今の給与水準は「30年前」とほぼ変わらないと言われていますが、当時は物価が今よりも安かったのですよね。実際、30年前のほうが今より暮らしやすかったのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2025年2月5日 4時10分
近年、食料品や日用品などさまざまな商品の価格が上昇し、家計の負担が増しています。そのため、多くの家庭がこれまで以上に節約を強いられているのが現状です。「30年前と給与水準はほとんど変わらないのに、物価は大きく上がっている」とよく耳にしますが、果たしてそのとおりなのでしょうか。 本記事では、消費者物価指数や実際の価格をもとに、現在と30年前の物価について比較しています。30年前と現在の物価の違いについて、詳しく見ていきましょう。
現在と30年前の物価の違いはどれくらい?
総務省統計局の「2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)11月分」によると、総合指数は110.0でした。一方、30年前の1995年11月の総合指数は95.7であり、当時から1割以上も上昇していることが分かります。
また、図表1は主な品目別の価格指数です。
【図表1】
品目 | 1995年11月 | 2024年11月 |
---|---|---|
穀類 | 100.9 | 132.7 |
米類 | 117.3 | 162.9 |
食パン | 87.7 | 121.5 |
麺類 | 89.5 | 121.8 |
カップ麺 | 85.0 | 122.0 |
小麦粉 | 74.9 | 132.9 |
魚介類 | 75.3 | 126.3 |
魚肉練製品 | 89.5 | 124.8 |
肉類 | 74.3 | 118.0 |
ソーセージ | 94.8 | 109.9 |
牛乳 | 89.1 | 119.5 |
卵 | 79.1 | 127.2 |
ポテトチップス | 83.8 | 128.1 |
アイスクリーム | 85.8 | 111.0 |
※総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)11月分」をもとに筆者作成
どの品目も30年前と比べて指数が大幅に上昇していますが、特に食パンは2割近くも上昇しています。
国民年金保険料
国民年金保険料も、この30年で大幅に引き上げられています。日本年金機構の「国民年金保険料の変遷」によると、2024年と1995年の保険料は、以下のとおりです。
・2024年:1万6980円
・1995年:1万1700円
この30年間で保険料は月額5280円の増加となり、年間に換算すると6万3360円の負担増となります。
消費税
この30年間で消費税も大幅に引き上げられています。
・2024年:10%(軽減税率8%)
・1995年:3%
消費税は1989年に導入され、1995年時点では3%でしたが、現在では7ポイント増加し10%となりました。
例えば、月の支出が20万円で全額が消費税対象の場合、30年前の税負担は6000円でしたが、現在では2万円となります。消費税率の上昇は、消費者にとって大きな負担となっています。
国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)
租税負担率と社会保障負担率を合わせた国民負担率も、この30年間で上昇しています。
・2024年:45.1%(潜在的国民負担率50.9%)
・1995年:35.7%(潜在的国民負担率44.8%)
この30年で9.4ポイント増加しており、税金や社会保障費の負担がさらに重くなっていることが分かります。なお、潜在的国民負担率とは、国民負担率に財政赤字を加えたものを指します。
平均年収は30年前とほぼ変わらない
ここでは、現在と30年前の収入についても確認してみましょう。
国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、2023年の給与所得者の平均年収は459万5000円でした。一方、1995年の平均年収は457万2000円で、2023年と比べてほとんど変わっていません。
その間に多くの品目の物価や消費税、年金保険料は増加しており、当時と比べて家計の負担は確実に大きくなっていると考えられます。よって、単純に経済面だけで比較すると、30年前のほうが暮らしやすかったといえるかもしれません。
しかし、同時に技術革新によるライフスタイルの変化や医療の進歩、働き方の多様化なども進んでいます。
そのため、生活の質や社会環境の変化を考慮すると、一概に「30年前のほうが暮らしやすかった」とは言い切れません。30年前とどちらが暮らしやすいかの比較は、それぞれの時代の特徴を踏まえ、多角的に評価する必要があるといえるでしょう。
物価は30年前より確実に上昇している! 将来の経済変動に備えることが大切
30年前と比べると収入はそれほど変わらない一方で、物価が上昇していることが明らかです。今後もインフレが進み、物価がさらに上がる可能性があるため、収入と支出のバランスを考慮する必要があります。
ただし、技術革新や医療の進歩、働き方の多様化などを考慮すると今と30年前の暮らしやすいを比較するのは難しいといえるでしょう。
将来の経済変動に備え、家計管理は今のうちに対策を講じておくことが大切です。家計の見直しや節約、スキルアップ、副業、適切な資産運用などを通じて、経済的な安定性を高めることが有効となるでしょう。
出典
総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年11月
日本年金機構 国民年金保険料の変遷
国税庁 No.6102 消費税の軽減税率制度
財務省 令和6年度の国民負担率を公表します
国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査
国税庁 平成17年分 民間給与実態統計調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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