年金の「繰り下げ受給」 3つの落とし穴
ファイナンシャルフィールド / 2019年3月11日 23時15分
公的年金には国民年金と厚生年金があります。自営業者や学生、会社員・公務員に扶養されている配偶者は国民年金に加入します。会社員・公務員は厚生年金に加入しますが、同時に国民年金にも加入しています。老後に受け取る年金(老齢年金)は、国民年金加入者は老齢基礎年金、厚生年金加入者は老齢厚生年金と老齢基礎年金になります。 老齢年金は、原則、65歳から受給できますが、受給開始を早めたり(繰上げ)、遅らせたり(繰り下げ)することができます。
「繰り下げ受給」とは?
上述したように、老齢年金は、原則、65歳から受給できますが、受給開始を早めたり(繰上げ)、遅らせたり(繰り下げ)することができます。
「繰上げ受給」は、受給開始を60歳まで、早めることができます。ただし、「繰り上げた月数×0.5%」が減額され、一生涯続きます。例えば、60歳から受給する場合、65歳から受給できる年金の70%になります。老齢厚生年金と老齢基礎年金の2つを受給できる人は、2つを同時に繰り上げることになります。
一方、繰り下げ支給は、受給開始を70歳まで遅らせることができます。この場合、「繰り下げた月数×0.7%」が増額され、一生涯続きます。例えば、70歳から受給を開始する場合、65歳から受給できる年金の142%になります。老齢厚生年金と老齢基礎年金は別々に繰り下げることができます。なお、特別に支給されている60歳代前半の老齢厚生年金(報酬比例部分)は繰り下げることができません。
「繰り下げ受給」の落とし穴(1) 加給年金の金額は増額されない。
「加給年金」は、例えば、
(1)夫の厚生年金の加入期間が20年以上ある
(2)妻(65歳未満)が生計を維持されている(年収850万円未満)
(3)妻の厚生年金加入期間が20年未満
の場合に、夫の老齢厚生年金に加算されます。「加給年金」の対象者が配偶者である場合、年金額(平成30年度)は38万9800円です(年金受給権者が昭和18年4月2日以後生まれの場合)。なお、生計を維持されている18歳到達年度の末日までにある子ども(障害年金での1・2級の障害のある子どもは20歳未満)がいる場合は子の加算があります。
この「加給年金」を受け取ることができる人が、老齢厚生年金を繰り下げると、「加給年金」は支給停止になります。また、増額もされません。年間約40万円の支給停止はきついですね。
年下の配偶者や子がいる人は、老齢厚生年金を繰り下げるときは、「加給年金」も考慮して損得を考えましょう。なお、老齢基礎年金を繰り下げても「加給年金」は受給できます。
「繰り下げ受給」の落とし穴(2) 在職老齢年金で支給停止になった年金部分は増額されない。
65歳以上の人が年金を受け取りながら働いて厚生年金に加入する場合、老齢厚生年金の月額と総報酬月額相当額の合計額のうち46万円(平成30年度)を超えた額の半額が支給停止になります。これが在職老齢年金のしくみです。
例えば、仮に基本月額を13万円、総報酬月額相当額を41万円とすると、基本月額13万円と総報酬月額相当額41万円の合計54万円のうち、46万円を超えた8万円の2分の1の
4万円が支給停止され、在職両例年金は9万円の支給になります。
この在職老齢年金のしくみにより、調整された後の年金額(受給できる年金額)、つまり、上記の例では9万円は、繰り下げによる増額の対象となりますが、支給停止の部分(上記の例では4万円)は増額の対象ではありません。
「繰り下げ受給」の落とし穴(3) 振替加算の金額は増額されない。
夫(妻)に支給されている「加給年金」は、妻(夫)が65歳になり、老齢基礎年金を受けられるようになると、打ち切られます。打ち切られた「加給年金」は、妻(夫)の老齢基礎年金に一定の基準により「振替加算」として加算されます。
金額は妻(夫)の生年月日により、年額22万4300円(大正15年4月2日~昭和2年4月1日)~1万5028円(昭和36年4月2日~昭和41年4月1日)となっています。昭和41年4月2日以後は0円です。
老齢基礎年金に振替加算が加算された人が老齢基礎年金を繰り下げした場合、振替加算は増額されません。また、振替加算が支給されるのは、老齢基礎年金が開始されるときからです。
老齢基礎年金や振替加算の額により、判断が異なるでしょう。繰り下げをするときは、振替加算も考慮して判断しましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
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