親に原因があり、相続でトラブルになる
ファイナンシャルフィールド / 2019年3月10日 12時0分
![親に原因があり、相続でトラブルになる](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_38718_0-small.jpg)
相続に際して親(被相続人)に原因があり、子どもや孫(相続人)が頭を悩ますケースも多々あります。 とくに普段親とあまり会う機会がないと、親の交友関係がよくわからないこともあります。そんな中相続問題が発生すると、それ解決する段階で、思わぬ難問に突き当たります。
父親の再婚で前妻の子は
親の再婚は、相続に際し最もトラブルになる典型的ケースです。
母親の亡くなり、父親が別の女性と再婚したとします。その父親が亡くなり相続が起こると、前妻の子どもと後妻との間でトラブルになることがあります。とくに父親の再婚に子どもたちが反対していた場合は、トラブルになることが多くあります。
法律上の相続財産の配分は、再婚した妻(配偶者)が2分の1、前妻の子は何人いても合計で2分の1になります。
前妻の子どもたちからすると、本来受け取れるべき遺産が、後妻がいることで半分になってしまいます。そのため、随分相続額が減ってしまうという不満が残ります。また父親が再婚し、後妻と過ごした期間が短ければ短いほど、「どうして?」という心境になってしまうかもしれません。
それを解決する方法のひとつは、法定通りに分けるにせよ、再婚相手が亡くなった場合に前妻の子どもや孫に対して、再婚相手の相続した不動産を中心に正式な遺言書を残してもらい、遺贈してもらうなどの対応が望ましいといえます。再婚相手の遺言書がないと、再婚相手の親族へ相続権が移ることになります。
最近では、父親の死亡後のこうしたトラブルをなくすため、敢えて籍は入れずに、事実婚の形態をとるカップルも増えています。こうすれば遺産を巡るトラブルはかなり回避できます。
父親の後妻にも子どもがいる
父親が再婚し、前妻との子どもだけでなく後妻にも子どもがいるケースは、さらに複雑になります。後妻の子どもは、何もしなければ父親から見れば他人ですから、相続権はありません。
しかし父親と養子縁組をすれば、前妻の子どもと同様の相続権が生まれます。とくに後妻の子どもたちと父親との関係が良好な場合、後妻が自分の子どもとの間で、養子縁組を進めようとするのは、自然の流れです。
前妻の子どもたちが、そのことを納得していれば問題はないのですが、納得をしていないと、自分たちの相続できる遺産が減ることになり、心情的に面白くありません。当然反対することになり、トラブルになることが考えられます。
子どもたち同士の仲が良好な場合は、トラブルが生じにくいかもしれませんが、なかなかそうはいかないかもしれません。こうしたことを未然に防ぐには、父親が再婚する段階で、後妻の子どもとは「養子縁組をしない」など、前妻の子どもたちとの間で、必要であれば契約書を交わし、予想しうる相続問題に対して、事前にトラブルの芽を摘んでおく必要があります。
相続財産に差をつけたい
親が1人の子にだけ特別に世話になったので、少しでも多く遺産を相続させたい、逆に早くから家を出てしまい勘当同然な子には遺産を相続させたくない、と考えることもあります。親が子どもたちを集め、自分の意向を伝えた了解を求めたとします。
親の意向を受けて、子ども同士で話し合いを持ち、合意ができれば問題はないのですが、多くの場合そうはいきません。親の真意が伝わっていない、子ども全員が納得していない場合は、必ずといっていいほどトラブルになります。相続額で差がつくことで、「そんなことはおかしい」という子が出てきます。とくに未解決のまま親が亡くなると、トラブルがより拡大するかもしれません。
その場合、やはり必要なのは正式な遺言書です。正式な遺言書があれば、親の思いはかなり反映させた相続ができます。しかし「特定の子に遺産の全額を」とか、「特定の子には遺産はなし」といった、極端な配分はできません。
相続人であれば、誰もが受け取ることのできる最低限が決められているからです。これを「遺留分」といい、通常相続できる額の2分の1となっています。ですから、この遺留分を守りつつ、多めにしたい子には加算、少なくしたい子には減額した遺言書をつくる必要があります。
特定の子に生前贈与がある、本人が借金をしていた
親の意向で特定の子どもに生前贈与をしていた場合も、相続発生後にトラブルになることがあります。具体的には「同居の子に自宅を生前贈与した」「1人だけに私大医学部の学費を出した」「介護をしてもらった子に事前に現金を贈与した」「特定の子を受取人とした生命保険がある」などのケースがこれにあたります。
こうした場合は、相続に際しては、すでに遺産を受け取っている「特別受益」として判断します。これらを事前にもらったとして、相続財産の中に含めて計算する必要があります。まず、特別受益の金額を算定し、その分も相続財産に含めて計算します。当然、特別受益の恩恵を受けない他の兄弟に比べて、取り分は少なくなります。
また、親の死亡後に、よく調べてみると多数の借用証が見つかり、かなり借金をしていたことが判明したとします。すると、相続人は計算が大きく狂ってしまいます。借金も相続財産になりますので、借金の分だけを勝手に放棄はできません。当然相続財産も少なくなることで、相続人同士がやや疑心暗鬼なることもあります。
明らかに遺産額と比べて借金額が多ければ、「相続放棄」という手段もあります。この場合、プラスの資産も同時に放棄する必要があります。借金があるために相続財産が減り、相続額僅かになってしまうと、相続人は期待していた相続ができなかった、ということもあります。
相続については、プラスの資産だけでなく、マイナスの資産もあることを肝に銘じておきましょう。
執筆者:黒木達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト
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