住宅ローンを見直す目的「借り換え」以外で金利を下げる方法とは?
ファイナンシャルフィールド / 2019年3月7日 9時0分
住宅ローンの見直しについて、前回はその目的別に借り換え方法と、借り換えに当たっての注意点をまとめてみました。今回は住宅ローンの見直しの手段としての借り換え以外の方法について事例を紹介してみたいと思います。
借り換えせずに金利を引き下げる
住宅ローンの月々の返済額や総返済額を引き下げるには、現在より低い金利のローンにすることが必要になります。
一般的には現在借り入れをしている住宅ローンより低い金利の住宅ローンを提供している金融機関への借り換えを検討するわけですが、借り換えには新規借入の審査や現ローンの一括返済手続き、登記手続き等の煩雑な手続きや諸費用がかかるといったハードルがあります。
そこで、現在借り入れをしている金融機関で金利引き下げができないか検討してみることにします。実は金融機関によっては金利交渉ができるケースがあります。
特に長く返済をしっかりしてきた信用度の高い個人顧客の場合、金融機関にとっては他行へ借り換えられるくらいなら金利を引き下げても顧客をつなぎ留めたいということがあるようです。
Aさんの事例を紹介します。
Aさんは信用金庫で10年固定型金利の住宅ローンを金利1.9%で組んでいました。3年ほど経過したところである別の銀行で10年固定型金利がなんと0.98%で提供されていることが分かりました。
そこで、その銀行で借り換えのシミュレーションをしてもらったところ、諸費用を考慮しても総返済額を100万円程減らせる借り換えメリットがあることが分かりました。また、借り入れの仮審査を申し込んだところ仮審査は問題なく通りました。
Aさんは仮審査の結果とともに信用金庫に出向き「他行への借り換えをしたいので必要な準備を教えてほしい」と窓口で話したところ融資担当者から「金利を下げることができるか検討させてほしいので借り換えを待っていただけないか」と提案されました。
そのときに要求されたものは「現在の預貯金の状況と他行の借り換えシミュレーションの結果」でした。1週間後、信用金庫からは10年固定金利1.2%を提示されました。
他行の0.98%よりは高い金利でしたが融資担当者いわく「その差は借り換えにかかる諸費用分です」とのこと。つまり、他行の方が0.98%と金利が低くても借り換え諸費用を考えると借り換えても総返済額に差は生じないというわけです。
結果Aさんは信用金庫で新たに10年固定金利1.2%のローンで継続することにしました。この際にかかった費用は条件変更手数料5400円+収入印紙代だけです。借り換えにかかる煩雑な手続きもせずに済み時間も節約できました。
ちなみにAさんは信用金庫の条件をもとに、借り換えをしようとしていた他行にも金利を下げることはできないか問い合わせてみましたが、他行では金利は下がらなかったようです。
固定金利期間を再設定する
次にBさんの事例です。
BさんもAさんと同じく信用金庫で10年固定金利型の住宅ローンを組んでいました。Bさんのローン金利は1.2%で残りの固定金利期間は4年、ローン全体の残期間は10年でした。
つまり4年後には金利の見直しが発生します。このとき他行では同じく10年固定金利が0.85%でした。Aさんのときほど現在の金利と借換え先の金利差はありませんでした。
しかし、現在の固定金利期間が4年後に終了した後、金利見直し時の金利がどうなっているかは分かりません。BさんもAさんと同じように他行で借り換えシミュレーションをしてもらいました。
仮に現在利用している信用金庫の住宅ローン金利が4年後の金利見直し時に現在と変わらない1.2%だとすると、総返済額はわずか数万円の減少であること、またそれが1.2%より金利が下がるような場合は総返済額での借り換えのメリットはないかもしれないことがわかりました。
Bさんは総返済額を抑えるというよりも、金利見直し時に金利が上昇しているリスクを避けるためローンの最終返済まで固定金利になるように借り換えを考えました。そのことを信用金庫に話したところ、信用金庫から改めて10年固定金利1.195%の提案をされました。
金利の方はわずか0.005%の引き下げでしたが、変更時点から金利が10年固定となるので最終返済まで金利上昇リスクが避けられることになりBさんは引き続き信用金庫で借り入れをすることとしました。ここでもかかった費用は条件変更手数料5400円+収入印紙代だけです。
住宅ローンの借り入れをしている金融機関で金利交渉(条件変更)するためのポイント
金利交渉となった2つの事例を見てきましたが、金利交渉を有利にするためのポイントを以下にいくつかまとめてみます。
・金利交渉前の準備として必ず他行での借り換えシミュレーションや仮審査を行う。条件次第では実際に借り換えを行うことを前提とする。
・借り入れをしている銀行で長期にわたりきちんと返済している。
・転職や他の借り入れをしているなど、審査に不利になるような状況にはない。
・決算(3月や9月)前の時期は比較的交渉しやすい可能性がある。
すべての銀行で金利交渉できるとは限りません。今回の事例の信用金庫のように地域密着型の銀行で店舗窓口があるような場合は比較的交渉できる可能性が高いようですが、ネット銀行などはそもそも金利設定が低く窓口もないことから交渉する機会を持つことは難しいかもしれません。
いずれにせよ、金利交渉は借り換えのメリットがあり借り換えが可能なことを確認した上で行うようにしましょう。
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
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