について
(※4)国税庁 タックスアンサーNo.1400 給与所得
(※5)日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が育児休業等を取得・延長したときの手続き
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
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