フリーランスの老後に備える付加年金とは?年金制度の基礎知識を学ぶ。
ファイナンシャルフィールド / 2019年2月21日 22時15分
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近年、テレワーク環境の整備により会社組織などに属さず、自身の裁量で仕事を行える「フリーランス」という働き方が注目されています。 働いたら働いた分だけ自分の収入になるフリーランスは、その時間的自由度も相まって魅力的に映ります。しかし、老後にもらえる年金の給付額や、健康保険や労災保険などの福利厚生面はサラリーマンなどに比べて一歩劣ってしまい、働けなくなった場合の不安を感じます。 そこで、今回は、フリーランスをはじめとした自営業者の福利厚生を増強させるための、公的な制度である「付加年金」について説明させていただきます。
「付加年金とは」
日本の公的年金制度は階層構造になっており、1階部分として日本に住む全員が加入する「国民基礎年金制度」があります。
そして、国民基礎年金は、加入者の職業により第1号被保険者(学生、自営業者等)、第2号被保険者(厚生年金加入の会社員等)、第3号被保険者(第2号被保険者の被扶養配偶者)の3つに区分されており、国民基礎年金の被保険者区分によって、2階以上部分の年金保険制度が異なってきます。
例えば、国民基礎年金の第2号被保険者の場合は、厚生年金保険が追加加入されるといったかたちです。「付加年金」は第1号被保険者のみが追加加入できる制度となっており、まさにフリーランスにとっての厚生年金ともいえる制度です。
「付加年金の保険料っていくら? 加入によるメリットとは? 」
付加年金の保険料は、収入にかかわらず月額400円(2018年現在)となっています。支払った保険料は全額が社会保険料控除の対象となり、確定申告を行うことによって所得税や住民税などを低減させることができます。付加年金の加入申し込み先は市町村の役場となっています。
付加年金は、少額の保険料で、老齢給付金を大きく向上させることに主眼が置かれた制度です。その効果として、毎月400円の保険料支払いで「200円×加入済期間」の年金額を受け取ることができます。
例えば、40年間(480ヶ月)付加年金に加入した場合、総支払保険料は400円×480ヶ月=19万2000円で、受け取れる年金額は年額200円×480ヶ月=9万6000円となり、支払った保険料は2年で回収できる計算となります。金額が小さいとはいえ極めて有利な条件ですので、老後に備えてできるだけ加入しておくのがいいでしょう。
なお、老齢年金は、もらう時期を後ろ倒しすることで、受け取ることができる年金額を増やす「繰り下げ支給』を選択することができます。
この繰り下げ支給は、1ヶ月支給を遅らせると給付額が0.7%ずつ増加します。最大5年遅らせることで42%給付額を増額させることができ、増加した給付額は一生涯続きます。
付加年金の支給額にもこの繰り下げ支給の効果が及ぶため、得られるメリットはますます大きくなります。
「付加年金の注意点」
付加年金は老齢給付金の額を向上させることに特化しているため、給付前に死亡してしまった場合は保険料が払い損になってしまいます。
一応、付加保険料の納付した期間が36ヶ月以上のときは8500円が追加支給されますが、保険料分のメリットとは言えないでしょう。また、支給開始後すぐに死亡してしまった場合は、この8500円すら受け取ることもできなくなってしまいますので、遺族への保障としての利用は少々厳しいと思われます。
また、付加年金と同様に、追加加入できる公的な年金制度として個人型確定拠出型年金(iDeCo)や国民年金基金がありますが、加入や拠出金に制限があるので、こちらの制度を利用する予定がある場合は注意が必要です。
「まとめ」
フレキシブルな働き方ができるフリーランスのお仕事ですが、老後の年金といった福利厚生面では会社員よりも弱い立場です。では、いったいどれくらいの差があるのでしょうか。
厚生労働省より2019年度のサラリーマンなど厚生年金加入者のモデル世帯(夫が40年間平均的年収で就労し、妻が40年間専業主婦であった場合)の年金支給月額は22万1504円と言われています。
このモデルケースを少々変更し、夫がフリーランスで妻が専業主婦としてそれぞれ国民基礎年金に40年加入したとすると、給付月額は6万5008円×2人分で13万16円です。その差は9万1488円と大きな差があります。
そこで、付加年金に合わせて加入することで、8000円×2人分=1万6000円を加算します。すると給付月額は14万6016円となりますが、月額約7万5488円はまだ大きな差だと感じられます。
さらなる選択肢として、70歳まで年金の受給開始を繰り下げることで給付月額を42%増額の20万7342円とすれば、厚生年金のモデル世帯にかなり近づけることができます。
付加年金は保険料も給付額も少額なので一見軽視されがちですが、充分な加入期間と繰り下げ受給による増加効果は、最終的には厚生年金のモデル世帯に給付月額を肉薄させる重要な一手となります。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
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