定年間際の駆け込み投資に潜むワナ
ファイナンシャルフィールド / 2019年3月20日 10時10分
![定年間際の駆け込み投資に潜むワナ](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_39532_0-small.jpg)
「人生100年時代をどう生き抜くか」について書き記された、リンダ・グラットン著「ライフ・シフト」が支持を集めています。 その中で、これからの社会は能力、健康、人脈といった「無形の資産」作りが求められるとありますが、よほどの自信家や野心家でない限り、好機到来には映らないのではないでしょうか。 そのため、確かな(有形)資産としての「不動産投資」が見直されつつあるようです。 しかし、近年、女性専用シェアハウスや大手不動産会社のトラブルなど、建築・不動産分野における不祥事が世間を騒がせています。いずれの場合でも建築工事や賃料保証などの面で消費者を惑わすような営業行為があったようですが、実はこれらの大型事件は氷山の一角かもしれません。
定年間際の駆け込み投資に潜むワナ
定年間際に、これまで当たり前と考えていた暮らし方や、社会の仕組みが変わることに対して、ストレスや不安を感じるのはごく自然なことです。
しかし、このスキマを突いてくる「悪徳商法」に乗せられてはいけません。以下、筆者が対応したFP相談事例をご紹介します。
(1)相談者:来年定年を迎える女性Aさん(昨年結婚されたばかり)
(2)対象物件:都営地下鉄と私鉄駅から徒歩10分強の住宅地に存する都内ワンルームマンション
(3)経済条件:購入金額は2000万円、頭金2割、残りは年利2.2%の提携ローンで調達、表面利回りは5.5%
(4)相談内容:営業マンが大変熱心(毎回茨城の自宅まで来てくれる)で、なんでも対応してくれるのでつい契約してしまったが、第三者として運用方針含むアドバイスしてほしいというもの
筆者が関係書類を調べてみると、次のことが分かりました。
(1)物件は築30年超、エレベーター無しの4階建て最上階(相談者は一度も物件を見ていない)
(2)家賃は適正水準だが、購買価格は相場の3~5割高
(3)契約直後に賃借人から退去の連絡あり
(4)販売業者は宅建業歴浅く、管理は子会社が請け負う仕組み
自らの足と目を使って確かめることが肝心
相談者は高学歴のエンジニア。配偶者とご一緒に来社されましたので、ご夫妻のB/S、P/L含むライフプランニングを試算してみてみましたが、キャッシュフローは生涯安泰。
なぜ、今回の投資決断をしたのでしょうか?
そこには、年金だけでは不安なため、「定年後も好きな研究を続けるために、少しでも固定収入を増やしたい」という動機と、「大企業に勤務中の方がローンを借りやすい」「生命保険代わりになる」といった営業マンの巧みなトークがあったようです。
長生きがリスクと喧伝され、時代の先が読めない中、ワンルームマンションなどの投資用不動産の売り上げは伸びています。しかし、購入にあたってはローンや登記といった煩雑な手続きに加え、普段聞きなれない専門用語が出てくるのが不動産売買です。
以下に気を付けたい最低限の留意点を記しますので、参考にしていただければ幸いです。
(1)営業マンの熱心さも大切であるが、人任せにしてはいけない
(できれば不動産に強いFPなどのセカンド・オピニオンも活用すべし)
(2)購入前に必ず自分で現地に足を運び、近隣環境などを確かめる
(3)対象物件の築年数、施工業者などを調べ、中古であれば専門家にも相談する
(4)マンションなどの売買、売買相場は、民間サイトでも簡易的に調べられる
(5)表面利回りではなく、実質利回りで評価する(古い物件ほど高利回り傾向)
今回の相談に就いては、不慣れな不動産運用によるストレスを持ちつづけたくないとのことで、早期に新たなテナントを探し、売却するという方針となりました。相場よりも割高で購入してしまったため、ある程度売却損も覚悟せざるを得ません。
ライフ・シフト…つまり、人生に変化を起こすにあたり、Aさんご夫妻は高い授業料を払うことになってしまいました。
執筆者:村田良一(むらた りょういち)
CFP(ファイナンシャル・プランナー)1級ファイナンシャル・プランニング技能士、不動産鑑定士、中小企業診断士
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