「年収798万円以上の厚生年金保険料引き上げ」にXで不満続出!「年収1000万円」なら、年金を何年受け取ればモトを取れる? 引き上げの背景もあわせて解説
ファイナンシャルフィールド / 2025年2月12日 4時30分
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1月中旬以降、年収798万円以上(賞与を除く)の会社員を対象とした厚生年金保険料増額の検討に対し、X上で多くの不満の声が上がりました。 本記事では、厚生年金保険料の仕組みや引き上げ検討の背景を解説するとともに、年収1000万円の人が年金を何年受け取れば元が取れるのかをシミュレーションします。
厚生年金保険料の仕組み
厚生年金保険は、会社員や公務員が加入する公的年金制度で、給与に応じて保険料が決まります。現状、標準報酬月額(給与を一定の幅で区分したもの)は、1~32までの32等級に区分されており、上限は65万円と決められています。
そのため、月収が100万円の人でも、保険料は65万円を基準に計算される仕組みになっています。つまり、高所得の人ほど収入に対する保険料の負担割合が低くなっていたのです。
支払った保険料は、将来の年金額に反映されます。しかし、標準報酬月額の上限があるため、月収65万円を超える人は、受け取れる年金額も頭打ちになっています。
なお、厚生年金保険料率は18.3%で、事業者と被保険者が半分ずつ負担することになっています(労使折半)。
厚生年金保険料引き上げの背景
今回の厚生年金保険料引き上げ検討の背景には、標準報酬月額65万円以上の高所得者に収入に見合った保険料負担を求めることで、年金制度を安定させる狙いがあります。
現状では標準報酬月額の上限が65万円となっており、それ以上の収入がある人は相対的に負担が軽くなっています。これを見直し、上限を引き上げることで、標準報酬月額65万円以上の人に収入に見合った保険料を負担してもらい、年金財政を支える方針です。
しかし、高所得者の間では「自分たちはすでに十分な額を支払っているのに、さらに負担が増えるのは納得がいかない」といった不満の声も上がっています。特に、年金受給開始前に亡くなった場合や、受給額を十分に受け取れない可能性を考えると、支払う額に対して見返りが少ないのではないかという懸念もあります。
さらに、「年金制度の改革よりも、まず無駄な支出を削減するべきではないか」といった声も聞かれます。
年収1000万円の人でシミュレーション
では、年収1000万円の人は、厚生年金保険料の引き上げによって、どのくらい毎月の保険料が増え、年金額に反映されるのでしょうか。実際にシミュレーションしてみます。
厚生年金保険料はいくらになる?
ここでは、年収1000万円の人の月収を約83万円(賞与を除く)として計算しましょう。
現行制度では、標準報酬月額の上限が65万円なので、たとえ月収が83万円でも65万円を基準に保険料が計算されます。この場合、月々の厚生年金保険料は次のように計算できます。
●標準報酬月額:65万円
●保険料率:18.3%
●月額保険料:65万円×18.3%=11万8950円
●労使折半後の自己負担分:11万8950円÷2=5万9475円
一方、標準報酬月額の上限が83万円以上に引き上げられた場合は、同じように計算すると労使折半後の自己負担分が7万5945円になります。そのため、月々の負担は現在よりも1万6470円増えることになります。
受け取れる年金額は?
では、負担が増えた分、将来の年金受給額はどのくらい増えるのでしょうか。仮に、標準報酬月額が83万円で、20年間(240ヶ月)保険料を支払ったとして考えます。
厚生年金の受給額は、次の計算式で計算します。
・報酬比例部分の年金額:平均標準報酬月額×5.481/1000×被保険者期間の月数
この計算式で月収83万円の場合を試算すると、次のようになります。
●平均標準報酬月額:83万円
●被保険者期間:240ヶ月
●年金額:83万円×5.481/1000×240ヶ月=約109万2000円
同様に標準報酬月額65万円の場合で計算すると、年金額は約85万5000円です。
増加した保険料の負担は年間19万7640円、年金額の増加は年間約23万7000円なので、年間約4万円のプラスになる見込みです。
では、支払った厚生年金保険料分の元を取るまでに何年かかるのかも確認してみましょう。
●負担増の合計(20年間):19万7640円×20年=395万2800円
●年金の増加額:年間約23万7000円
●元が取れる年数:395万2800円÷23万7000円=約16.7年
このように計算でき、年金を受け取り始めてから約17年たてば、支払った分の元が取れる計算になります。
ただし、将来の給付乗率などは不確定で、現行の支給率が必ず維持されるとは限らないのでは、という点も懸念されています。
まとめ
厚生年金保険料の上限引き上げは、高所得者への負担増となる一方、将来の年金受給額の増加にもつながります。年収1000万円の人のケースでは、およそ17年で元が取れる計算です。
今回の制度変更に対する反発の声もありますが、年金制度の維持という観点からは、避けて通れない施策なのかもしれません。
出典
厚生労働省 令和6(2024)年財政検証結果の概要
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)
執筆者:古澤綾
FP2級
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